138.楽しく話そう
「いやはや、ここから学校なんて遠いとこ
わるいねぇ。はい、これコーヒーとオレンジ
ジュース」
「あ、ども」
居間に招待された俺たちは流れるがままに
ファミリーサイズの大きいソファーに座らされ、
折り菓子はないがお茶の一杯は出せるといって
リクエストを聞いてきた。そしてミコがなんの
遠慮もなく「オレンジジュース」と答えたため
それに合わせて俺もコーヒーを出してもらう
ことに。今の気分的には紅茶が飲みたい気も
しないでもないが、ここでは俺たちは招かれ
ざる客であり、文句の言いようなんてこれ一つ
としてない。わざわざリクエストしたものを
出せるようにしてもらっているだけありがたく
思うことにしよう。
隣でストロー越しにヂューーーッと勢いよく
出されたジュースを飲んでいる。ハムスターか
あんたは。
「にしてもきれいな家だな」
「おぅ、それはありがたい。こう見えても毎日
……とはいわなくても結構な頻度で掃除は
してるからねぇ」
勝手な妄想だとは思うが、こういう人こそ
何かと家ではずぼらな点が垣間見えるかと
思っていたから、この居間に招待された
ときから驚いていたのだ。
そして何よりも香る、洗濯したての
軽めのフローラルの香りがそれを助長させる。
「まぁまぁ、のんびりしていって下さいよ」
「あ、あぁそうするよ……」
「? どうしたん? そんなすっとんきょうな
顔して」
「すっとんきょうって……いや、須田について
聞いていた話と今、こうやって話している
あんたと相違点がありすぎてな……」
「聞いていた話…… おぉ、てことは僕が
知らない生徒会の新人さんってことかい?」
「違う違う、ここには学校に来るように説得
するように仕向けられたんだだけだ」
「ほぉ」
あっ、本来ならじんわりと学校に来るように
説得する流れを作るはずだったんだが
流れでつい口走ってしまった。だが、長い
過程を短縮するいい機会だったかもな。
ちょうどいいし話の本題に入ると
する……前に。
「ミコ」
「ん?」
「そのおやつどこから持ってきた!!」
「さっき買ってきたんだよ!!」
「なんでキレた!?」
別にこの場で食べることに文句はない。
あるとすればこの場で「俺たちに」何の
ねぎらいもなく食べ始めたことだ。須田が
お茶がしなくてごめんねっていった最中、
ひとりで何、お菓子パーリー始めてんだよ。
「おいそのポッキーとっととしまえ!!
あるいは、ポッキーらしくレッツシェア
しろや!」
「ダメだめダメ!! これは私のだから
誰一人として、一本たりとも渡すもんか!」
「その執念、どこから来るんだよ」
「己の魂」
「セリフかっこよくしても意味ねぇわ!」
「ハッハッハ! あんたらおもろいなぁ。
なんだい、ここにはコントを見せに来た
んかい?」
「「……」」
なんかウケた。ちょっとうれしいな。
……いやいや、うれしくなったらダメだわ。
「いやー、まさかこんな生徒がいたんやな。
全員が全員、生徒を見れてないから全く
気にしてんかったけど。それと……
ミコさんといったか?」
「あぁ、これはあだ名で本名h」
「神前 滉樹です」
「それ俺の名前!!」
人の名前とるんじゃねーよ!
