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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
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130/458

130.真っ向勝負しよう

「でぇああああああ!!!!」

「ぐっぅ! っああああああっ!!」


 義堂がどんと音を立てて”ムム”に向かい

飛び込む。さっきの攻撃で、本来の目的の

”ビビ”を今は攻撃できないと悟ったのか。

まずはその邪魔をする”ムム”からやるしか

ないと、不良の勘がうなったのだろう。


「よけんじゃねぇ!!」

「いいえ、貴様が避けてるのよ。さっきも

 言った通り、空間をゆがませているから

 真っすぐに来るようなら、それの座標を

 少しずらすだけなの、まだわからないの?

 やっぱりニンゲン貴様はザコの名に

 ふさわしいわ」

「んだと、コノヤロウ!!!」


 案外”ムム”のほうが俺よりも義堂を

「やる気」にさせるの上手いかもな。


 しかし、これではらちが明かない。


「お”い! 正面からどうどうぶつかって

 来いよ!!」

「そんなことをしなくても私たちは勝てる。

 そんな無駄で、迂闊で、リスキーなこと

 してまで戦う必要がないもの。それに

 さっきから貴様、意気が上がっているが、

 私よりもその「自分」と「自分」のことを

 考えた方がよくて?」


 義堂の利き手の右手は血だらけだ。それは

もちろん”ムム”をぼっこぼこに殴ったときの

返り血なんてものではなく、義堂が無茶を

することで体に無理がかかることで起きる

ただの自滅行為によるものだ。


 特に攻撃部である右手に魔力を固める

から、そこから重点的に無理がかかる。

この調子で殴り続けても、意味がない。

……わけではない。


「けっ、そりゃてめぇも同じだろうが。

 聞いたぜ。てめぇのそれも俺たちみてぇに

 ずっとできるわけじゃねぇんだろ?」

「そうかしら? 最低でもあなたがくたばる

 までは持たせるだけの余力はありますよ?」

「ったく、よくんな滑稽でいられるぜ。

 その調子乗った態度、とっととやめちまえ」


 再び義堂が殴りかかる。もちろんそれも

顔をかすめることなくはずれてしまうが、

俺はその時の若干の、”ムム”の疲れを

見逃さなかった。


 空間が全て、歪んでいない。


 攻撃を全て完全によけるとなれば、そこの

空間全てを歪ませる必要があるのは、なんとなく

であっても想像がつく。が、さっきから

その空間湾曲が、どんどん簡易なものに

なっている。やはり、あれは力を使うのであり

それに伴い”ムム”もいつかは俺たち同様、

限界が来る。


 それまで俺の力が持てばの話だがな。


 だが、それでも少しづつではあるが義堂の

攻撃が通じるだけの可能性が出てきている。

殴り続けるしかない。


「お”い、神前。俺の右手を治すとかできねぇ

 のかよ。


  できるけど、それにも多少なり魔力が

 いるからできる限り使いたくない。それに

 そんな必要もないだろ。


  てめぇは鬼かよ。


  悪魔ですが何か?」


 そんなのは130話前からずっと

言い続けている。今更、聞かれたところで

何もキョドキョドして答えない理由もない。


 っていってもこの世界だけの話だけどな。


「つーか、ミコの野郎は一体どこにいんだよ。


  あ、すっかり忘れてたわ。


  けっ、んな大事な場面で忘れるてめぇは

 それでも副部長か?


  逆にこんな土壇場でさっそうと出てこない

 部長もどうかと思がな。


  んなこったどーでもいい。とっとと目の前の

 こいつらぶっ潰して、迎えに行くぞ。ま、一体

 どこにいるか分かったもんじゃねぇが」


 多分、学校の音楽室で寝てると思う。薬の

効き目が弱くて目が覚めてなかったらな。


 ____________


「っぶえぇええっくっしゃおおおおん!!!!

 ……ん? 誰か私の噂でもしてるのかなぁ……

 でも、ここほんと寒すぎるんだけど…… ココと

 ギドー君はやく起きないかな。そうじゃないと

 私が風邪をひいt、ハッ、ヘッ、ふぇっくっs」


 ____________


「クシュッ!


  どうした義堂? 風邪でも引いたか?


  いや、どこかで俺の噂をした気がしたん

 だが…… 気のせいだろ。どーせミコの野郎が

 俺たちのことでもウジウジ言ってんだろ」


 ____________


「ヘクシッ! また誰か噂してる!!?

 それはそうとココとギドー君は私と違って

 なんで寝てるんだろ」


 ____________


「ハクシッ! んだよまた誰かうわs


  義堂、もうやめろ! これ以上は

 やりすぎだ!


