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第9話

 日付けが変わる五分前。


 またトークルームの中でメニーとランキングの様子を見ている。


「さっき5勝差で、今一つ増えたけどさすがに間に合わないよ。エニーの作戦通りだね」


「後の先の戦法じゃ、一気に増やすのは無理だからな」


「相手が本気じゃないのを考慮してもさすがにね」


 俺は計画通りに終了前15分の時点で五位のプレイヤーを抜き去った。

 念の為もう一回分参加枠は残しておいたけど、必要なかった。


「さすがに疲れたな」


「1日で100戦以上だし、最後も40戦近くやったんだから仕方ないよ。お疲れ様」


 さすがにもう一回やることになったらいけたかどうかは怪しかった。



「これで一緒に最上級だな」


「エニーとはやらないからね?」


「まぁ、本気でやるっていってもお互いどこか気を遣いそうだしな」


「違うよ。たぶん今のエニーには勝てないもん。わたしだって師匠に挑戦したいんだよ?」


 自分で言うのもなんだけど、俺はイレギュラーみたいなもんだしな。


「なるほど。なら、どっちから連勝チャレンジするかジャンケンしようか?」


「お、いいよ。それなら勝てそう!」



「じゃーんけーん――」



「「ほいっ」」



 俺はチョキでメニーはグー。

 ぶっちゃけ方八百長だ。

 VRグリップ握っててパーは出せない。



「やりー! じゃあ、わたしからだねー」


 メニーは気付かなかったようだな。


「ああ、最上級の戦いを見せてもらうぞ」


「そういやわたしの戦うとこ見てもらうの初めてだもんね。頑張っちゃうよー!」


 正直に言うと、最上級の戦いというよりメニーが戦う姿を見たかったんだ。


「それで、日付けは変わったけど、反映されるの何時なんだ?」


「あ、そっか。昼の12時からだった」


「明日は月曜だから大学だな。そもそも相手がいないとだし、何時くらいにするんだ?」


「そうだねー、わたしも大学あるし・・・夜9時くらいが増えてくる時間だけど・・・。あ、これも言ってなかったね。最上級は中断で参加終了にならないから。人数少ないからそうなったんだ」


