九層目
階段を降りてきて下層に辿り着いた。
上の八層目よりも木が密集していて森の奥深くみたいだ、細い一本道が伸びて続いている。
「う~む、視界が悪いのぅ、死角から襲われなきゃいいがの」
顎髭を撫でながらフーワが周囲を見渡す。
木々で遮られているのかあまり明るくもない、奇襲されても不思議じゃないね。
「どースンの?進むノ?」
「いや、少しだけ確認したら戻る。疲れたし、ポーションも底をついたからの」
猫型リュックに積めてきたポーションは解毒とかを除いて全部空になっていた。
あれだけの数を相手にしたからね。
「じゃあちょっとだけ見て帰ろう」
辺りを警戒しながら先へ進む。
そういやこの階層って……
「ここっテ何が出ルの?」
「確かシルバーウルフじゃな、ほれ、丁度あそこに……」
言ってフーワの顔が強張る、指差した先には銀色の狼が三匹。
こちらに気がついたのか唸り始める。
「げぇ!!シルバーウルフ!!」
足を止め後ずさるフーワ。
「強いノ?」
「ま、不味いぞ、あいつらは獰猛で脚も早く、何より仲間を呼ぶ。集団で来られたらかなり危険じゃ!!」
「どうスる?」
「逃げる!!」
踵を返して走り出す、ボク達もそれに続く。
「くっそー、ちょっと見たら帰るつもりが出くわすとは!!」
「あ、追いカケて来タ」
後ろを見ると凄い速さで走って来るシルバーウルフ達、グングン距離を詰めてくる。
「いかん、このままだと追い付かれる!!ペタン、魔法で迎撃じゃ!!」
「分かった!!」
ボクは走りながら後ろに振り返りファイヤーを打ち出す。
だけどシルバーウルフは横に回避すると速度も下げずに追いかけてくる。
「あ、当たんないよ!!」
「当たると思うな、当たったらラッキーじゃ!!」
こうなりゃ自棄だ、片っ端から魔法を放っていく。
とはいえ当たる気配もなく、尽く避けられる、とんでもなく素早いなあ。
そんな事を繰り返していると、降りてきた階段が見えてきた。
「も、もう少しじゃ頑張れぇぇぇ!!」
フーワが最後の力と言わんばかりに全力で走っていく。
ボク達も何とか後に続いて、階段をかけ上がって行った。
「……はぁー、はぁー……も、もう無理じゃ、動けん……」
「ボ、ボクも……」
「グェー」
全員地面に突っ伏す、何とか逃げきれたみたいだ、昇って追いかけて来る気配もない。
「はぁ~……この先どうするの?あれってどうにかなるのかな?」
起き上がって水筒を取り出して水を飲む。
「正直今のままじゃ厳しいのぅ、ポヨポヨと違って一体でもかなり強いんじゃ。仲間を呼ばれたら勝てんのぉ」
「戦力不足~キツきつ~」
う~ん困ったね、今のままだと進めないか~
「が、手はある」
腕を組んでフーワは階段の方へと視線を向ける。
「あいつらより強くなればいいんじゃ!」
「えぇ……」
フーワが突拍子もない事を言い出す。
確かにそうなんだけどさ、どうやって?
「具体的ニは?」
「まずは装備の新調、もっと良いものを揃える。そして範囲魔法の習得じゃ。如何せん個別撃破では火力が全く足りておらん」
うん、ポヨポヨ相手でもあの数には対処しきれてない所があったし、新しく魔法を覚えた方が良さそうだ。
「っちゅ~訳で、街に戻って準備の開始じゃ。何かと金もかかるしの、暫くは依頼こなしたりせんといかんのぅ」
「戻ろ戻ロ~」
「はーい」
ボク達は階段横にある帰還用の魔方陣に乗り街に帰ると、一旦解散した。
さて、それじゃあ彼処に行こうかな。
場所は魔導協会、魔法を扱っていて、教えてくれたりもする。
何処の街でも大抵はあるって母さんが言ってた。
街の案内板によると冒険者組合の近くって書いてあったけど……
あ、あったあった。
然程離れてない場所に四階建ての建物、入口には協会の紋章が描かれている。
ローブを着た人達が頻繁に出入りしているのが見える。
ボクも中に入ると、四方には大きな本棚が所狭しと並んでいて、色んな本がビッシリと収納されていた。
中央には受付、その横には大きな階段。
受付に向かうと、お姉さんが居たので話しかける。
「すいません、ここの魔導書を閲覧したいんですけど」
「いらっしゃいませ、冒険者の方でしょうか?でしたら冒険者証を拝見させて頂きますが宜しいでしょうか」
言われて冒険者証を出すと提示する。
「はい確認致しました。二階までの魔導書でしたら閲覧可能です、一時間で銀貨一枚となっております。こちらのカードをお持ち下さい、利用時間が自動で記録されますのでお帰りの際に支払いと一緒にこちらへご返却下さいませ」
カードを貰って二階に上がる、二階の魔導書は初級よりもランクが少し高いのが纏めてあるらしい。
適度に見繕って空いてる座席に座る。
覚えるべきは範囲魔法と、今よりも強力なもの。
さて、ボクに習得出来るかな……
それからボクは夜遅く、閉館時間まで魔導書を読み耽るのだった。




