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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
飄々?
136/446

136.契約を果たそう

「須田 拓也?」


 時間と場所変わりまして、10回クイズで

ワイワイしているときでもなければ、音楽室の

絵の中でバトっているときでもない。

今はさらに時間軸をさかのぼって、俺が例の

薬の入手手続きをするときだ。つまりここは

学校から少し離れた「英霊家」であり、俺の

目の前には”生徒会書記兼富豪娘”である

マヤがいる。


 しかも、よりによってモッ〇ルの格好で。


「そういえば、こんな格好だったな」

「へ? 急に久しぶりにこの姿を見たみたいな」

「違う違う、そんなどこかで盗撮したって

 わけじゃなくって俯瞰的に見てな」

「フカン?」

「それはそうとその須田って人は誰なんだ?」

「あぁ、やっぱり知らないわよね。ま、だから

 こうやって頼むんだけど」


 前の音楽室の動く絵画の一件を読んだ読者

ならわかると思うが、俺はあの時にミコと義堂に

(やく)を盛ったのだ。おっとっとこのフリガナ

では危ない香りがするな。それはそうと音楽室で

俺はミコと義堂を、言ってしまえば”黙らせる”

ため睡眠薬を使ったのだ。


 ちなみに、このときマヤに「霊感アップの薬」

ってある? と一応聞いてみたけど、当然ながら

ねぇよと返された。


 そして、この睡眠薬はかなり強力なもののようで

値もかなりつくらしい。もちろんそんなものに出す

金なんてあるわけないし、仕方なくマヤとの会話を

打ち切ろうとしたときに、逆にマヤから切り出して

きたのだ。


 ようは、マヤからの依頼を呑めば薬をタダで

もらえるってことで、話だけ聞くことにしたのだ。


「なんで俺たちに頼むんだよそれを」

「まーまー、話を聞いて。須田 拓也っていうのは

 実は生徒会のメンバーの一人なのよ」

「え、そうなのか。その割にはあまり見ないが」

「そりゃあ学校に来てないもの。見れた方が逆に

 レアだよ」

「そんな義堂みたいなやつが生徒会でいいのかよ」

「それでも仕事はできるからこそ、こっちから

 なんにも言えないから」

「はい? 学校に来ていないんだったら仕事も

 なにもなんにもできないんじゃないのか?」

「いや、あぁごめんごめん、厳密に言うと学校には

 来ている。けれど人と関わりたくないって言って

 授業には一切出ていないの。でも、テストとかは

 ちゃんと別室で受けてるから進級はできてる

 らしい。らしいっていうのは会長からの噂程度の

 情報だから実際に事実なのかはわからない

 ってことだけど」


 そんな生徒が、しかも生徒会にいたのか。


「それで仕事ができるっていうのは?」

「単純に私の書記の仕事を手伝いとかそういう

 ところだけど、


  その質と早さがとんでもないのよ。


  ある意味、天才のそれって感じ。加賀音ちゃんが

 「堅実」に極振りしたステータスだったとしたら

 須田君は、仕事に必要なすべてのステータスが

 均等に必要十分にあるから、生徒会としても

 かなり重要な人材なのよ。だから学校にまれに

 来るときにどんな仕事もぽいっと渡しておけば

 家でやってくるって言って数時間から数日で

 できちゃうっていう凄腕君なの」

「凄腕君って……」

「ま、生徒会に署名上出ているってことでやってる

 から出席状況は微妙なんだけどね」


 須田 拓也という人物像がなんとなく頭の

中に浮かんできた。俺の周りのミコだったり

義堂だったりとは違う性格ではなさそうだな。

どちらかといえば俺の眷属の”ゲイジー”に

近いのだろうか。いや、逆に義堂と似たように

人と関わらないという意味のベクトルごと

違うこともありえるか…… それはさすがに

実際に会ってみないとわからないか。


「それで、その依頼っていうのは?」

「それは私から言うよりも加賀音ちゃんから

 言ってもらった方がいいわ。だって私ですら

 「らしい」とか曖昧にしかわかってないから

 そこんとこしっかりしている加賀音ちゃんに

 聞いてみるのがベストだから」


「つまり?」

「加賀音ちゃんに”須田 拓也”っていえば

 全部わかってくれるはずよ」


 ____________


「それで私に」

「ま、そーゆーことだ。それでその抱えている

 問題を聞きたいんだ」


 結局、マヤが言っていたように「全部」は

分かってくれなかったが、さすがは副会長、

ある程度話せば、文字通り「全て」を理解して

くれた。


「……えぇ、確かにある問題を抱えているのは

 本当です。ですが「異能部」であるあなたが

 生徒会内の問題を解決してもらう義理なんて

 ものはありません」

「それは」

「それに話と須田の人物像を聞いているというの

 であればより外部の人間を関わらせることは

 できません」

「それは違うだろ。あんたら生徒会じゃ現状で

 解決できてないのであれば、ワラにもすがる