  あ”? やりすぎ?」


 なんだかこれ以上やると「クドイ」と

文句が言われそうだ。ただでさえ、今回の

音楽室編は作者のネタ切れで遅延している

のだから、これ以上に変なことはできない。


 すいません、リアルが忙しかったり体調が

悪かったりで更新ペースが悪くて(作者談)


「それはそうと。そろそろ本気で行くぜ。

 神前、てめぇは用意出来てんのか? あ”?


  それはお前に合わせるから大丈夫だ。だが

 無茶だけはするなよ。相手は曲がりなりにも

 大悪魔の眷属の一人なんだ。下手したらスパッと

 死んでもおかしくはないからな。


  だったら大丈夫だ。そっちのほうが俺に

 とっちゃ都合がいい。神前、頼むぜ。


  おーけー」


 俺は再び息を吸い込む。といっても義堂が

やっていることに変わりはないよな、コレ。


「******************」


 俺は呪詛を一つ唱える。そして義堂の身体は

徐々に、元の姿に近づき始める。


「あらあら? 元の姿に戻っていますが?」

「はっ、どうした? そんなにこの姿が珍しいか?

 神前、後は任せろ。今からこいつをツブス」


 殺意


 ここあたりにこの負の感情が充満している。

そんな感じだ。流石は上位種の持つ力という

ところか。


「行くぞ、クソッたれ野郎が!!!」

「何度やってもおなz」


 さっきと同じように”ムム”は空間を歪ませる。

しかし、”ムム”には攻撃をしていない…… その

拳の矛先は、詠唱を続けている”ビビ”に直接

向かっている。


 これには”ムム”もぐっと方向転換する。

そして同じように”ビビ”の周りの空間を

歪ませる。


「これで……」

「わりぃがそっちじゃねぇぜ?」

「はっ」


 そうだ。”ムム”の力もあまり残っていない。

ゆえに”ビビ”の周りに魔力を施せばおのずと

自分の周りにも手をかけれなくなる。義堂は

それを狙った。


 それでも”ムム”は寸でのところで攻撃をはじく。

それでも落ち着かずに義堂はさらに攻撃を重ねる。

それに合わせて”ムム”も魔力を使う。


 が、次は”ビビ”をやるつもりだ。それもまた

寸でのところで止める。この猛攻は止め場を

知らない。


「どうした! どうした! どうした!!!!

 どうしたあああああああああああ!!!!!

 そん程度で止まるとでも思ってんのかぁ!!」

「この、ザコがぁああ!!」

「ザコでも何でも言ってろ、ブス!!! それが

 本気じゃねぇってのは知ってんだよ。とっとと

 俺に本気でぶつかってこい!!


  真っ向からやりあおうぜ!!!」

「ブスですって? 上等、やってやるわ!!」


 個人的には”そこ”が怒りのポイントかよと

ツッコみたかったが、今はそれどころじゃない。


「********************!!!」

「けっ、そん程度かよてめぇの本気はよぉ?

 こっちにはてめぇらの”ますたー”ってのが

 いるんだろ? そん程度でやれるとでも

 思ってんのかよ」

「ええ、これが私の本気よ。私はこの力で

 この世界を守る! そしてあんたらから、

 ビビを守って本当の自由を手に入れる!!

 そのために妥協なんてするものか!!」


 あぁ、あれはマズイ。冷静を保っている風を

装っているが、あれはいつ暴発するかわかった

ものじゃない。あのまま突撃したら、必ず義堂は

やられる。


 が、ここで止まるわけがない。

 義堂は決して止まらないのだから。


「……いいぜ。神前、まかせるぜ……

 おい、”むむ”っつったなてめぇ? その

 名前だけ覚えておいてやる。だったら俺の

 本気をぶつけてやるよ!!! 俺が果てるが

 先か、てめぇが果てるが先か勝負だぜ!!」

「望むところ!!」


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」


 喉を殺すような低い声が山にこだまする。

雪崩の前兆のように地面が揺れ動く!!


「グッ…… はぁあああああああああ!!!」


 それに負けじと”ムム”が喉を翻すように

たける。二人の共鳴が不協和音となって

辺りに”殺意”となって共鳴する。


「だあっ!!」


 先に動くは義堂。無論、義堂が本気で

ぶつからない限り”ムム”も動きようがない。

今度は”ビビ”へ殴りかかる素振りもなく

一直線に”ムム”のもとへ殴りかかる。


 これはさすがの”ムム”も止められる。が、

それはできない!! なぜだ!! 要因は……

もう知り得ている。ただの魔力の枯渇だ。

自分の力で歪ませた空間に打ち勝とうとする

義堂が勝っているということか!!


