最終話
「いよいよだねー!」
「ああ、ワクワクしてきた」
「ふふ、僕もです」
「スライム君!? いつの間に!」
「ちょうど今来たところです。今日はよろしくお願いしますね」
「ああ、こちらこそ」
最上級専用ロビーでスライム君と握手を交わす。
「えっと、何か操作必要なのか?」
「いえ、ここにいれば時間になると自動でリングに飛びます」
あとは待つだけか。
当然といえば当然なんだけど、今は誰も戦っていない。
誰もが俺たちの、いや、俺の挑戦を見るつもりらしい。
闘技場にやってきたときも懐かしい顔触れに会った。迷宮攻略組だ。
俺がフィールドマスターに挑戦するという通知を見て沢山の人が集まっていた。
まぁ、ここに入らないと見れないからな。
――と、思っていたら、
《プレイヤーの皆様にお知らせです。闘技場の収容可能人数を超えましたので、特例として本日のフィールドマスター挑戦に限り、どのエリアでもメニューウィンドウからご観戦頂けるように致します。負荷軽減の為、なるべく一つの場所に集まらないようご協力お願い致します》
こんな通知が来た。そんなに集まったのか・・・
「さすがだねーこの運営」
「流石なのはそれだけの人を集めてしまうエニー様です。運営もそれを理解しているのでしょう」
「はぁ、もうそれでいいよ」
さぁ、そろそろ時間だ。
俺とスライム君がリングに転送される。
ピー!《戦闘開始!》
まずは先制攻撃!
『居合い抜き』からの斬り返し。
しかし、スライム君は避ける気配がない。そして微かに指が動いた。
――まさか!
咄嗟に『王斬り』を発動させる。
俺の行動はキャンセルされ、唐竹割りに移行する。
スライム君も俺がスキルを使うとは予想していたみたいだけど、『王斬り』は意外だったようだ。
その全ての攻撃が命中する。
しかし、その攻撃は最後の下段横薙ぎ分しかダメージは与えられなかった。
「まさかの反射持ちか」
その声は闘技場では向こうには聞こえないが、口の動きで伝わったらしく、ニヤリと笑っている。
そう、スライム君は『反射』スキルを発動していた。
あのまま峰で斬っていれば俺は即死、他のスキルでも俺に反射ダメージが来ていた。
『王斬り』だったことでその無敵時間でダメージを回避し、向こうの『反射』が切れる最後の一撃だけが通ったというわけだ。
『反射』の修正は"味方の"攻撃のみ。
敵の攻撃に対しては必中のままだ。
ギリギリその可能性に気付けてよかった。
そして、クールタイムがあるからしばらくは使えない。確か『反射』は5分だったはず。
それまでにカタをつける。
とはいえさっき『王斬り』が当たったのはスライム君が攻撃を受けるつもりだったからだ。
初めて遭遇した模擬戦で嫌というほどわかっている。
スキルはスライム君には当たらない。
スライム君の武器はシンプルな諸刃の片手剣。
ただ、普通と違うのは、そのスタイルなら持っているはずの盾を持っていないということ。
そこから予想できるスライム君の戦法は『持ち替え』だ。
模擬戦でやったときはそれを見ることもできなかった。
よし、まずはここのやり方、様子見、だな。
俺は全力にならないよう加減して刀を振る。
それを躱し、刀から遠い位置を狙って斬り込むスライム君。
やはり武器破壊を警戒しているな。
というか、スキルなしの素の動きが滑らかすぎる。
もしかして、現実のスライム君は本当に剣を持って振っているんじゃないか、って思えるくらいだ。
しかも、うまく剣を持っていない手を隠している。
『反射』が右人差し指だったのは見えたけど、それが全く役に立たない。
というか、スキルを使いそうで使ってこない。
昨日スキルを見せてもらっても何の意味もないな。
まさか、素の操作を極めたタイプだったとは。
本当、強かでやりにくい。けど、むしろ楽しい。
俺が笑うと、スライム君も笑っていた。
とはいえそろそろ『反射』のクールタイムが終わってしまう。
こちらの必殺の瞬間まで温存されると不利だ。
『王斬り』のクールタイムは30分だしな。もう回避に使えない。
意を決して飛び込む。
左薙ぎからの『一閃』による斬り返し。
俺自身の硬直をスキルで無視する。
