死刑執行
そこのお前。
そうだ、お前だ。
この話が読みたいか?
なら、
おかめ納豆を作者に献上しな。
by 宮義 麗央
時間は夜の十時。
外では大雨が降ってる。
そして、俺の一人暮らしのアパートの玄関に、ずぶ濡れの危険物がいる。
どうやら家を飛び出てきたみたいだ。
俺は別に驚かない。
どうして?
知りたいか?
なら、
たけのこの上に座ってみな。
……それは反則だ。
横に置いたたけのこなんて誰でも座れるだろうが。
立てろよ。
フフフ……愉快だ。もっと体重かけな。
よし、痔の薬を買ってこい。
俺が驚かないのは、日菜の家出はもう十回を上回ってるからだ。
毎回、ほんとにくだらない家出内容。
この間は、日菜のダディとどちらが先に風呂に入るかでモメて家出。
その前は、日菜が毎日飲んでる牛乳が買い置きしてなくて家出。
更にその前は、ダディが間違って日菜の箸を使ったことで家出。
くだらないだろう?
誰だ、今一人だけ危険物に同調した奴は!
超至近距離で、うずまきの蚊取り線香たくぞっ!
「ねえってば!」
あ、危険物と話してたのすっかり忘れてた。
「あ、悪い悪い。タオルね」
そんなに睨むなよ。お前が睨むと血の香りがするんだよ。
この間も敦士の第二秘書が俺に色目使ったからって、彼女を斬首刑にしようとしたばっかりじゃん。
あの時、俺と敦士が二人がかりで台所に疾走するお前を止めたよな。
とりあえず、ビクビクしながらタオルを渡して……と。
「今日は何で家出したんだよ」
「……あたし、ラベンダーの香り嫌いだって言ったのに! 聞いてよ麗央! パパがト」
聴力、オフ。
多分、最後の『ト』と『ラベンダー』からして、トイレの芳香剤が気に入らなかったんだろうな……。
ダディ、あとで安否確認しなきゃ。
「とにかく風邪引くから、早く風呂に行け」
「……わかったわよ!」
何で俺が怒られなきゃならないんだ……。
もう嫌だ。
疲れた。
一刻も早く危険物を放り出したい。
でも、俺を誘惑した第二秘書にヤキモチ妬いたってことは、サヨナラを告げようものなら俺も首チョンパだな。
ーー二十分後、
あ、日菜があがってきた。しかもバスタオル巻いてるだけか。
ん……?!
ゥワッ、手に斬首刀持ってるっ!!
ちょちょちょちょっと待って!
ハウス!ハウス!
ああもう、武器!
なんか応戦する武器くれッ!!
ないっ!
……もうナスでいい!!
近寄ってきたぁ!
だ、だだだだ誰かっ!!
ぉ俺、死にたくない!
「怯えちゃって、麗央ってば、かーわーいーい!」
えっ……?!
斬首刑じゃないの?
「背中の毛剃って」
……。
普通彼氏にやらせるか?
毛剃り。
いいや……もう。
すっげえ悔しいけど、逆らわないでおこう。
そこ、何笑ってる。枕に糠漬け仕込むぞ。
ジョリジョリ……
あぁ……、傷つけたい。
毛剃りって意外に性感帯を刺激するなぁ。
あーあ、もう終わっちゃった……
そこのお前。
そうだ、お前だ。
毛剃りはいかが。
今ならサンキュッパだ。
「ねーえ、麗央。もういいでしょ?」
首に腕が回されてる。
絞める準備、完了。
死刑宣告だ……!!
やっぱり俺、腹上死するしかないのか!
そこっ!笑い事じゃない!
(珍珍)見せるぞ!カッコの中はそのまま読め!
なんかいつの間にか日菜が俺の上に馬乗りに!
しかも顔近い!
うわっ、ングッ
……キス?
な、わけない。
ガリッ
ほら。
タンが食べたいなら焼き肉屋に行ってくれよ、日菜。
あー、なんか唇が首の方に這ってく……
頸動脈の位置確認か?
「ねえ、麗央。ちょうだい」
どっちのタマを要求してるんだお前。
もしかしてどっちもか?
「俺……絶対、下敷きは嫌だ」
だってそうだろ?
サディストなんだぜ、俺だって。
誰が下になん……
ぅおーい。
日菜、俺のご子息も絞殺刑か。
ぃ、痛いって!
そこっ、笑うな!
甘らっきょ投げつけるぞ!
ヒィ!
日菜が女豹になってる!!
俺を車道に突き飛ばしたあのときの眼だッ!
「麗央、やらせな」
も……もう駄目だ。屈辱的だが、死ぬよりいい。
タマ(命)を取られなきゃの話だが……。
にっぽん……ばんざーい
宮義麗央、十六歳。
職業、サディスト。
初めて女に……犯されました。
笑ったな?!
パンスト被せるぞ!
安心しろ、使用済みだ。
この作品の原稿の仮タイトルは
あ
です。