 それはさせない!! それが通れば

もうあの大悪魔に勝つことは不可能だ!

それだけに義堂は本気で”ムム”にぶつかりに

来ているということならば、それに答える

しかない!!


「んっ!! がぁあああああ!!!」

「そんな声出すなよ。せっかくのブスが

 台無しじゃねぇか!!」

「それがレディにかける言葉ぁ!!??」


 そんなことを言ってるが互いにっ徐々に消耗

しているのは事実だ。義堂が殴り続けそれに

合わせて空間を歪ませる。義堂は殴るたびに

腕の付け根から指先のどこかから血が飛び、

”ムム”は空間を歪ませるたびに、口からたらりと

一滴づつ血を流す。だが、それでも互いに

そんなことに気に留めず、真っ向からぶつかる。


 ここが貴様の墓場だと言わんばかりに。


「はっ、かかっ!! どうした!! 顔が

 ひきつってんじゃねぇかぁ!! あ”ぁ!!?」

「あんたこそ、こんな状況で笑うかしら!!」

「これだ!! これだぁ! これだけ

 しぶてぇ野郎と当たるのは面白れぇ!!」

「ちっ! 狂っている!!!」

「俺は今は悪魔なんだ。それがどうした!?

 そいつぁ誉め言葉だぜ!! そっちも

 悪魔らしく、狂気に笑っちまえよぉ!!!」


 寝言は寝て言え!!


 ”ムム”が叫ぶ。その一言から互いに攻撃と

防御のテンポがエスカレートしていく。


「だああああああああああああああああ」

「はああああああああああああああああ」


 草木が恐れ成すように体をのけぞる。

モナリザの絵の中だというのに、肝心の

モナリザ本人がいないこの空間で、悪魔と

悪魔の真っ向勝負が佳境に向かいだす。

正真正銘、最後に立っていた方が勝利する

本気と本気のぶつかり合いの消耗戦だ。


 この攻防はすぐに決着がついた。それは

知っていたことだし、結果に驚きもしない。

両者の動きが止まったのだ。


「……はぁーーーーっ」

「……」


 ……


「……ちっ、しくじった……」

「……!!」


 先にひざを折ったのは、


 義堂だった。


「はぁ……はぁ……」

「畜生がぁ、てめぇ……」

「私の、勝ちだマスター……ここは

 私たちの世界で……ふっ……これ以上に

 マスターからは、何もいらない……

 もう、邪魔は、しないで」

「がはっ、くそっ、てめぇに勝てるはずだった

 んだが…… 一回しくった……」


 ズシャッ


 義堂が土砂に崩れ落ちる。それもすべての

力を使い切り、タダの人形となったかのように。


「終わった…… ……”ビビ”」


 ”ムム”が義堂が倒れるのを見取り振り返る。

詠唱が終わりかけてる”ビビ”のもとへ急ぐ。


 ガクッと足元に何かが掴まれた感覚がある。

まだアイツ動けるのか!? と思ったが足には

何も掴まれていない。これは違う、さっきの戦いで

力を消耗仕切ったことで、足の力が抜けた

だけだ。


「ははっ、”ビビ”どうかしら?」

「……ん、んん? おねえ、ちゃん?

 おねえちゃん大丈夫その足と体」

「ええ、大丈夫よ。でもここは空間を歪ませ

 過ぎたから離れましょ。


  ここから安全な場所へ」


「おねえちゃんオネエチャン、これで

 ぜんぶ終わり?」


「そうよ”ビビ”、これでもう私たちは……」



「不自由だ」

「「!!!????????」」


 !!!???


 空から声が聴こえた。その声は誰よりも

聞き覚えのある声だ…… あの忌々しい

狂ったニンゲンではない。この声は……


 マス、ター……!!??


 そう認識したときには自分たちの身体は

取り押さえられていた。がっと二人の首を

掴まれ、地面に押さえつけられる。


 これはもう逃げれない。そんな力なんて

自分の中にはもう微塵も残っていない。


「マ、マスt」

「ま、マスタ」

「******************」


「「う”っ! あぁあああああああああああ

  ああああああああああああああああああ

  ああああああああああああああああ」」


 体からすべてが抜け出していく。かすかに

のこった魔力ですら吸い取られている。


「ふぅ、あぶないあぶない」

「ま、マス、ター。な、なんで、ここ、に」

「それはだなお前らが俺の事をなめてかかって

 いたってところと、なめてかかって

 こなかったってことだ」

「「……え」」


 義堂に言ったあの時のセリフは

 ”虎の威を借る狐”だよ。

 日本語の授業を始めようか。



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