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第10話

「惜しかったな」


「んー! でも楽しかった!」


 メニーは5戦目で惜しくも敗れた。


 メニーの戦術は相手の武器破壊狙いを逆に狙ったカウンター型だった。


 メニーが最初にやってくれたスキルの使い方は、攻撃を武器で受けさせたら武器に向かって連撃系スキルを放つというもので、俺には違和感があったんだけど、見せられてわかった。


 相手がやってくるって教えてくれてたんだな。


 メニーの武器、双剣分類の忍者刀は特に武器破壊を狙われやすいというのもメニーの狙いなんだろう。


 敢えてギリギリの体勢で躱し、武器で受けざるを得ない状況、と相手に誤認させてスキルを使わせてから仕留めていた。


 連撃系はスキルが終わるまで自分の意思で動けない。

 その状況に追い込めば一方的だった。


 ちなみに俺の持つ『王斬り』は速さや威力よりもその間無敵というのがチートたる所以だ。



 だけど、先週からの居残り組5連戦というのがメニーにはキツかったのか、最後は隙を作らせようとして失敗したようだった。



「メニーも強くなったね。僕の弟子もこれで卒業かな?」


 スライム君にも戦ったメニーの成長は伝わったらしく、嬉しそうだ。


「師匠を倒すまで弟子でいさせてください!」


「ふふ、それは楽しみだ」


「そういやもう一人の弟子はどうしたんだ?」


「ああ、エースはねぇ」


「彼は迷宮もやってるんですよ。もし会ったら教えてあげてください」


 このゲームの遊び方はどれかだけ、なんて決まってるわけじゃない。

 当然そういうプレイヤーもいる。


「ああ、顔知らないけどな」


「それは大丈夫だよ。師匠がこれでもかってくらいエニーの話してるから」


「エニー様の素晴らしさをみんなに伝えたまでです」


「開き直りやがった・・・」


「あはは、次、エニーやるんでしょ?」



「ああ。それより気になったんだが」


「ん?」


「スライム君って、俺とか弟子のメニーの手の内は見るんだよな?」


「これは痛いところを」


「いや、したたかなのはいいと思うぞ。でも、スライム君は「知らない方が楽しそう」って言ったよな?」


「そうですね、確かに。ではエニー様の戦闘は見ないことにします」


 肩を落としてそう言うスライム君がどこか面白い。


「ああ、そういう意味じゃなくて、なんで? って思っただけなんだ」


「そりゃあ、愛弟子やエニー様の戦いですよ!? 見たいに決まってるじゃないですか!!」


 なるほど、その気持ちはわかる。というか、俺は別に見ててもいいんだけど・・・。


「師匠が嬉しいこと言ってくれてる! それじゃあ、あとで模擬戦やって師匠が絶対入れるスキルを一つエニーに見せるっていうのはどうですか?」


「ああ、それならちょうどいいんじゃないか?」


「そ、そうすれば見ていても良いのであれば!」



 それだけ約束して、俺は最上級戦の参加申請をする。



 そこから離れたところで、他の最上級ランカーたちが俺やスライム君のことに気付いて近付けずにいたというのは後から知ることになった。



 ともかく、メニーの敵討ちからだ。

 メニーに勝った彼は次の相手も倒したようだ。



 ピー!《戦闘開始!》


 最上級最初の戦闘が始まると、俺は無造作に前進する。

 この人には不意打ちは効かない。それは見ていてわかった。


 向こうも俺がなにをしたいのか察して前進してくる。


 振れば当たる位置でお互いに止まり、俺は逆刃刀、相手は大剣を構える。


 俺の刀がネタ武器の逆刃刀だと知っていたらこれは悪手だとわかっただろうに。


 俺が唐竹割りから入ると、それを横に体を捻りながら回避して袈裟斬りしてくる。


 彼はもう術中だ。


 俺は振り下ろした刀をそのまま持ち上げるように振り上げた。


 この逆刃刀なら体勢の優劣は関係ない。


 大剣はボッキリと折れ、ストレージに強制移動した。


 闘技場では武器交換はできない。つまり相手は攻撃手段を失った。

 これがメニーの言っていた上は武器破壊も狙ってくる、ということだ。


 両手を上げて降参のポーズ。


 と言っても、降参なんてものはないので介錯してやる。


 まず一勝。



※※※


「師匠、これ以上はズルいですよ?」


 スキルを見せずに終わらせたエニーの意図を察したメニーが師匠であるスライムに声を掛ける。


「わかった。それじゃあ、エニー様によろしく言っておいてね」


「はーい」


 そう言ってスライムは一戦だけ観戦して出ていった。


※※※



 さぁ、次の相手だ。武器は槍か。


