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最期を貴方へ

「ステージ4の乳がんです。余命は────」

視界が歪み、声が上手く耳まで届かない。

不思議と頬は濡れていなかった。


最期に、あの人に会いに行こう。

大好きだったあの人に。


────

インターホンが鳴った。

宅配便なんて頼んだ記憶ない。勧誘だったらタダじゃおかないぞ。


「久しぶり!」

画面には満面の笑みで立つ女友達がいた。


何かのドッキリか。なんで桜が。

駄目だ、考えていても仕方がない。


「ちょっと近くまで用事があったからさ。スマホの充電も切れちゃって直接暇を潰しに来てみたの。」


こいつは昔からそうだ。

全く変わっていない桜に、ある意味安堵する。


「俺が彼女を連れ込んでいたらどうしてたんだよ。」

「秋也にそんな相手がいるわけないじゃん。」

こいつ、俺の悪態を無下にしやがって。


「で、どうしたんだよ急に。何か用があったんじゃないのか。」


まるで自分の家かのようにくつろぐ桜に呆れながらも、心のどこかで嬉しさを隠しきれない自分がいた。


「今週末、コスモスを見に行かない?」

「別にいいけど。なんでまた急に?」


意味なんてないよと寝転びながら適当な返事をする桜のことを、今でも愛おしく思ってしまうなんて俺も健気なものだ。


報われないこの思いは、気づかれないうちにそっとしまった。

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