TS物のお約束ではあるのに、魔女がお約束をぶっ壊してきました。
「ふぅ……うちの妹が悪かったな。突然首狩りしようとして」
「いやなに、元気なのは良いことじゃ。しかし、あれは化けそうじゃのう」
「まあな。さ、後片付けして寝るかな」
「……柚希少女よ」
「おーし、まずは鉄板を洗って、新聞紙は捨てて……」
「柚希少女」
「あ、軽く魔石コンロのメンテでもしないとだな!」
「柚希少女よ」
「やっべ、そう言えば他にも――」
「おぬし、風呂から逃げておるな?」
「ぎくっ」
何かに気付いたイルが、柚希に話しかけても何やら誤魔化して来たので、ズバッと指摘した瞬間、柚希はマンガやアニメのキャラのように、びくりと肩を震わせ図星を突かれたような反応をした。
「はぁ……おぬし、昨日は幼女化したばかりでさすがに恥ずかしいと言う理由で風呂に入らんかったが、さすがに今日は入った方が良いぞ」
「け、けどさ、さすがにこの体で風呂に入るのはこう……罪悪感が……」
「罪悪感もなにも、おぬしの体じゃろう」
「そうは言うが、昨日まで普通の成人男性だったんだぞ? いくら俺の体って言っても……しかも、外見年齢、10歳くらいじゃん……」
柚希的に、かなりの美幼女の裸を見ることに対して、かなりの罪悪感があった。
しかも、まだこの体になってから二日目である。
全くこの体になれていない時に、裸を見ることになる風呂に入るのは、柚希的に避けたかった。
「なんじゃ。おぬし、子供の体に欲情するのか?」
「しねぇよ!? したらただの変態じゃねぇか!」
「じゃが、この世界にはロリコンなる人種がおるのじゃろう?」
「あれは人種ってかある意味人の道を踏み外した変態だよ」
「そうなのか? まあ、どうでもよい。と言うかおぬし、昨日も風呂に入っとらんし、今日とか外を歩き回ったし、ダンジョンでは戦闘もした。その上、《魔装》の制御ミスで壁に激突し、汚れてもいる。汚いし、正直臭うぞ」
「ぬぐっ……」
鼻を軽くつままれながら臭うと言われたことで、柚希の胸に言葉の刃が突き刺さった。
臭いと言われるのが、普通に心に来たらしい。
「ま、その姿にしてしまった儂も悪い」
「だ、だろ? だから……」
「なので、儂が一緒に入ってやろうではないか!」
「なぜそうなった!?」
てっきり、許されるのかと思ったら、まさかの一緒に入る宣言に、柚希も声を上げる。
「む、なんじゃ。子供の裸を見るのが嫌なんじゃろ? ならば、ナイスバディな儂の裸なら問題あるまい」
「問題しかないっ! どう見ても、そっちの方が悪いわ!? ってか、お前全体的にデカいんだよぉ!」
「んまあ、背もあるしな」
「背だけじゃなくて、胸も尻もでかいじゃん! 余計俺ドッキドキになっちゃうよ!? だってお前、メッチャ美人じゃん! スタイルいいじゃん! 男だったら、間違いなくヤバかったよ!?」
「今は女ではないか」
「そうだけども!」
「というか……ほほう、儂は好みなのか」
「ハッ!?」
「ならば、殊更共に入らねば!」
柚希の発言でニヤッとした笑みを浮かべた直後、イルはそれはもう嬉しそうな顔で、柚希を小脇に抱えた。
「ちょっ、離せぇ~~~!」
「ふふふ、ジタバタもがこうとも、無駄じゃぁ! 儂は魔法のエキスパート。故に、身体強化魔法も最高峰! おぬしの力如き、儂の前では塵芥でしかないのじゃ!」
「ちくしょーめっ……!」
ジタバタと暴れるも、柚希は鼻歌交じりにイルに浴室に連れ込まれた。
◇
「くっ、うぅ~~~~っ……!」
「~~~♪ ~~~♪ ほれ、お湯をかけるぞ」
浴室内。
柚希が暮らす家にある風呂場は、二人で入っても十分な広さだった。
具体的には、身長170センチほどの長身でボンキュッボンなスタイルのイルと、十歳程度の幼女である柚希が入ってもゆとりがあるほど。
浴槽については、二人で入ろうとすると少し手狭かも知れないが。
そんな浴室の中では、柚希が椅子に座らされ、イルに洗われていた。
あまりにも恥ずかしい状況に、柚希はぐっと目を瞑っており、見えちゃいけない部分を隠すように、両手を椅子のへり部分に置いている。
顔はかなり赤くなっており、昨日今日で見せていたそれなりにイケメンな言動をしていた人物とは思えない顔である。
「ほほぅ、随分と恥ずかしがっているのう?」
「そりゃそうだろ!? 恥ずかしいんだよ!」
「何を小僧のようなことを。おぬし、一応大人なんじゃろ? この程度、そう恥ずかしがる必要もあるまい?」
「し、仕方ねぇだろ!? だって俺、学生時代は青春とは無縁だったし、基本ダンジョンに潜ってたしで、あんまし免疫がないんだよ!」
「ふぅむ、そうなのか。ま、おぬしの記憶を覗いたから知っとるがな」
「マジで俺のプライバシー、なさすぎん……?」
「ま、気にせんでもよい。よし、髪も洗い終わったし、次は体を洗うぞ~」
「ちょっ、それはさすがに……?!」
髪の毛が終わると、今度は体だとイルが言って、柚希は慌てる。
だが、イルは止まらなかった。
「残念! 儂は止まらぬぅ!」
「止まれよ!?」
「ほーれ、ここか? ここが良いのか?」
「あっ、ちょっ……んぁっ!?」