「こいつは御前 小恋。俺はこいつを
一身上の都合の元、ミコって呼んでいる」
「御前、ってことはあの神社のとこん
人なのかい?」
「あ、そうそう」
「あーだからミコって呼んでるのかぁ
納得納得」
いや、結果的にそうなっただけど正式には
御前 小恋の苗字と名前の頭文字をとって
ミコと呼んでいるだけなんだけどな。
そんな命名の由来を違うからと訂正する
意味もないし、そこまでこの名づけ方に
誇りを持っているわけでもないから。
何もいわずにそうだなと言った。
「神前……めずらしい名前だなぁ。漢字は
どうやって書くんだい」
「え、それはゴットの「神」と」
「あぁ、シンゼンで神前か! 本当にめずらしい
苗字だなぁ。今日び聞かないよ」
「前」と言う前に答えられた。マヤも言って
いたが、須田は学校に来ていないから頭が悪い
なんて一般常識が通用しない人物だとは
思ってはいた。だから驚かないにしろ「神」と
言っただけで「神前」という名前が出てくる
その発想力と知識力は認めざるを得ない。
神前というのは豆知識ではあるがその名の
とおり「神の前」なんて意味がある。なんとも
悪魔である俺に不釣合いだとはずっと思っては
いるし、正直なところ、悪魔となった今では
そんな名前になんて固執などしない。
そしてこの「神前」という言葉は実のところ
あまり常用されていない。使われるとしたら
「神前結婚」程度だろう。神前結婚とは神社や
神前結婚式場で行われる結婚式のことらしく
自身もなぜこんな苗字を持っているかなど
知る由もない。
名の歴史は深いのだ。知ることなんて愚問よ。
「まぁ、御前もめずらしいけどねぇ」
「そこはやっぱりラノベあるあるだし、実際に
涼宮とか桐ヶ谷とか見たら”おっ”って
なるでしょ」
「確かに」
下の名前気になるよね、そういう人見たら。
でもたいてい予想とは違う名前だから
テンション下がるんだよなぁ。
閑話休題
今は放課後なんだ。時間もけっこう遅い。
ことはぱっぱと済ませたほうがいいだろう。
「それで、俺たちがさっきも言ったけど
学校に来るように説得するように生徒会
から仕向けられたんだ」
「ふんふん」
「それで、俺たちのことは知らないんだよな?」
「そうだね。実際さっき名前を聞いたぐらいだし」
「俺たちは「異能部」って部活に所属している。
活動としては……まぁ、ほかの部活や生徒会の
手伝いだったりとマルチに動いているけど
実際の活動としては除霊だったりの霊障関係の
解決で、もしかしたら俺たちにかかればこの
学校に来ていない現状を打破できないかと
副会長から頼まれたんだ」
「ほぅ、六郷さんからか」
正しくはマヤなんだが、正式に頼み込まれた
相手は副会長だし、その見解でいいか。
「僕になにかしらの問題があるかもと?」
「あぁ、そう思ってたんだけど……」
話を進めるたびにこの人物に何かしらの
問題があるとは到底思えなくなる。
当初ははやはり、コミュ障に対しての無形の
アプローチをかけることで関係を築くことが
重要であったはずなのだ。だが、この須田という
青年に一切の付け目がない。
人柄が聞いていた話以上にいい。そして
不登校を決め込むだけの理由が見当たらない。
本来はこういう手は外法だろうがするしか
ない。
「なぁ、須田」
「ん? どうした?」
「なんで学校に来ないんだ? あんたみたいな
人なら別に学校内でも友達なんていくらでも
できそうなんだけど……」
「……」
「いや、もちろん言いたくないなら別にそれは
それでいい。どちらかと言えば非常識なのは
こういう内情を聞こうとする俺の方だ。だかr」
「はっはっはっ。そりゃあありがたいなぁ。なんか
勘違いしているようだけど、僕はこう見えても
人見知りなんだよね」
「へ」
「僕が学校に行かないのは、当然っていったら変だけど
学校というものに魅力を感じないからで、別に僕が
人と関わるのを拒んでいるっていうのは……まぁ、
概ねはずれだよ」
学校に魅力を感じられない。
どうにもかつての俺と重ね合わせてしまう。俺も
一時期はそんなことを思っていたなと。
「友達がいらないわけじゃない。学校で勉強を
