表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

02: 森七ヶ条

やっと主人公が出せた……!


「やはり、この山の草木は豊かに育っている。なぜだ……?どの国境も、枯れ木ばかりだというのに」


不思議に思い、しゃがみながら木を観察していると、背後から何かが近づいてきている気配がすることに気がついた。

いつでも対応できるように、腰に差してある剣に手を添える。


ガサガサと草木を分けてきたのは一匹の小さな狼。

小狼(ころう)は人見知りをしないのか、興味津々と言わんばかりに尻尾をふり、足元を駆けてまわった。


レオンハルトは、剣に添えていた手を外し、両手で小狼を抱き、目の前まで持ち上げた。


「お前、野生か?……それにしては警戒心が薄いな」


こんなに警戒心が薄いと逆に心配になるな、と苦笑いを浮かべる。

よくみると、この小狼は小綺麗で、この辺で飼われているのではないかと推定できた。


そういえば、この山には化け物が住んでいると村人が言っていたが、何か関係しているのか。

この小狼に案内してもらえれば何か分かるかもしれないと思い、小狼を好きに走らせることにした。



後を追うこと数時間、何度か寄り道したり、魔物と出会い戦ったりしたが、ようやく目的地についたようで、こじんまりとした木でできた小屋にたどり着いた。

中には人の気配もする。扉の一部が剥がれていて、小さな穴ができていた。

普段からこの小狼はその穴から出入りしているようで、連れてきたことなど忘れてスルスルと中に入っていった。


レオンハルトも警戒しつつ、ゆっくりと扉を開けるーーその時だった。


「ぐっ……!」


待ってましたかと言わんばかりに騎士と同じくらいの背丈がある狼が襲いかかる。


警戒していたものの、予想と反しての大きさと強さで後ろに弾き飛ばされる。

木にぶつかったがそれほどの怪我もなく、すぐに立ち上がり剣を構えた。


目の前には、警戒心たっぷりに唸りをあげる大きな狼と、その足元で不思議そうに吠える小狼。その狼は、まるで小屋の中のものを守るように、レオンハルトを近づけさせまいとした。


「その小屋に何がいる。何を隠している」


小狼を好きに走らせていたことからしても、子どもを守っているわけではないことは明らかであった。

多少傷つけても、中を見ようと思い、レオンハルトは狼を攻撃しようとした。


「ーー待って!ロー、ダメ!」


ーーその少女を見るまでは。




少女はかつて、祖母とともにこの小屋でくらしていた。

両親はいたらしいが、自分が産まれてすぐに事故で亡くなったそうだ。祖父はいるのかもしれないが、見たことはなく、その話もしなかった。


両親の記憶がないためか、悲しみにくれることもなく、祖母と狼のローとゴローと楽しく暮らしていた。

そして5年前、大好きな祖母が亡くなった。


祖母は、この山で生きるために必要なことを当時7才の幼い少女に叩き込んだ。

その中でも、特に念押しされた約束があるーー名付けて森七ヵ条。


そのいち、森を下りるときはフードを被ること。

そのいち、自分で狩りはしないこと。

そのいち、誰かが訪ねて来ても出ないこと。

そのいち、お金は大事に使うこと。

そのいち、怪我をしないこと。

そのいち、いつも清潔に保つこと。

そのいち、いつも笑顔でいること。


少女はこの森七ヵ条を忠実に守って生活している。

今朝は、ロー狩ってきた魔物の肉をシチューにして食べた。その後は、いつも通りお昼過ぎに洗濯物を取り込み、窓から差し込む暖かい陽気に身を任せてお昼寝に突入した。



そして現在ーー先ほどまでベッドの代わりに少女を包んでいたローが、いきなり立ち上がったために、少女は軽く頭をぶつけ、眠りから目を覚ました。


「うう……痛いよ、ロー」


文句を言いつつ周りを見渡すとローの姿はなく、小屋の扉が破壊されている。

少女は慌てて起き上がり、そっと外を確認した。


「誰かいる……っ!」


よくみると、木に背中をあずけている男の人がローに食べられようとしている。


少女は決して森七ヵ条を忘れたわけではない。

しかし、いま外でローに襲われている人は、この小屋に訪ねてきたわけでもないし、自分は森を下りているわけでもなかったため、大丈夫だろうと思ったのだ。

それに、このままではローが人殺しになってしまう。


少女はローを止めるため、フードもかぶらず外に駆けていった。




3月中になるべく進めようと思います。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