やはり刃は警戒されていないらしく、剣でいなされる。
それが狙いだ。
両手持ちの『一閃』から右手を離し、左で刃を向けて更に斬り返す。
VRグリップを気にする余裕はない。
足元にボトッと一つ落ちる。
スライム君はそれもいなす構えだ。
その瞬間、俺は更に右に持ち替える。
また一つVRグリップが落ちる。
武器がどちらを向いていようと、持ち替えるとその手の向きの正位置に武器は持たされる。
持ち替えたことで峰が向いた逆刃刀がいなそうとした剣ごとスライム君を斬り裂いた。
《新たなフィールドマスターが誕生しました!》
その通知がゲーム内に響き渡った。
「やられました! あんな裏技があったなんて」
「おめでとー! わたしがやられたのもアレだったんだねー」
「ありがとう。スライム君が片刃の剣だったらバレてたかもな」
「いや、普通試しませんよそんなこと」
「そうそう。エニーの刀が特殊だから気付けただけだと思うよ」
「そうか。そうだよな。まぁ、二度と通用しない戦法だ。挑戦を受けても勝てないだろうな。というわけで、勝ち逃げさせてもらう」
「たまにはインしてくださいよ?」
「ああ、スライム君にまた変なこと広められても面倒だしな」
「「はははっ」」
「僕は真実を伝えているだけなんですがね」
肩を竦めるスライム君に手を挙げて別れの挨拶をして闘技場を出ると、沢山の人が待ち構えていた。
「おいおい、負荷軽減に協力しろよ」
そう言って笑うと、みんな一斉に俺の勝利を称えてくれた。
しばらくそれに応えていたけど、まるで終わる気配がなくてメニーとトークルームに逃げ込んだ。
「おめでとうヒロ! 絶対勝つと思ってたよ」
「ありがとうメイリ。ギリギリだったけどな」
もしあれを躱されてたら負けてた。武器破壊できても本人が無事だったら『反射』でトドメが刺せなくなるところだった。
「ううん、一発勝負なんだからヒロの勝ちだよ」
「そうだな。ありがとう」
「い、いいって! それより『お願い』いつにする?さすがに学校では嫌だよ?」
「そうだな・・・うちに来るか?」
「ふぇっ?」
「あ、やっぱなし。普通にデートしようか」
さすがに急すぎたな。付き合ったこととかないからどれくらいで誘っていいのかわかんないけど。
「う、うん。でも、アレするならヒロの家がいいかな。学校じゃなくても外は恥ずかしいし・・・」
「わかった。明日大学終わったら、デートしながらうちに行こう」
「うん! 終わったら連絡する!」
「じゃ、じゃあ、いくよ?」
「お、おう」
いざとなるとこっちも緊張するな。
俺の部屋で背中を向けてメイリのアレを待つ。
「えいっ」
後ろからぎゅっと抱きつくメイリ。
「ど、どう?」
「たしかに少しだけ感触あるな」
「もー!」
「ごめんごめん、でも幸せだよ」
「――! ちょっと、こっち見ないでね」
「いいけどなんで?」
「いいから!」
「そのままでいてくれるなら」
「わ、わかった」
メイリが落ち着くまで背中の感触を楽しんだ。
「で、メイリの『お願い』はなんだったんだ?」
「あっ、そういえばそれも約束してたっけ。実はもう叶ったんだー」
嬉しそうだな。
「もしかしてメイリも告白するつもりだったとか?」
「ばばば、バカっ! なんでわかるの?!」
いや、なんとなくだけど、わかるだろう。
「メイリのことだからな」
ちゅっ
「えっ?」
「ヒロばっかりドキドキさせてくるからしかえしっ」
思わず口を押さえた。可愛すぎか!
「ていうか、俺は最近メイリにドキドキしっぱなしだぞ?」
「ええっ?」
「ほら、可愛い」
「もー!」
胸を殴ってくるメイリを抱きしめる。
「よろしくメイリ」
「うん、わたしもよろしくヒロ」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
これにて完結となります。
もっと短い予定でしたがイチャイチャし出したせいで倍以上長くなりました。
やっぱりラブコメだったんじゃ・・・。あとでタグに追加しときます。
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