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戦闘訓練

はるか遠い昔、惑星【ユミル】に巨大な移民船ギンヌンガ・ガプが飛来し、何千人もの人類が移住し文明を築き上げた。


そして、文明はムスぺルヘイムとニブルヘイムの二つに分かれ、各国は戦争をはじめ、両国は兵士の死亡率削減のため生物兵器を生み出し戦場に導入。


が、突如として生物兵器が自我に目覚め、繁殖にため人類を捕食し大陸全土に蔓延り、人類は奴等の餌として蹂躙され、両文明は滅亡した。


それから数十年後、古代の生物兵器を「喰獣(グラトニー)」と呼称。


生き残った人類は最後の砦である人工島 軍艦島を建設し、その防衛と人類救済を目的とした人類レジスタンス軍「ARES連合軍」を設立。


そして、長年の研究の末、喰獣に対抗するナノマシン兵器「魔装」を開発、魔装を駆使して戦う「魔装師部隊」を結成しこれに対抗した。


だが、魔装師になれるのは適性を持つ男性のみ、そして、喰獣と戦う宿命てその力の代償ゆえに、短命であった。



軍の英雄である魔装師でたった一人の肉親だった兄、神風凛動(カミカゼ・リンドウ)が戦死したのは、神風蕾華(カミカゼ・ライカ)が10歳の頃だった。


初恋の相手であり蕾華の義姉になるはずだった15歳の氷室瑠璃夏(ヒムロ・ルリカ)は結婚式の前日に兄の死を知らされても決して泣くことはなく、残された蕾華を引き取り、姉として育ててくれた。


林道の死を風呂で泣き崩れて号泣していた蕾華を瑠璃夏が優しく胸に抱きしめて慰めてくれたのは今でも覚えている。


その時、瑠璃夏のお腹には双子の命が宿っており、その半年後、瑠璃夏は林道との子供である双子の男女を産み、


5年後、蕾華は初恋の相手である瑠璃夏とその双子の子供である(ミオ)(リク)と共に暮らしている。



◇魔導歴225年 軍艦島 ARES連合軍士官学校中等部 軍事演習訓練場



授業の6時限目であるARシミュレーターを作った模擬戦闘が開始され、各々がARゴーグルを身に着け、仮想の敵を目の前に向かって、各々が訓練用擬似魔装を「顕現(アルディアット)」させる。


その中に、黒髪に青いメッシュの入ったウルフカットの中性的な美女、否、この軍学校に女はいない。


この世のものとは思えない程の絶世の美女のうよな美し過ぎる容姿をした美少年がいた。


神風蕾華その人である。


蕾華は拡張空間に現れたAR擬似オーク型中型喰獣にむかって剣型擬似魔装を構える。


ARだとしても攻撃を受けるとダメージの激痛が戦闘服(コンバットスーツ)を通して伝わってくる。


油断はできない。


本城(ほんじょう)、どうする?」


蕾華がクラスの隊長格の生徒である本城空凱(クウガ)に問いかける。


「βスクワッドはやつの動きを封じろ、その瞬間にαスクワットとγスクワッドで全員で一斉掃射」


「「「了解」」」、その掛け声ともに蕾華を含むβスクワッドが剣型擬似魔装を手に目の前のAR擬似喰獣に向かって突撃する。


足元付近に近づいても喰獣は両手の爪をβスクワッドの隊員に向かって振り下ろした。


「グハァ!!」


隊員の生徒が後方へと吹き飛ばされる。


そう、この相手はARであっても映像ではない。


実は目の前にいる敵はAR用液体金属型ロボットが敵を具現化したもの。


接近した隊員達が次々と攻撃を受け、着実にダメージを受ける中、


蕾華だけは違った。


接近した際に、敵が振り下ろした爪の攻撃を右にステップする。


そして、一気に素早く、敵の左右の足を剣で攻撃し、動きを怯ませようとするが、敵はまだ怯まない。


敵が右前足に体重をかけ、両肩を少だけ動かした。


(来る!!)


