第61話 れいにゃ式テイム方法
「次はノーフェイトの戦闘を見せてよぉ。強くなったんでしょう?」
れいにゃがそんなことを言ってきた。
「いいだろう」
俺は素直に頷いた。
「その挑発、乗ってやる」
どうせなら、ここで少しくらい見せつけてやってもいい。
複数モンスターを同時に出す方法だの、高確率で仲間にする方法だの、向こうも色々と隠し札を持っているらしいが、こっちだって明日のイベント用に鍛えてきた技がある。
アンカーチャージくらいなら見せても構わない。
というか、れいにゃがあれだけ時間をかけて倒していた相手を、こっちは一撃で終わらせられる。そうなった時にどんな顔をするのか、少し楽しみでもあった。
そんなことを考えているうちに、花畑の奥で次のモンスターが現れた。
今度はさっきのカマキリじゃない。
中型で、草色の毛並みをした狐のようなモンスターだった。
「バル!」
俺はすぐさま指示を飛ばす。
「アンカーチャージ!」
バルが一瞬で反応する。
アンカーを置き、逆方向へ走り、引き戻しの勢いを乗せて一直線。
次の瞬間には、草色の狐のモンスターは粉砕されていた。
綺麗なくらい、一撃だった。
「よし」
俺はそのまま、れいにゃへドヤ顔を返してやった。
どうだ、これが今の俺たちの火力だ。
……そういえば、攻撃の最中にれいにゃが何か言っていた気がする。
気になって横を見ると、れいにゃの顔はなぜか真っ赤になっていた。
「……ん?」
あまりにも早く戦闘が終わったから、自分のさっきの戦いが長くて恥ずかしくなったのだろうか。
まあ、その辺はよくわからない。
だが、ここまで来たら俺も雰囲気でわかっている。
俺がここへ連れてこられた理由は、れいにゃが花畑に出現すると言われた可愛いモンスターを探していたからだ。
そして、先ほど俺が一撃で倒したあの狐っぽいモンスター。
出てきたモンスターを一撃で倒して見せつけることだけに意識が向いていたが、よくよく考えてみれば、あれはれいにゃの基準だと十分かわいい側に入る見た目だった気がする。
「……ああ」
そこから導き出される答えは、まあ、そういうことなのだろう。
つまり、たぶん、やらかした。
その後、あの狐みたいなモンスターはなかなか出てこなかった。
花畑の周囲を歩き回り、少し奥へ入り、別のモンスターが出てきては倒し、また探す。
そんなことを繰り返して、一時間ほど彷徨った頃だろうか。
ようやく二体目が現れた。
それまでの間の戦闘は、もちろん全部俺だ。
れいにゃは「今度こそぉ」とか何とか言いながら周囲を見ているばかりで、出てきた別のモンスターは全部こっち任せだった。
「……疲れた」
思わず本音が漏れる。
だが、ようやく本命らしき相手が出てきた以上、ここからはれいにゃの出番だ。
れいにゃはさっきと同じように、大きなもっさもさのモンスターと、小さな人形みたいなモンスターを出した。
やはり戦い方も似ている。
前に立つのは大きい方。
後ろで何かをするのは小さい方。
カマキリと戦った時のように、大きなモンスターで守りつつ、人形のモンスターでデバフを入れているのだろう。
だが、今回は少し様子が違った。
最初のうちは、俺の予想通りだった。
草色の狐の攻撃を、大きいモンスターが受け止める。
その後ろで、人形のモンスターが演奏を続ける。
おそらく、また相手の攻撃力を落としているのだろう。
だが、狐の攻撃が十分弱まって、大きいモンスターがもうほとんどダメージを受けなくなったあとも、人形のモンスターは演奏をやめなかった。
「……ん?」
俺はそこで少し首を傾げた。
何をしているんだ。
十分弱ったなら、さっさと倒せばいいんじゃないのか。
だが、れいにゃはそうしない。
大きいモンスターは、あの草色の狐を今度は抱きしめるような形になった。
そのまま、人形のモンスターの演奏を聞かせ続けている。
「……」
見た目だけなら、モンスターに対して催眠をかけ続けているような感じだった。
しかも、大きいモンスターが抱きしめているせいで、逃げることも暴れることも満足にできない。
「絵面最悪では?」
思わずそう呟いた。
かわいいモンスターを仲間にしたいという話だったはずなのに、やっていることがだいぶ怖い。
そして、さらにひどかった。
れいにゃは、そこで餌を取り出したのだ。
動きが鈍くなり、抵抗も弱くなった辺りで、その草色の狐へ餌を食べさせ始めたのである。
しかも、ただ食べさせるだけじゃない。
一緒になでる。
愛でる。
優しく声をかける。
抱きしめたまま、演奏を聞かせ、餌を与え、なでている。
「……はっきり言おう」
俺は真顔で言った。
「事案だろ、これ」
完全に怪しい人のそれだった。
かわいいから仲間にしたい、という話自体はまあわかる。
だが、その過程が予想以上にやばい。
そうこうしているうちに、草色の狐の抵抗は完全になくなった。
そして、しばらくすると、そのモンスターはすっと光になって、れいにゃの中へ吸い込まれるように消えた。
「……え?」
思わず間の抜けた声が出た。
今のが、仲間になったってことか?
「……これは」
俺はしばらく絶句してから、ようやく口を開いた。
「仲間にする方法として、特殊すぎるのでは?」
れいにゃは、ふふんとでも言いたげな顔をしていた。
そして、最後に胸を張って言い切る。
「これが愛よ!」
「……」
俺はその言葉を聞きながら、心の底から思った。
こいつこそ、クラリスのところに連れて行った方がいいんじゃないか?