したくないわけじゃない。ただの偏見だって思う
かもしれんけど、それが本当なんだ。
けれど、あの生徒会は面白いね。特にあの
会長は筋金入りの奇人だよ」
「奇人って」
否定はしない。義堂を裏で操っていたり、学校祭で
”馬鹿決定戦”たるものをこそっと主催したりと
おかしなことをしでかす人だとは俺自身、理解
しているからな。
「そんな学校に来ていなくてもあの会長のことが
わかるの?」
「あぁ、何よりこんな僕を生徒会に入れようって思う
精神がそうでしょ」
「あ、そうだね」
「僕に任される仕事はたいていが、変わった企画案の
まとめだったりなんだよ。それを見るたびに
笑ったりしてるよ。そう思ったら僕が学校に来ない
のを不安がって、今度は”霊媒師”をここに連れて
くるだなんて」
「霊媒師」というのは俺たちのことだろう。
やろうとしていることはあっているし、霊媒師という
見方でいいだろう。
「やっぱり僕はあの学校の生徒会のメンバーで
よかったなぁって思うね」
「それじゃあ」
「うん、学校には行かない。でも君たち「異能部」
っていうのは気になったから、学校には顔を
だそうかな」
よっし、説得終了。このセリフだけ聞ければ勝ち
みたいなもんだ。
え、それで来なかったらって? それはまた後の
話だろ。俺たちはあくまで説得が目的であり、不登校
生徒を学校に連れ込むまでが目的じゃない。
あ・く・ま・で説得で「行こうかな」と思わせる。
それで十分だ。これで来なくても俺たちの責任では
ない。生徒会の仕事だろう。
……ん? なにか忘れている気がするが……
まぁいいか、忘れるくらいのことだ。別に重要な
ことではなかったんだろう。
「そうか、それじゃあ俺たちはこれd」
グーーーーっ
「「「……」」」
「……ミコ、さっき食ってたよな」
「ココ、”別腹”って知ってる?」
「ちょっとは自重しろや」
どんだけ腹減ってんだよ。こちとら目の前で
お菓子並べられて、飯テロかまされているって
いうのにどんだけ燃費が悪いんだお前の身体。
って言っても俺は腹が減るなんて概念が
ないんだけどね。ただ「うまそう」と思うだけで。
「ほら、目的は達成したしとっとと帰るぞ」
「あぁ、それじゃあ何か食べて帰るかい?」
「……」
俺は須田の耳元にささやく。
(あのなぁ、あいつにそんな優しくする必要は
ないんだぞ? 特にアポもないってのに
訪問した俺たちは基本的に不届きものだし)
(いいんだって)
「御前さん」
「あ、ミコでいいよ」
「じゃあミコさん。食べてく?」
「ヨロコンデ!」
俺は頭を抱える。はぁ、前の本田の家にしろ
今回の須田の家にしろ、この小人は自重と言う
ものを知らないのか。
「やっぱり君たちは面白いなぁ。さっきお茶菓子は
ないって言ったけど、材料みたいなのはあるんだ。
だからそれ使って何かつくろうかなってね」
「そんなわざわざ……」
「いいんだって。バレンタインも近いんだし
お菓子作りもしたいしね」
「バレンタイン……?」
お菓子作りできる系男子かお前! ほんとに
お前、霊的にも人間的にも否定するとこねぇな!
「それじゃあ待っててね、多分だけどすぐに
できるし」
「いいよ手伝うわ俺」
「え、いいよいいよ」
「いやいや、さすがに俺の連れが、んな無礼な
こと言いだされたらなぁ」
「ふーん、じゃあ手伝ってもらおうかな」
後ろで目をワクワクさせてる奴が一人。
お前も手伝えやと言いたかったけど、確か
料理関連はからっきしダメだって言ってた気が
したから手伝うか? なんて聞かないでおこう。
「手伝うか?」
「ゲテモノづくりなら任せて」
「やっぱ座ってろ」
一応聞いてみたけどやっぱダメだコイツ。
チョコレートが「ちょ!?コレeat!?」に
なるわ。
「さむっ」
「うるせぇー!!」
黙って座ってろ!
「にしても神前君だったか。君って料理できる
んだねぇ」
「そりゃあ人並みにはできるつもりだけど」
「そこのお嬢様はその人並みすらできていない
のにかい」
「そんなのは酌量だよ、酌量」
実は俺の料理シーンは一度出てきている。
そんなとこあったかと思うかもしれないが、
ちゃんとある。年越しそばを作ったのは一体
誰だと思うんだい?
