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ようやくエリコに戻って来たが、地図を書いておきたいな

 さて、俺達はエン・エグライムで一晩過ごし、翌日にはヨルダン川をのぼってエリコに戻ってきた。


「ふう、ようやくエリコに戻ってきたな。

 やっぱり家が一番落ち着くぜ」


 俺がそう言うとリーリスが頷く。


「そうね、こんなに長く家を離れるなんておもわなかったわ」


「それに関してはリーリムやリーリスのお母さんに申し訳ないことをしたな」


 リーリム達に俺達が飼っている家畜の世話をお願いしていたからな。


「でも、これくらいなら大丈夫よ」


「それならいいんだが」


 まあこの時代の家畜の世話は朝に家畜小屋から連れ出して街中などに放し、夕方にそれを家畜小屋に連れ戻すということくらいしかしないし、そんなに数が多いわけでもないしな。


 そしてアイシャが俺を見上げて言った。


「とっても楽しかったから、あたしもまた行きたいー」


 そして息子も言う。


「行きたーい」


「そうだな、麦の収穫が終わって暇になったらみんなでまた行くか」


 俺がそう言うとアイシャ達は嬉しそうに言う。


「やったー」


「やたー」


 しかし、リーリムやその家族にもキルベト・クムランやハママート・マインに行ってもらうとしても、残って家畜の世話をする人間はやはり必要だ。


 なのでできればそれを見ればハママート・マインにいける地図のようなものが欲しいんだよな。


 21世紀の現代ならスマホでWEBマップを見れば誰でも大体なんとかなるが、この時代には地図なんて概念はないよなぁ。


 それに地図を作るにしても書き込むための記録媒体と書き込むための道具が必要だ。


 ちなみに一番古い体系立てられた文字は5000年前のイラク南部のシュメール人が発明した楔形文字だが、原文字と呼ばれる意味を持つ記号のようなものは9000年前ほどには出てきていてそれは石板や粘土板タブレットに記されている。


 のちの羊皮紙につながる獣皮やのちの紙につながるパピルスへのインクでの記入も5000年ほど前には始まってるようだ。


 ちなみに中国で木簡や竹簡が間違いなく使われたのは殷代でおよそ3500年ほど前で文字は甲骨文字だ。


 なので文字や記録媒体の歴史は結構古いのだが、そもそも65000年以上前にスペインでネアンデルタール人によって描かれ、ホモ・サピエンスの洞窟壁画もインドネシアで51200年前には出現している。


 つまり何かを記録するために石壁などを掘るということはずっと昔から行われていたわけだ。


 一方の地図は、概念的な図形レベルであれば5000年前からあるにすぎず、明らかに地図と呼ぶのにふさわしいものでは、3500年前にはあったようだ。


 つまり文字や地図というのは意外と古いんだな。


 なので概念的な図形レベルの地図で粘土板か石版に記すものであれば、俺にも作れるだろう。


 とはいえそれを作るのにも時間がかかると思うし、たまにはリーリスには家族水入らずで過ごしてもらいたいので今回の案内はリーリスにお願いするが。


「じゃあ、ハママート・マインへのリーリムや二人のお母さんの家族の案内はリーリスにお願いするな。

 たまには家族でゆっくり過ごしてくれ」


「わかったわ」


 リーリスがそううなずいたので俺はアイシャたちにも聞く


「アイシャたちも一緒に行くか?」。


 そうするとアイシャは意外なことに首を横にふった。


「あたしはとーしゃといっしょがいー」


 息子はよくわかっていないようでぽかんとしている。


「じゃあアイシャは俺と一緒に残ってくれ」


「あーい」


 そして俺は息子に言う。


「お前さんはリーリスと一緒にいてくれな」


 まだ息子には母乳も必要だからな。


 というわけでエリコには俺とアイシャが残って家畜の世話をすることになった。


 リーリスやリーリムとその旦那、そして姉妹の母親たちはエン・エグライム経由でハママート・マインに行って戻ってくる予定だ。


 食べ物は秋に集めたものが、まだまだ十分残ってるし朝夕の家畜の移動以外は大してやることはない。


 なので俺は地面に木の枝を使って簡単な地図のようなものを書いてからそれをアイシャに見せてみた。


 まあ書いているのはエリコとヨルダン川、死海とキルベト・クムランやハママート・マイン、エン・ゲティやエン・エグライムが死海のどのあたりにあるかを書いただけなんだが。


「アイシャ、ここがエリコでここが(ヨルダン)川、こっちが塩の海(死海)。

 で塩の海のどのあたりに俺たちがいった場所があるか書いてみたんだがなんとなくわかるか?」


 俺がそう聞くとアイシャはうなずいた。


「ここはあったかい水があったとこなのー」


 うん、そこはハママート・マインだな。


「おお、わかるか。

 すごいぞ、アイシャ」


「こっちはお魚がいたちっちゃい川なのー」


 こっちはエン・エグライムだろう。


「アイシャは賢いな」


 俺がそういってアイシャの頭をなでると、アイシャは万歳して喜ぶ。


「アイシャかしこーい」


 まあ、いったことがない人間にも伝わるかどうかはわからないが、ある程度の記録に意味があるだろうことは確かめられたな。


 できれば石板にでもおおよそ100年後には大洪水が来ることを記しておきたいものだ。

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