アルノン川の川岸も避難先にはできそうだが、避難先に人間が住んでいない理由を推測してみた
さて、俺達はキルベト・クムランで一夜を明かし、マハマート・マインの温泉で疲れを癒やしたあと、エンゲティの対岸にあるはずのアルノン川を目指した。
今回は死海の湖岸をずっと進むだけなので比較的楽だ。
そして、マハマート・マインからエン・ゲティを移動した距離と同程度のところで、比較的大きな川を見つけた。
流石にヨルダン川に比べれば川幅は狭いと思うがそれでも、川幅は30メートル位はあり、水深もそこそこある。
十分な流量の水が流れ、水分が多く栄養が微妙な感じになりがちな川岸に柳などが生えているのも言えている。
俺は湖岸に船をつけて子どもたちやリーリスを船から湖岸から引っ張り上げて、東側の警告になってるらしい方へ進んで行く。
木々もあり動物や水鳥の姿も見かける。
だが、人間は住んでいないようだ。
「結構住みやすそうなのになぜ誰もいないのかしら」
リーリスがそういうと俺はそれに答えた。
「まず一番大きな理由はこのあたりにはオークやピスタチオの樹がたくさん生えてるわけじゃないってことかな」
「なるほど、それはそうね」
「あとは、こっちまで来る交易商人はいないだろうってことだな」
「たしかにそれもありそうね」
オークとピスタチオの森はユーフラテス川の流域のなかほどから、ダマスカス付近を抜け、ヨルダン川までは広がっているが、死海の沿岸は湿度や塩分濃度の関係でか、大きな森は見当たらない。
もう一つは農業の収穫に必要な石鎌や狩猟に使う石刃、石の鏃などに使う打製石器は火山地帯でしか手に入らないので、基本的にアナトリアなどのから交易商人がこない地域では手に入らない。
日本の縄文時代でも定住していたが、火山地帯ではない場所で打製石器を手に入れるには何かと交換をする交易が必要だったはずだからな。
もう一つは本来のこの時代は人口増加率が極めて低いから、集団が突如大きくなりそこかレア離脱する人間が出ることは少なかったということもあると思う。
実際にエリコが水没するだろうことが確実ではないならばわざわざ避難先を探して、エリコよりも環境が良いとは言えない場所に住むことを考えるということはしないんだけどな。
オークやピスタチオの雑木林やいちじくやぶどうなど果樹、麦畑からの収穫と山羊や羊という家畜、畑を荒らそうとするガゼルなどにヨルダン川の魚などのあまり苦労しなくても手に入る食料に加え、エリコは衛生的な泉の水もある。
エリコ以外でもヨルダン川流域などで人が住んでいるのはそういったオアシスに今のところはほぼ限定されていて、のちの聖都であるエルサレムなんかもまだ人はほとんど住んでないはずなんだ。
無論この時代でも狩猟を主にしていたり、ベドウィンのような山羊を追って定住しないで暮らす遊牧民的な人間もいるはずだが、このあたりもヨルダン川からはそう離れていないとは思う。
最低限でも飲料水が確保できないと人間は生きていくのは難しいからな。
とはいえここもそれなりに手をかければ人が暮らせるようにはなると思う。
旧約聖書の時代ではアルノン川はモアブとアモリ人との国の間にあって、最大部で幅が約3㌔,深さが520㍍近くある渓谷は、モアブの国境をなしていると言われていたようだが、まあこの時代にはまだまだ関係がない話だけどな。
まあ今までエリコの住人以外にほとんど出会っていないのは、単純にこの時代は人口が少なすぎるので人口密度がうすすぎる上に基本的に集落に偏ってるからだとは思うが。
俺が水鳥を矢で仕留め、リーリスと子どもたちは川で魚をすくい食料を手に入れたのでそれをさばいたあと、火を起こして炙って食べればそこそこ美味かった。
「ここはエン・ゲティの反対側っていうのがわかりやすくていな」
俺がそういうとリーリスが頷いた。
「たしかにそうね。
地図に付け加えるのも簡単そうだし」
「たしかにな」
エリコからあまり離れてしまうと避難する前の間の食料や飲料水の確保が大変だからとりあえずはここも含めて4かsyを避難先として整備していけばいいかな。