 つもりで俺たちみたいな、外部の人間に

 頼むのが正しいと思うのだが?」

「……はい、そうですね。ですが……


  はぁ…… その様子ですと何かマヤと

 取引したようですね。それが何かまでは

 聞くつもりはありませんが、引けない

 理由があるのでしょう。


  確かに私たちでは能力不十分であるのは

 事実です。神前様、では生徒会を代表して

 私から依頼させていただきます」


 よーし、これでマヤとの約束を果たせるな。

強情なまま副会長が折れなかったらどうしよう

かと思ったけど。そのときはまたマヤのもとに

戻って再び話を聞くだけだがな。


「それでその問題と言うのは?」

「はい、須田 拓也を学校に呼んでください」


「……」

「……」

「……ん? 学校には来てるんじゃ?」

「いいえ、それは去年までの話です。去年までは

 授業には出ていなくても学校には来ていました。

 形式的には「保健室登校」に近い状態でしたが

 それでも学校には来ていました。しかし、今年に

 なってから一度も学校に顔を出していません」

「いや、これもマヤから聞いたけど学校に長期的に

 来ないこともあるって」

「そうですが、生徒会からの報告もあるので

 学校に早急に来てほしいのです」


 「生徒会から生徒会に報告」っていうのは

どこか変ななぞなぞを聞かされている気分だな。


「報告っていうのは」

「それはわかりません。会長が直々に話したい

 ことだとおっしゃっていましたので。


  そして、神前様には須田君の家に

 直接訪問してほしいのです」

「えぇ? それこそ生徒会メンバーの誰かが

 向かえばいい話なんじゃ?」


「それができないのです」

「できない?」


「私を含め、会長、そしてマヤや顧問等の教師が

 須田君の自宅を何度か訪問しています。


  ですがいつも反応がありません。無論

 定期的に訪問しているのでいつも留守だと

 いうことはないでしょう」

「つまり生徒会メンバーだと”なぜか”居留守を

 使われると」

「そういうことです」


 人見知りしやすい人とは聞いていたが

さっきまでのマヤと副会長の話を聞く限り

生徒会のメンバーにはギリギリ友好的なんだな

と認識していたから、これは意外だな。

ようは生徒会でも人見知りの対象になった

ってことでいいのか……?


 いやいや、逆にあんなに仕事ができるような

有能な人材がこんな幼稚もはなはだしい理由で

外界からシャットアウトするものなのか?

そういう類の「天才」というのは常人には

理解できない部分が存在するっていうのは

定石ではあるか。


 ということはやはりここは俺たちが

”ある意味”適役ってことか。


 生徒会でダメなら生徒会以外で! って

意味でもチャレンジしてみるのもありだろう。

といっても、そんな引きこもり体質なヤツが

何事もなく和解してくれるとも思えないけどな。


 ものはやりようだ。やるしかない。


「わかったわかった。それじゃあ今週中のどこか

 にでも訪問してみるわ。そのときに連絡して

 おく」

「わかりました。それと須田君の自宅の住所は

 ……」


「……ですので、どうか忘れずに」

「そんなRPGの囚われの姫みたいなセリフ

 言わんくていい。それじゃあこの後も何か

 用事があるんだろ? 訪問のあれこれはまた

 今度、話すとしてそれじゃあな」

「はい、本日はご報告ありがとうございました」


 俺は生徒会室の扉に手をかける。そしてそれを

クイッとひねったところで一つ思い出した。


「そうだ、副会長」

「はい、なんでしょう」


「須田 拓也について知っている人間ってこの

 学校に何人いるんだ?」

「え、それは…… 生徒会でも数少ない人たちですね。

 本人があまり会いたがらないのもありますが

 一番の理由は実績ですね」

「実績?」

「ええ、単純に”学校に真面目に来てもいない

 人間が生徒会にいる”という事実を伏せておき

 たいのです」

「あぁ、なるほどね」


 確かに「不登校児が生徒会にいる」となれば

内外問わず色々とうるさくなりそうだからな。

でも、まさかこんなことを生徒会が隠していた

なんてな。特に真面目そうな副会長から

”隠蔽”なんて二文字が浮かび上がるなんて

思ってもいなかった。


「ですので、知っているのは会長と私の上役の

 二人、それと個人情報を握っているマヤと

 かつて同じクラスだった人たちぐらいですかね。

 とはいうものの、その同じクラスだった人らも

 自然消滅した須田君については退学したと

 思っているでしょうね」

「ようは知っているのは三人だけか」

「いいえ、神前様が含まれましたので四人です」

「わーったわーった。それじゃあこれで……」


 と、もう一度ドアノブに手をかける。が、

またしても俺は副会長に問いただす。


「あぁ、それとさ」

「はい?」


「その訪問ってさ、同伴者ありでもいい?」



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