が、お菓子作りと言うのは実はあまり
得意ではない。料理をする人ならなんとなく
理解してくれるだろうが、普通の晩御飯なり
ランチなりのモノならある程度の目分量と
勘でできてしまうのだ。が、お菓子作りと
なると計量しながら、それも五分の差を許さんと
ばかりに作らないとならない。
単純に俺がずぼらなだけだ。ちゃんと計って
作れと言われれば作れるが、慣れていないだけ
あってこの手伝い邪魔になるかもな。
なーんて考えて手伝っていたらおいしいおいしい
ガトーショコラができてしまった。言われた通りに
動いただけで出来てしまうとはなんとも単調な
ことに感じる。指示もうまいんだなコイツ。
うらやましいぜ。
途中途中で暇をもてあそばせたミコがにょこっと
台所に顔を出してきた。そのたびに「まだ」と
聞いてくるから、これを見せたらさぞ喜ぶ
だろうな。
……保護者か俺は。
「ほら、できたけど」
「おほー、これ全部いただいていいの?」
「3つあって三人いる中で3つ全部自分用だと
よく思えるな、オイ」
「冗談だって冗談。でも二人とも料理なんて
できたんだね」
「俺はまぁ、できるんだけど…… それにしても
須田もできるなんてな」
「そんな珍しいものでもないでしょうに。僕は
親がよくお菓子だったり作ってくれるから
それが身に染みたって感じかな」
チョコを湯煎のために刻むときに使った
包丁を拭きながら居間に戻って来た。そんな
物騒なもの、早くしまってくれや。
俺が料理ができるようになったのは単に俺が
料理が好きだからではない。それ以前に俺に
料理なんて人間的なものは不要に近いからな。
単純に暇つぶしだよ。30年も生きていれば
これくらいの家庭的な特技も持っておくものさ。
「そういえばこんな長居していいのか? それに
親がいないけど挨拶の一つしてないし」
「お母さんは仕事で出ているよ。お父さんは
数年前に離婚して今h」
「あぁ、すまん。そんなつもりじゃ」
「いいよいいよ。逆に気を使わせたね。お母さんは
仕事からもうじき帰ってくると思うけれど……」
礼儀に乗っ取って親御さんに挨拶を一つしてから
帰路につくべきか。あるいはこのガトーショコラを
さっさと食べておいとましてしまうのがいいのか。
ミコは予想通り、もう食べ終わってる。ほんまに
はやいな食べるのだけは。俺も作っただけで一口も
食べていないし、その味で後々の動きを決めるか。
判断基準がおかしいかもしれないが、まぁそこは
別にどうでもいいだろう。
「あ、うまいなコレ」
「でしょ、お母さんがよく作るんよ」
料理風景を映していないだけあってかなり作り方は
簡単だった。これなら確かにずぼらな俺も作れる
かもしれないな。今度おなじものを家で作ってみるか。
「そういえばさ、さっき気になったんだけど神前君は
なんでココって呼ばれてるんだい」
「それは……俺の上と下の名の頭文字をとっただけで」
「へぇ、ずいぶん面白いあだ名だねぇ」
ミコも同じ名付け方なんだよなぁ。別にいいか、
こんな事説明しなくて。
「それじゃあ……」
「?」
「……いや、学校でまた話そうか」
「……あぁ、いいよ。俺たちは大抵「異能部」の
部室にいるからいつでも遊びに来いよ」
ちょっとキザすぎたか。俺のキャラじゃない。
「わかった。それとさ、僕も君のことココって
呼んでもいいかな」
「別にいいよ。正直、ミコにそっちの呼び方しか
されてないからそっちのほうが変なあだ名を
つけられるよりかはしっくりくる」
「そう、じゃあ改めて、須田 拓也だ。よろしく
ココ」
そう言って包丁の持っていない手を差し出した。
俺はそれを握って返事をする。
「あぁ、これからよろしくな。須d」
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「………………」
「……? どうしたのココ?」
俺は今、どんな顔をしている。体の表から裏まで
突き抜けるようなこの感覚は……
「……ミコ……食べ終わったな?」
「え、そりゃあもちろん!」
「じゃあ荷物まとめて早く帰るぞ」
「え、なんで」
「いいから!!!」
ドッ。
「クハッ」
「そんなこと言うなよ。もっとゆっくりしていって
いいんだよ。ココ」
俺は握った手を放し、下を見る。
さっきまで俺がチョコレートを細かく刻むのに
使っていた包丁が、須田の腕を通して貫いていた。
なにが起きた。




