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魔法使いが生まれる島  作者: 彩霞
第一章

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第5話 謎

「だとしたら……学校はどうしてそんなことをするの? 事実を捻《ね》じ曲げることに、どんな利益があってそんなことを……。僕は学校に得があるとは思えない」


 幼馴染の言い分に対し、マリはふんっと鼻で笑った。


「あなたは、素直で正直で優しい。善良の塊《かたまり》。あなたに関わった人があなたに良くしてくれるからって、疑うことを知らないのは幸せなことね」


 アッシュはその指摘に、口をきゅっとすぼめる。自分にお人好しで、お節介な部分があるのは否《いな》めないと分かっているからだ。

 マリは話を続ける。


「魔法学校が本当のことを秘密にするのは、当然自分たちのため。名誉《めいよ》、名声、権力……他にも色々ある。奴らはそれを独り占《じ》めにしたいの」


「魔法学校」を否定することは、自分が通っていた学び舎《や》を否定することになる。そうなれば、「魔法学校」に所属していた先生たちをも否定することになるだろう。


「グラース先生は、そんな人じゃない……」


 アッシュは、魔法を教えてくれた教師を思い出す。


 朗《ほが》らかで、生徒の話をよく聞いてくれる壮年《そうねん》の教師。落ちこぼれのアッシュにも丁寧に教えてくれた彼が、マリが言うようなことをしているとは思えなかった。


 しかしマリは、ため息をつくと吐き捨てるように言う。


「アッシュが信じるも信じないも、私は構わない。だけど、私は魔法学校のせいで散々な目に遭《あ》っている。あの人たちの本性は嘘つきで、卑怯者《ひきょうもの》。本当に汚い連中なのよ」


「……」


 アッシュは彼女の怒りの籠《こ》った言葉に気圧《けお》されつつも、ぽそりと懸念《けねん》していることを口にした。


「魔法学校と……戦うつもり?」


 幼馴染の問いに、マリは冷たく言い放つ。


「魔法使いがいなくなれば、魔法学校の存在意義もなくなる。どちらが先でも、私は構わない」


 そして、隣に立っている白いアッシュに声を掛けた。


「行こうか」


 すると、白いアッシュの瞳だけ、冬の空のような薄い青い色に染まり、まるで命が吹き込まれたかのようになる。


 だが、本物のアッシュは髪も瞳も薄い茶色。どうやら、〈鏡写し〉では色は写らないらしい。


「はい」


 白いアッシュが従順《じゅうじゅん》そうに返事をすると、マリは外に通じる扉のほうへ歩き出す。彼女にとっては話は済んだということだろう。

 しかし、アッシュには聞きたいことが他にもあった。


「待って……!」


 二人の後を追うために、立ち上がろうとする。

 だが、足に力が入らず、膝《ひざ》から崩《くず》れて倒れてしまう。


「うう……」


 それでも、何とか上体を起こし、マリの背を見つめ「待って……」ともう一度言う。

 その声でマリは振り返ってくれたが、不格好な姿の幼馴染を冷ややかに見下ろすだけで、とても話をするような雰囲気ではなかった。


「マリ……」


「〈鏡写し〉では、あなたの魔力も分けてもらった。全て取ったわけじゃないから安心して。でも、回復するには二、三日かかるでしょう。元に戻るまでは無理をしないことね」


 マリは忠告だけ伝えると、雨具を翻《ひるがえ》し、再びアッシュに背を向ける。


「マリ、待って……。まだ、聞きたいことが――!」


 力を振り絞って声をかけ続けたが、マリはもう振り返ってくれない。


 彼女は扉の前に立つと、取っ手を掴《つか》んで開いた。すると風と共に雨のしぶきが飛んで来る。


 アッシュは言うことを聞かない体を動かし、何とかその様子を眺《なが》めていたが、マリは白いアッシュと共に、躊躇《ためら》うことなく荒れた天気の中へ進んでしまう。


「マリ……!」


 アッシュの悲痛な声が放たれたのと同時に、マリたちはあっという間に姿が嵐の中に《《消え》》、開いた扉は彼女が残したであろう〈扉を閉じる〉魔法によって、静かに閉まった。


「……くっ」


 一方のアッシュは内心焦ってはいたが、体の力がどんどん抜けていくのを感じる。彼は急激に強い眠気に襲《おそ》われると、そのまま深い眠りに落ちてしまうのだった。

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