4話 社交界の招かれざる客
突然の問いかけの意図を考えてすぐ返答できないでいると今度はお義母様が
「はいかいいえも答えられないのかしら」
と言われさらに萎縮する。
「・・・私には分かりません」
という返事をするとお義母は呆れたため息をつき
妹は「ふぅん」と含み笑いをしどんな返答が正解だったんだろう?素直に信じてると言ってみた方がよかったのだろうかという考えが頭を過ぎると妹はこう続けた。
昨日社交界で聞いた噂なのだけど、どうやら魔法使いはこのご時世本当にいるそうなのよ。
あ、お母様信じてないわね?」
クスクス笑う彼女に話を聞いて!と妹は続けた。
「奴らは普通の人間の姿をして何処からか現れて私達に関わってこようとする変わった連中で気分屋なのよ。少しでも気に入らない奴には恐ろしい魔法を掛けては立ち去る見た目は人間、中身は悪魔みたいな奴らなの」
興奮ぎみに彼女はそう言い切るが、ゴシップ好きな妹に気があるのか、からかいたいのか話を作り聞かせたような噂話だと感じた。
するとそれには両親ともハハ・・・、フフ・・・と笑いお義母様に関しては全くしょうもない事をこの子は聞かせられてといいたげな微笑を浮かべた。
妹はその反応が面白くなかったのか
「なによ!信じてないわね?私、他の人が見たって噂を聞いたわ。その人は持っていたグラスを魔法使いが割ってしまったって話していたわ。その方のお洋服にもワインのシミがズボンに出来ていたのを私ちゃんと見たのよ」
これにはお義母様が反応した。
「ミア、それはワインを自分で溢された方が格好がつくようにでっちあげただけよ」
「ー!それだけじゃないわ。他の夫人も話をしていたの。魔法使いは花嫁を探しているらしいって。
その夫人が奴をなじって一括すると身体に痺れが起きたっていうじゃない。その方の腕には確かにあったのよ。火傷の痕が!」
これでも信じないの?と妹は私でなくお義母様に問いかけた。
「分かった、信じるわ。でもそんなに危険な場所に貴方を行かせる訳にはいかないわ。
しばらくは社交界に出かけるのは控えたほうがいいんじゃない?」
それもそうだ。
お義母様は妹が良い伯爵に気に入られるようこうして快く社交界に通わせるのだ。
しかし、そのせいで妹が危険に合うともなれば社交界の外出を控えるように言い聞かすのは普通だ。
まあ、魔法使いが本当にいるのだとして怒りを買うミアのまわりも、外出を禁止されるミアにもどうしたものかと思うのだが。
しかし、ミアは
「それなら大丈夫よ。実はセオ伯爵様から私、結婚を前提にお付き合いを申し込まれたの」
とこたえた。
「まあ!そうなの?よかったじゃない」
ええ。と妹は母と楽しそうにセオ伯爵について語る。
セオ・ダニエル・オズボーン様はオズボーン家の爵氏でうちの領地とは地図上で隣上の位置に当たる場所にある。
賑わうオズボーン家の領地には程遠いが南に位置する領地を治めるエヴァンズ家よりも新しい場所にあたるが交易も栄えており街も栄えている。
新しい物好きなミアの好奇心はそこにも惹かれたのだろう。
「セオ様は金髪が似合う品のいいお顔立ちで物腰も柔らかいの。お父様とお母様もきっと気にいるわ」
今からでも彼に会わせたいとゆう眼差しで彼らと話すミアに私は羨ましさを隠しきれなかった。
(お母様が生きていたら、私もそんな事ができていたかもしれない)
そんな羨望を持った目で2人を見ていたからか
次にミアが口にした事はあまりにも信じられない事だった。
「それにしても魔法使いが人間の花嫁を探すなんて、
魔法使いは男性しかいないのかしら」
ねぇ?お姉様と含み笑いをし恐ろしい事を言い出した。
「ねえ、お母様魔法使いの花嫁はお姉様がピッタリだと思わない?」
「!」
急な提案に私の顔はこわばった。
「いいわね。うちにも魔法使いが尋ねてこないかしら」
妹の提案に彼女は面白い事を言うわねと2人していつも以上に笑い合う。
お父様に関してはぎこちない顔をしているものの
また彼女らの機嫌を損いたくないのか無言のままだ。
慣れてるとはいえやっぱり父のその姿を見るのは辛かった。
一礼して自室に戻る。
その場を立ち去っても、その話は彼女らは続けているようだった。
気にする事はない。
素直で噂好きな妹の気を引きたい伯爵様が彼女の気を引きたくてついた芝居だ。
「魔法使いか・・・」
テーブルの上に数冊詰んだ本の中には魔法使いが出て来る童話がある。
亡くなったお母様の本の一冊だ。
手に取りページを開いてみる。
そこに出てくるのは主人公を助けてくれる優しい魔法使いだ。
『少しでも気に入らない奴には恐ろしい魔法を掛けるの』
とミアは言っていた。
(信じたくない)
もし魔法使いがいるならば彼らは優しくあるべきだ。
妹の聞いた噂は彼女の周りにいた者の作り話、
そして魔法使いなんてこのご時世いる訳ない。
もし、そんな事がありえるならお母様と私はこんな事にはなっていない。
(だから、ただの作り話よ!)
今日は週末。
普段ならこの日のスケジュールに勉強は入れない。
かといって本を読む気にはなれない。
ベッドに腰を掛けて考える。
魔法使いが何者かとゆう事を。
結局は妹の話に当てられたのだ。
もしも本当に魔法使いがいたのならー。
「私を救ってほしい・・・」
静かな部屋に本音が響く。




