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6/6

5. Arcana Online

[作者]


猿野十三 様


[あらすじ]


 VRMMO-RPG「Arcana Online」の無料体験に当選したアイは、兄のジンに懇願し兄妹で参加する事となった。

 過去に類をみないほど完成されたリアルな仮想空間に、のめり込む兄妹。

 しかし、そんな平穏な日々は唐突に終わりを迎えた。

 突然のアナウンスに伴い、ユーザーは不安と共に仮想空間に取り残されたのだ。


 そんな中、素直で楽観的なジンはひたすら我が道を突き進む!

 その道の先には何があるのか。一人の男の旅が今はじまる。


[ネタバレありな感想&考察]※第1巻まで


 ストーリー (※1)や表現 (※2)は、バランスがよくテンポも良い。ネット掲示板の要素もあり、横書きで表現されるなど、視覚的にもパンチの効いた作品である。

 (※1)主に話の大まかな流れ(起承転結)のこと

 (※2)主に一人称、三人称、セリフのバランス


SAOから続くVRMMO市場で人気のあった本作だが、特筆すべき点は、人、物、風景描写における解像度の高さだろう。


 実際に見ていくと、導入ではゲーム制作者の恨み辛みなどの心理描写から始まり、VRMMO機器が作られいく時代背景、抽選秘話、兄妹の家庭事情、機器や妹の外観、はたまた主人公(兄)の性癖まで、事細かに描かれている。

ゲームを始める前の描写としては、非常に緻密だ。


あまり細かすぎると読みづらいのでは? と危惧する人もいるだろうが、「1つ1つの要素がそれほど長くない」というのがポイントであると感じた。

中には分割しつつ書いている要素もあり、テンポを落とさずに世界観が作られていくのだ。


 また、本作を読んだ事がある人は、世界観の作り込みもさることながら、「キャラ同士の掛け合いが好き」という人も多いのではないだろうか。

なろう小説では特に重要視されている、いわゆる魅力のあるキャラに該当する部分だ。


一方で、本作のキャラは一般市場での人気から少し外れている印象を受ける。

具体的には、男女問わず我が強く男勝りな性格であり、主人公もガサツな側面が多い。

主人公と女性キャラとの掛け合いが、恋人というより夫婦漫才のような形をとっているのも珍しいのではないだろうか。

いずれにしても、細かく描写することで、「あぁ、こういう人もいそうだな」と感じさせる手腕が魅力なのだと考えられる。


 ここで、内容とは少し異なるが、今回のキャラが男女共に需要のあるキャラなのかについて考えてみたい。

漫画家の山田玲司氏の発言から参照するが、1970年代のバブル崩壊によって、日本男子のオラつきつつも努力して働き、がめつく女性を手に入れるメンタルは崩れだした。

そこで登場したのが、80年代に人気を博した高橋留美子氏の「うる星やつら」だ。

なんの取柄もないダメ男を一途に愛し、がんがん迫ってくるラムちゃんが男の理想であったと同時に、諸星あたるという、デリカシーはないけど何故か自信があってとにかく行動する、バカ正直な男が女性の理想なのである。


では、時代が進みどうなったかというと、実は理想自体に変化はないように思われる。

今も尚ハーレム・逆ハーレムを羨み、男女ともにガンガン来るような、ヤンキーやスクールカースト最上位やインフルエンサーの様な自信家が理想なのではないだろうか?

しかし、現実では、男性には何度も挑戦できるほどの耐久性はなく、女性は熾烈なマウント競争に巻き込まれ、上位数%のハイスぺを待ち望むのだ。


という事を踏まえると、小説が現実からの逃避を図る媒体であるならば、本作のキャラ像は供給に反して、実は人気なのかもしれない……


 では最後に、作中で気に入った表現を抜き出して紹介する。


本作では、ステータス以外でユーザー間に差がうまれる現象を取り上げている。

これを「外装ステータス」と呼び、数字には現れない基礎値、遺伝子の様な概念を明記している。

そして、VR技術が軍事目的での開発が起源であることや、脳波から得られたデータの集合体であり、いわばブラックボックスであると説明がなされるが、これがなんとも現実味のある話の展開であり、非常に感心した。

基本的に、この手の面倒な部分は触れずにスルーするのが普通だからだ……


もうひとつは、主人公とヒロインの掛け合い部分であり、以下に引用する。


――

 「聞いてないわよ!『半魚ZIN』ってどういうことよ!?」

 「いや聞かれなかったし」

 「あなたは掲示板で何て呼ばれてますか?なんて聞くわけないでしょう!この馬鹿!」

 「仕方ないだろう。俺だって好きで『半魚人』呼ばわりされてねぇよ」

 「うっさい!あんたのせいでね!あんたのせいで……私は……『半魚神の巫女』って渾名つけられたのよ!どうしてくれんのよ!」

 「うまいこと言うな」

 「やかましい!」

 - さぁ、今日も賑やかな一日になりそうだ。

――


 私が個人的にツボっているだけかも知れないが、掛け合いはコミカルで軽い。

会話で大きく勢いをつけるのは、案外難しく感じるので、非常に参考になった。


作品URL:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784434165726

感想かいてクレメンス?(╯°□°)╯


レイ・クレメンス

イングランド出身の元サッカー選手。リヴァプールの黄金期を支えたGK。

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