「連勝中は同じ奴とはマッチングしないのか?」


 再開して同じ奴と当たってそれがカウントされないとなると面倒だな。


「最上級は基本申請順だからすることもあるけど、そこは大丈夫。倒した人数じゃなくて単純に連勝すればいいから。今週は17人になりそうだから9連勝だね」


「さすがにこの人数じゃリングは一つか」


 懸念は消えたな。

 同じ奴でも倒せばいい。


「さすがに、ね」


「あと、最上級はロビーが別に用意されててそっちに入ることもできるよ」


「なんで?」


「やっぱり有名人になっちゃうからね。トラブルもそうだけど、最上級常連の人とかファンがすごいんだよ」


「はぁー。スライム君だけじゃないんだな」


「むしろフィールドマスターは出番が少ないからね」


 大型モニターで戦闘を常に公開している最上級プレイヤーの方が人気だったりしそうだ。

 というか、メニーみたいな可愛い子が最上級で、その映像流れたら反応凄そうだな。


「そうか、そうだよな。先週は挑戦者いたのか?」


「うん、火曜日だったかな? 師匠に通知が来て、翌日戦ったみたい」


「みたい、って見てないのか?」


「そう! 師匠ったら酷いんだよ! わたし前からその日はイン遅くなるって言ってたのにわたしが来る前に時間指定しちゃったの!」


「メニーを警戒して手の内明かしたくなかったんじゃないか? ってか、マスターが指定できるんだな」


 俺が特殊な戦い方をしているだけでメニーは強い。


「そっか、そういう見方もあるね。ふふっ、エニーありがと。マスターも調整するだろうしね。闘技場参加できないから間隔空くと鈍る人もいるみたい」


「なるほどね。だから弟子を取る暇もあったってことか。それにそのシステムならマスター交代も割とありそうだな」


「うん。ほんとここの運営はよく考えてるよね。ちなみにマスターに挑戦通知出てから24時間以内に対戦日指定しないと不戦敗扱いらしいから師匠も毎日ログインはしてるよ」


「俺達の連勝チャレンジも見られるかもな」


「それは間違いないね。師匠そういう勘は鋭いから。たぶん専用ロビーで会うと思うよ」


 そう言いながらメニーは笑う。


「ふふ、会うのが楽しみだ」


「たぶん今頃ランキング見てびっくりしてると思う」


 更にくすくすと笑っているメニー。



「じゃあ、明日は9時からメニーが挑戦するとして、その前に訓練しないか?」


「うん! また話したりもしたいし、7時でいい?」


「わかった。また明日な」





 それはゲーム内で、という約束のはずだったのだが・・・


「メニー!?」


「エニー!!」


 まさかの同じ大学だった。

 ちょうど講義を受けに来た俺と講義を終えて建物から一人出てきたメニーと遭遇した。


 学部が違ったみたいで今まで一度も会うことがなかったのに、ゲームで知り合って早々に出会でくわすなんてな。

 毎週この時間にすれ違っていたらしい。


「「ぷっ、あはははは!」」


 お互いにそのことに気付き、同時に噴き出した。


「いやーゲーム内の知り合いに会うのは初めてだけど、やっぱりほぼそのまんまの顔なんだねー」


「そうみたいだな。あの中のままのメニーだ」


 強いて言うなら、本物の方が可愛い。


「あ、さすがにリアルでゲームネームは恥ずかしいから・・・狭山さやま愛里メイリ。愛の里って書いてメイリです。()()()()()()。ふふっ」


「わり、出口いでぐち自由ヒロ。自由って書いてヒロだ。()()()()()()


「ははっ、キラキラネームだねー」


「メイリだって普通はそう読まないだろー? それに宇宙って書いてヒロシって読む元プロ野球選手もいるんだ。そんなキラキラでもないよ」


「(呼び捨て・・・!)ひ、ヒロって呼んでもいい?」


「あ、ごめん、いきなり呼び捨てしちゃったな。俺はヒロでいいよ」


「ううん、嬉しかったの。メイリでいいよ。よろしくね、ヒロ!」


「こちらこそよろしく、メイリ」



「あっ、わたしあっちの棟で講義だから行かなきゃ! ごめん、また向こうでね!」


「ああ、俺もこっちで講義だしな。あとでな」


 講義終わってまた会ってもよかったはずなんだけど、焦ってその考えが抜けてしまってた。


 メイリの方もあとで聞いたら同じことを思ったらしい。


 結局、スマホで連絡を取っただけで、次に会ったのはゲームの中だった。



「メイリってぼっちなのか?」


 軽く模擬戦をして、いつものようにトークルーム。

 二人っきりなので本名呼びだ。


 そこで大学で会った時一人だったメイリのことを聞いてみた。


「いきなりそこ!? ヒロだってぼっちだったじゃん!」


 メイリも俺をヒロと呼ぶ。


「いや、俺はともかくメイリってモテそうだからな。意外だったんだ」


「ヒロだから言うけど、「可愛い」って言われるの、嘘だと思ってたの」


「え? なんでまた?」


「だって、わたしの周りみんな彼氏いるんだよ?! しかも中学の時からずっとそう! わたし以外は告白されるのにわたしには来なくて。だから自分に自信持てなかったんだよ」


 これは高嶺の花とか思われてたパターンだろうな。


「ああ、友達はみんな彼氏と一緒だから一人だったんだな」


「そーゆーこと。ヒロはモテないの?」


 おおふ、心にクリティカルヒットした。


「どうせ童貞ですよー」


「どっ、どうて――っ!」


 やべっ、思わず言ってしまった。


「悪い。そういう話題苦手だよな?」


「(わ、わたしも経験ないからね・・・?)」


「えっ? なに?」


「な、な、な、なんでもない!」


 声が小さくて聞き取れなかったけど、その慌てっぷりからなんとなく予想はついた。

 これ以上言うのはやめとこう。


「それじゃ、最上級戦の話にしようか。ぶっちゃけ勝算は?」


「(ありがと)。んー、どうだろ。わかんないや。師匠に付いてからやっとここまで来たって感じだから、思いっきり楽しんでくるよ」


「うんうん、やっぱりゲームは楽しまないとな」


「だよねー! 師匠のおかげで更に楽しくなったんだもん。ここで楽しまなきゃ損損、ってね」


 テンション上げていく()()()に俺も楽しくなってくる。


「ふふっ、ほんとにメイリは楽しそうだな。なんか嬉しい」


「ふふふ、わかる、わかるよその気持ち。共有できる相手いないとつまらないもんね」


「やっぱりゲーム好きな友達っていなかったのか?」


「さすがに女の子はねー。特にわたしの周りは彼氏と楽しんじゃってるし、誘えないよね。師匠はそういうのとは違うし」


「スライム君に感謝だな。こうしてメイリに会えた。たぶん、あの時インしてたのがもう一人の弟子の方だったらこうなってたかどうか」


「うわっ、あぶな! 用事さっさと終わらせといてよかったぁ」


「ああ、土曜にしてはイン遅めだったもんな」


「うん、いつもならお昼にはいたはずだったもん」


 本当に偶然に感謝だ。



「さて、そろそろ9時だ。闘技場に行こうか」


「うんっ! しっかり見ててね!」


 俺達は闘技場の最上級専用ロビーへ入っていった。


 そこで、俺とメニーを引き合わせてくれたスライム君と再会するのだった。


お読みいただきありがとうございます。


唐突な芝草に気付いた方とは仲良くなれる気がします。

本名は苗字と名前がそれぞれ対応しています。現実にはほぼない読み方なのでこじつけではありますが。


次回かその次が最終回です。


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