 今度は向こうから突っ込んでくる。


 もうネタ武器だってことはバレてるだろうから刀で受ける。


 ただし、相手はいつもこうなったら武器破壊狙いのスキルに繋げていたのだろう。一瞬迷いが見えた。


 すかさず『一閃』を発動する。右薙ぎの一振り。


 まともに食らって動きが止まった相手に峰による斬り返しの追撃。


 二戦目もあっさりと終わった。



 最短の手順を選んでいるのには理由がある。

 最初のやつにリベンジされたくないのだ。


 彼は間違いなく強い。彼がおそらく先週の挑戦者だろう。


 この逆刃刀を知られる前に対戦できたのは幸運だった。

 知られた今またやるとなると手の内をかなり曝け出すことになる。


 そうならない、彼がデスペナルティを受けている30分の間に終わらせたいというのが俺の狙いだ。



 俺の予想を肯定するように、それからの相手には彼ほどの脅威は感じなかった。



「やられたよ、エニーさん」


 9連勝を達成し、ロビーに戻ると、最初の彼から声を掛けられた。


「ふふっ、君とはもうやりたくなかったんでね」


「迷宮制覇者の『王斬りのエニー』にそう思って貰えたなら光栄だ」


 なにその二つ名! 俺は反乱軍かなんかか?

 確かに『王斬り』はあるけど、なんか印象悪くね?


 ていうか、広めたのスライム君じゃないだろうな?


「その王殺しみたいな呼び方はやめてくれ。どこで俺だってわかったんだ?」


「はは、すまん。このロビーにいるのはみんな古参プレイヤーなんだ。すぐわかったよ」


「わたしは違うけどね」


「あー、メニーはスライム君から聞いたんだもんな」


「そのスライムさんに弟子入りして急上昇してきたキミも有名だよ?」


 やっぱりメニーも目立っていたみたいだな。


「えへへ」


 その照れるメニーの姿に野郎共の嘆息が漏れる。可愛いもんな。



「ともかく、おめでとう! スライムさんとの対戦も楽しみにしているよ!」


「ありがとう。頑張る、というか、俺も楽しむよ」


 そう言って俺とメニーは闘技場を後にした。




 それからすぐにスライム君から誘われて訓練場でスキルを一つ見せて貰った。


 挑戦日も希望というか、都合を合わせてくれ、明日の夜9時に対戦することに決まった。



 そしていつものトークルーム。


「ね、師匠に勝てたらヒロの『お願い』なにか聞いてあげるよ」


「負けたら?」


「ないと思うけど、その時はわたしの『お願い』聞いてもらおっかな」


 それは賭けと言うのか?

 というか、俺が勝つと信じてくれてるのがもう嬉しい。


「わかった」


「ねぇ、何を『お願い』する?」


「今言うのか? そうだな、前に言ってたやつやってもらおうかな」


「なんだっけ? ・・・! あ、アレかぁ!」


「ダメか?」


「いいんだけど、いざやるとなると恥ずかしくて」


「勝ったら、だろ?」


「あ、そうだったね、アハハ」


「メイリは何を『お願い』するつもりなんだ?」


「もちろんヒミツだよー」


「あ、ずりー!」


「どうせ勝っちゃうんでしょ?」


「そしたら余計に気になるじゃんか」


「ふふっ、じゃあ、アレしたあと教えてあげる。もちろん叶えてくれなくていいよ? ヒロが勝つんだし」


 これはその時まで言わないやつだな。


「仕方ないな。それで我慢してやるよ」


「ん? 我慢させるのは申し訳ないからもう一つ『お願い』聞いてあげるよ。今できるやつでね。あ、わたしの『お願い』教えてっていうのはナシだよ?」



「じゃあメイリ、俺と付き合ってくれ」



「えっ?」


「俺はメイリが好きだ。俺の彼女になってくれ」


「ありがとう・・・! わたしもヒロが好き」


 よかった。『お願い』するのはズルいと思ったけどちゃんと伝えられた。


「よろしく、メイリ」


「うんっ! でも、『お願い』それでいいの?」


「ああ、今一番の『お願い』だよ」


「嬉しいっ! ヒロだいすきだよっ!」


 あまりの可愛さに蕩け死ぬかと思った。




「もうちょっと話してたいけど、明日は朝から講義なんだよな・・・」


「あっ、わたしもだ! じゃあ、明日は大学でね! 連絡するから!」


 既に日付けも変わっていた。

 それくらいメイリとずっと話していた。


「わかった。おやすみメイリ」


「おやすみヒロ」


お読みいただきありがとうございます。


もうジャンル「ラブコメ」でいいんじゃないかな。

出会ってわずか3日間の出来事である。


次回最終回・・・まとまれば!(終わるとは言っていない)


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