変な所を触られ、柚希の口から甘い声が漏れた。
「おっ、いい声じゃな! じゃあ、こっちは……」
「ふひゃ!?」
「んむぅ、おぬし、結構敏感?」
「んなわけひゃぅぅ!?」
否定お言葉を言おうとする前に、再び変な所を触られ、最後まで言えなかった。
「ふふふ! 体は正直じゃなぁ!」
「お前どっからそういうセリフを仕入れて来たんだよ!?」
「おぬしの記憶」
「俺が原因だったぁっ……って、ふぁ!?」
「ふふふふ! どれ、この儂が全力で綺麗にしてやろうではないか! それはもう、ぴっかぴかの、つるっつるになぁ!」
「お前マジでゆるさ――あっ、ちょ! 魔法だよなそれ!? なんだその触手みたいな水!?」
イルがそれはもうテンション高く言うと、イルの周囲にうねうねと動く水で出来た触手のようなものが出現。
「ふふふふふ……!」
「と、止まれ! いやほんと止まってくださいお願いします! ってか、本当にそれ怖いんだけどぉ!? 止まって! マジで! あ、まっ、やっ……ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!?」
その日、マンションのとある一室から、可愛らしい少女の悲鳴(?)が聞こえたとかいないとか。
◇
「うっ、ぐすっ……魔女に、汚されたぁっ……ぐすん……」
「まあまあ、全身の隅々まで綺麗になったんじゃからええじゃろ」
「よくないよ!? あ、あんなことまでしやがってっ……くっ、思い出しただけで、顔から火が出そうだ……」
「ぬふふふ、儂としては可愛いおぬしの姿が見れてよかったぞ」
「俺はよくねぇ!?」
イルによる魔法洗浄を受けた後、二人は一緒に浴槽に浸かっていた。
とはいえ、浴槽はそこまで広くなかったので、先にイルが湯船に浸かって、その上に柚希が座っているような形だ。
この時、柚希の後頭部というか、頭から背中の上辺りにかけて、イルのそれはもう大きく大変柔らかな胸が当たっているため、柚希は極力心を無にしている。
気にしたら負けだと思っているのだ。
「それが嫌ならば、さっさと自分で入るように」
「ぬぐっ……だ、だけど……」
「ちなみに、おぬしが一人で入ろうとする意志を見せなければ、儂はおぬしの体の隅々を洗いし尽すだけじゃぁ!」
「くっ……わ、わかったよっ! あれは正直勘弁! ったく……そもそも、二人で風呂に入ってるってだけでも、結構ヤバいのに……」
あれをもう一度されるくらいなら、自分で入った方がマシだと思った柚希は、仕方なく頷くことにした。
「ふふふ、まあ、良いではないか。儂は丁度いいサイズ感のおぬしを抱きしめられて癒されるぞ?」
「へーへー、それはようござんした」
「まあ儂、基本的にデカいから、ちんまいおぬしのような者が好きってだけじゃがな」
「……今のセリフで、俺は速攻風呂から上がりたくなったんだけど、どう思う?」
「逃がさん」
「デスヨネー」
「あれじゃろ? この国には古くから伝わる、裸の付き合いという言葉があるのじゃろ? それじゃそれ」
「付き合いってか、俺さっき、突かれかけたんだけど……」
「気のせいじゃ。まあ、儂が強制的に魔法を解除したから問題なかったじゃろ?」
「大問題だったよ!? 幼女化して二日目で色々と危なかったが!? 貞操の危機だったよ!? ってかあの魔法、絶対自我持ってるだろ!」
先ほど使用していたイルの水の触手のような魔法は、まるで自我を持っているような動きをしていた時があり、危うくとんでもないことになりかけたと言う一幕があった。
尚、色々とアウトになる前に、イルが魔法を解除したので事なきを得た。
「あれ、可愛い幼女を見ると、たまにああなるんじゃよ」
「なんでそんな魔法を使ったぁ!?」
「実際に綺麗になればいいかなって。あとはまあ、あわよくば美味しい光景が見たかった」
「確信犯じゃねぇか!」
イルは確信犯だった。
「よければあの魔法、教えるぞ?」
「いらねぇよ! どこで使うんだあんなもん!」
「それはまあ……姫少女とか蜜柑少女相手とか……」
「俺が変態になるわ! ……いや、蜜柑の場合はむしろ『じゃあ、兄さん責任とってね』とか言ってきて、俺の人生が蜜柑√になりそうだな……そうなったら、色々ヤバそう……」
蜜柑√に入った人生を想像して、柚希の頬が引き攣った。
絶対ヤバい、それだけがなんとなくわかった。
「仲が良いなら別にええじゃろ」
「よくないよ? 相手妹だよ?? 世間体がヤバいよ???」
「めんどくさい世界じゃのう」
「お前も暮らしてる世界なんだよ」
「知らん。儂はあのダンジョンから出たことはなかったからな」
「……お前、ほんとどうやって生活してたんだよ」
「適当じゃよ。儂は色々と超越しとるからのう」
「へいへい、言う気はないんですねー。……んっ、ふあぁぁ~~~~~……あー、眠くなってきたな」
「では、もう少し浸かったら出るとしようか」
「そうだな。ん~~~~っ! はぁ……なんか、今更ながらに先が思いやられる気がするぜ……」
「大変そうじゃな」
「お前のせいなんだよなぁ……」
ここからもう少し湯船に浸かったところで二人は上がり、髪を乾かしてから就寝となった。




