第13話 覚醒同盟正式結成 ~六つの灯が一つになる時~
神獣の里を後にした翌日。
俺たちは大陸のほぼ中央にある「天空の円卓遺跡」へと集まっていた。
この遺跡は、昔の巨人族が使っていた巨大な会議場で、
今はヴォルガルドが「最もふさわしい場所」と選んでくれた場所だった。
遺跡は山頂にあり、周囲を雲が覆う。
中央に、六つの巨大な石の椅子が円を描いて並んでいる。
俺たちはそれぞれ人間サイズに戻り、その椅子に着席した。
出席者一覧:
• ケンタ(最後の巨人・盟主)
• リナ(人間の少女・俺の大切な仲間)
• エルウィン(樹霊エルフの代表)
• グラム&バルドガン(鋼のドワーフ代表)
• シルヴァリア(樹霊巨人長老)
• ガルヴァン&ルカ(神獣獣人族代表)
• ヴォルガルド(古竜・巨竜代表)
ヴォルガルドが最初に重々しく口を開いた。
「これより、覚醒同盟の初の正式会議を始める。
我々六種族は、魔王の脅威を乗り越え、巨大化の血を呼び覚ました。
しかし……本当の戦いは、これからだ」
シルヴァリアが優しい声で続ける。
「森が語っています。
地下の奥深く、何か途方もないものが目覚めようとしていると。
それは、魔王など比較にならないほどの……」
ガルヴァンが牙を軽く鳴らして頷く。
「我ら神獣も感じている。
血が、ただの解放ではなく、警告を発している。
何か……異質な『巨人』が、この世界を狙っている」
俺は深く息を吸い、全員を見回した。
「みんな、聞いてくれ。
俺は転生者だ。前世は普通の人間だった。
この世界に来て、突然巨人になって、最初はただ生き延びるので精一杯だった。
でも、今は違う。
みんなと出会って、仲間ができた。
この力は、守るための力だと思う。
だから……俺は提案する。
『覚醒同盟』を正式に結成し、
これから来る『異星の巨神』と戦う準備をしよう」
バルドガンが大きな拳で石のテーブルを軽く叩く。
ドン、という音が遺跡に響く。
「異星の巨神……か。
わしら鋼のドワーフは、巨大な要塞を築くのが得意じゃ。
同盟の拠点として、天空の要塞を建設しよう。
巨大種族全員が入れる、誰も踏み潰さない安全な場所をな!」
グラムが目を輝かせる。
「それはいい! わしも鍛冶を全力で手伝うぞ!」
シルヴァリアが微笑む。
「森の力で、要塞を覆う結界を作りましょう。
樹霊の根が大地を繋ぎ、敵の侵入を防ぎます」
ガルヴァンが腕を組む。
「我ら神獣は、地上の斥候と突撃を担当する。
ルカのような若手も、訓練次第で強くなれるはずだ」
ルカが勢いよく立ち上がる。
「俺、頑張るよ! ケンタ兄貴みたいに、里を守れるようになる!」
エルウィンが静かに提案する。
「人間社会との関係も重要です。
まだ多くの人間が我々を恐れています。
ケンタが人間サイズに戻れるように、他の種族も『縮小の術』を磨くべきです。
誤解を解き、共存の道を探りましょう」
ヴォルガルドが翼を軽く広げ、低く唸る。
「我は空の守護を担おう。
しかし……一つ、懸念がある。
異星の巨神は、この世界の『巨大化の血』を狙っている可能性が高い。
我々を『実験材料』として、利用しようとするだろう」
会議の空気が一気に重くなった。
俺は立ち上がり、全員の顔をしっかり見た。
「正直に言う。
俺はまだ盟主として未熟だ。
みんなの過去の傷も、完全に理解できてるわけじゃない。
でも……一つだけ確信がある。
この同盟がなければ、世界は異星の巨神に飲み込まれる。
だから、俺はみんなを信じる。
お前たちも、俺を信じてくれ。
一緒に、未来を作ろう」
リナが俺の隣で、大きく頷く。
「ケンタなら大丈夫!
私も、みんなの役に立つよ。
人間として、橋渡しができると思う!」
長い沈黙の後、最初に口を開いたのはシルヴァリアだった。
「樹霊の森は、ケンタに賛同します。
光の呼び覚ましに、応えましょう」
次にガルヴァン。
「……我ら神獣も、牙を同盟のために振るう。
ルカの目を見れば、それが正しいとわかる」
バルドガンが豪快に笑う。
「鋼の誇りにかけて、約束しよう!」
ヴォルガルドが深く頷く。
「古き血の盟約、ここに新たに結ばれる」
エルウィンが静かに微笑む。
「エルフの森も共に」
全員の視線が俺に集まる。
俺は深く息を吸い、右手を胸に当てて宣言した。
「それでは、ここに宣言する。
今日、この天空の円卓において、
『覚醒同盟』は正式に結成された。
目的はただ一つ——
この世界を、異星の巨神から守ること。
巨大種族の誇りと、光の力を以て」
六種族の代表が一斉に立ち上がり、右手を胸に当てる。
リナも一緒に真似をした。
その瞬間、円卓の中央に金色の光の柱が立ち上った。
六つの血が共鳴し、遺跡全体が淡く輝く。
まるで世界が、この同盟を祝福しているようだった。
会議の後、俺たちは遺跡の外れで少し休憩した。
リナが俺の隣に座り、小さな声で言う。
「ケンタ……かっこよかったよ。
盟主って、すごく似合ってる」
俺は照れくさそうに頭を掻く。
「まだまだだよ。
これから、もっと大変になる。
人間の国がどう反応するか……それに、異星の巨神の使徒がいつ本格的に動き出すか……」
ルカが元気よく近づいてくる。
「ケンタ兄貴! 俺、訓練頑張るから!
一緒に巨大化バトルしようぜ!」
ガルヴァンが遠くからため息をつきながら見守っている。
シルヴァリアの枝が優しく風に揺れ、バルドガンが新しい要塞の設計図を広げ始め、
ヴォルガルドは空を見上げて静かに翼を休めている。
俺は空を仰いだ。
まだ見えない敵。
しかし、仲間は確実に増えている。
覚醒同盟は、今日から本当の意味で動き始めた。
巨大種族の灯火が、六つから一つに繋がった瞬間だった。
しかし、その光が強くなればなるほど、
地下の闇もまた、深く蠢き始めていることを、
俺たちはまだ知らなかった。
(続く)