両手の爪が蕾華に向けて再び振り下ろされ瞬間、


蕾華はその場で高くジャンプ。


空中で一回転し、そして、剣の縦斬りを敵に向けて斬りつけたのち、


「今だ!!やれ!!」


蕾華のその合図と共に。


「総員!!一斉掃射!!」


本城の合図と共にα、γスクワッドのライフル型擬似魔装の訓練用弾丸が一斉にして放たれる。


弾丸は擬似の敵の体を穿ち、そして、敵である喰獣に擬態した液体金属ロボットは完全に機能を停止したのだ。


『訓練終了、総員顕現(アルディアット)を解除せよ』


室内のアナウンスと共に、全員が擬似魔装を解除。


小さなブレスレット状になった擬似魔装を腕から外してダストシュートに向けてゴミのように投げ捨てる。


実質この訓練用擬似魔装は使い捨てなので捨てた擬似魔装は他に様々な使い道としてリサイクルされる。


蕾華が最後に擬似魔装を外してダストシュートに投げ捨てると。


「いい動きだったな、神風」


本城が蕾華に近づき肩に手をやる。


「サンキュー、お前の判断も中々だったぞ」


「いや、俺はお前みたいなずば抜けた反射神経はない、その反面ではお前が羨ましいよ」


そういうと、本城は改めて聞くかのように蕾華に問いかけた。


「……本当によかったのか?」


「何がだ?」


「俺が隊長でだよ、本来の成績ならお前の方が相応しいはずだったのに」


ほんの少しだけ静寂が続くが、


「いや、俺はお前みたいな的確な判断はできねぇ、そういう面においてはお前が隊長に適任してるよ」


「けど」


「自第一に指揮官訓練ではお前の方が俺より上だったじゃねぇか、自分に自信持てよ」


蕾華が本城の肩をポンポン叩く。


「……ありがとな蕾華」


「あぁ、気にすんな」


二人が友情に熱くなっている時だ、


「全員集合!!」


訓練場の片隅で教官である加藤の掛け声が室内に響きわたる。


蕾華と本城を含めた訓練生達は加藤教官の元へと駆け出し、「整列!!」という合図で即座に列を正す。


「本日の訓練はこれまで、15分後に教室にてホームルーム後、帰宅してよし」


「「「はい!!」」」


「では解散」


そして、各訓練生は各々訓練場から出ていくが、


「神風、お前は少し残れ」


そんな時、加藤は二人を手招きし、蕾華は訓練場から出ていく本城を含んだ訓練生達を他所に、教官の元へと足を運び、起立しながら前に並ぶ。


「教官、いかがなさいましたか?」


そう問いかけると、加藤は強面なり、


「なんだ、あの動きは」


予想外の言葉に蕾華は一瞬言葉を失う。


「……申し訳ありません、何か問題でも……」


「問題大アリだ」


加藤は腕を組み、ゆっくり蕾華の隣へと歩み寄る。


「普通の訓練生はまず敵を見てから動く、それは分かるな?」


「はい、『相手の攻撃パターンを見切った上で次の手を判断する』、そう教わりました」


「だが、お前は違った」


「……といいますと?」


「……()()()()()()()()()()()()


「……」


蕾華は黙り込んだ、図星だ、その動きはかつて幼い頃、兄である凛動に教わった事だ。


『蕾華、相手の腕を見るな、常相手の重心を見るんだ、重心が動いている時はすでに攻撃が始まってると思え、そうすれば自然と相手の動きを読むことができる』


かつて凛動の言葉が頭によぎる。


加藤は静かに息を吐いた。


「俺も30年近く教官をやっているが、お前みたいに戦場の勘を持った訓練生は数える程しか見たことない、特にそれがずば抜けてたのは」


その時、蕾華は咄嗟に頭に空かんだ名前を口に出した。


「神風凛動……ですか?…」


その名を口にした途端、加藤は厳しさとどこか懐かしさを含んだ目をした。


「そうだ、お前の兄だ」


蕾華は無意識に拳を握り締めた。


「誰よりも冷静に判断し、誰よりも戦場を駆け抜けていた」


加藤は苦笑いしながら口を続けた。


「あいつを初めて見た時思ったよ「化け物みたいな新人が入ってきたな」ってな」


黙ったまま聞いてたとき、加藤は蕾華に視線を向ける。


「だがな神風、お前は兄貴にはなれない」


「!?」


「あいつは天才だった、だが、お前は努力でその背中に追いつこうとしている」


加藤は蕾華の肩にポンと手を置いていった。


「神風」


「はい」


「兄貴の真似はするな」


「………」


「どんなに努力しても、お前は神風凛動にはなれない……けどな」


加藤は力強く続ける。


「お前は神風蕾華という存在にはなれる」


「自分という存在…でありますか?」


「そうだ、その先でお前が兄を超える日は来るかもしれん」


その言葉を聞いた蕾華はゆっくりと敬礼した。


「…はい!」


「期待しているぞ、必ず、人類を救う魔装師となれ」


そう言うと、加藤は訓練場を後にした。


「……ありがとうございます」


蕾華は加藤に向かって礼をして、力強く、そう答えたのだった。

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