第1話 中古スマホ(ジャンク扱い)との出会い
二〇三九年、五月。とあるアジアの小国は、七年前に失った暮らしを直し続けていた。
戦前、近隣の大国の圧力で多数の原子力発電所の建設を進めたこの国には、豊富な電力を求め、巨大なAIを動かすデータセンターが次々と建った。
だが二〇三二年、AIの覇権をめぐる世界大戦が発生した。AI兵器やドローンが攻撃の主力となり、その制御を乱すコンピューターウイルスも武器になった。直接は参戦していないこの国も、同盟国との関係からミサイル攻撃などを受けた。AIデータセンターだけでなく、市街の建物や社会インフラが破壊され、民間企業の電子ネットワークへのウイルス汚染も重なって、物流と通信は壊滅的な打撃を受けた。
送電網は各地で寸断され、原子力発電所の多くも、安全確認や保守に必要な部品と人手の不足で停止した。
停戦後も、各地に残った行政機関は公共施設から復旧を進めているが、社会基盤が全国で十分に復旧するまでには、まだ数十年かかると見込まれている。動かせる発電設備から届く電力は、浄水場や医療施設などへ優先して回され、市民への供給は限られていた。
住民には毎月、配給される電力の量と用途を定めた紙の「電力配給チケット(通称:充電チケット)」が配られる。
電話やWi-Fiの利用は、原則として、指定された行政職員の業務と、技術者による設備の修理・点検に限られる。個人用の通信を許されるのは、特別許可を受けた一部の行政高官や富裕層だけだ。
一般市民が頼るのは、ウイルス汚染を免れ、外部の通信回線につながずに働くスマホ内蔵の「ローカルAI」だった。
*
「少し、離れていただけますか」
聞き慣れない声に、ハルトは手を止めた。
部屋には自分しかいない。点検台の上には工具袋と、安いペットボトルの水。工具袋に立てかけた灰色のスマホから、落ち着いた、知的な女性の声がした。
「……離れる?」
ハルトが聞き返すと、スマホの下端の小さなスピーカーが答えた。
「はい。カメラに、鼻しか映っていません」
椅子ごと下がる。画面には『対話機能:利用可能』。通信機能は停止したままだ。声の主は電話の向こうの誰かではなく、この手のひらほどの機械の中にいる。
三日前、このスマホには札が貼られていた。
『ジャンク扱い(電源が入らない)』
電源が入ったあとのことまでは、書いていなかった。
*
三日前の朝。
ハルトは乾いたスナックをかじり、充電チケットを開いた。登録番号、期限、指定の充電所、対象機器、残りの割当量。角の丸くなった紙には、前回使った電気の量が書き込まれている。
隣に、昨日、行政の受付で手渡された修理依頼票を置いた。その内容はすでにスマホへ記録してある。
「今日の予定」
ハルトが呼びかけると、別の黒い端末の内蔵AIが答えた。
『アオハラ市、東区生活支援所。通信不良の点検です』
PictPhone2025。二〇二五年発売の、中級機に当たる旧型だ。最近は電池の持ちが悪く、昨日充電したのに、もう残量が心細い。
長い相談は苦手でも、予定管理と保存済みの修理資料を探す仕事には欠かせなかった。代わりの中古スマホを買う余裕もない。先端機種を作る工場は復旧せず、動作の確かな品には、普通の労働者が手を出せない値がついていた。
画面に通信の印はない。話しかけているのは、端末の中に保存されたAIだ。電話をかけられなくても、この機械にできる仕事は多かった。
ハルトは口に残ったスナックを、水で流し込んだ。近くの浄水場で売る安い水の容器が、手の中でぱきりと鳴る。
借りているのは元時計屋の二階。作業机と寝台、部品箱。窓辺には欠けた太陽光パネルが一枚と、それにつないだ小さな蓄電池。止まった時計ばかりの店なのに、自分だけが時間に追われていた。
紺の作業着を羽織る。肘は継ぎ当てだらけだが、工具袋の中は整っている。
二十二歳。十八歳で独立し、通信設備の修理を請け負って四年になる。
充電チケットとは別に、行政が発行した保守許可証を確かめた。
『通信設備の修理、保守に伴う機器検査および動作試験に限る』
それが、ハルトに許された通信の範囲だった。技術者だからといって、私用の電話ができるわけではない。
「行くか」
戸口でつぶやく。PictPhone2025は節電の休止に入り、返事はなかった。
*
ハルトの住むアオハラ市は、この地方では人が多く残る町だった。
通りでは、手押し車が舗装の穴をよけて進んでいる。探している家族の名前と、自分の宿の住所を書いた紙を、掲示板へ留める人がいた。受話器を外された電話ボックスには、近くの給水所の案内が貼られていた。
その向こうに、窓の少ないデータセンターが並ぶ。かつては夜も明るかった建物だが、今は門の内側まで草が伸びている。
十五歳のとき、警報で教室を飛び出した日のことを、ハルトは思い出した。あの授業の続きを受けることはなかった。
電話網も、まだ復旧の途中にある。切れた幹線や壊れた基地局を直し、ウィルス汚染された交換設備や管理システムを点検する。電気と部品と人手をそろえながら進める、数年単位の仕事だった。
限られた回線を公共業務に回し、ウィルス汚染の再拡大を防ぐため、行政は一般市民の通信利用を禁じている。家庭内のWi-Fiも例外ではない。特別許可のある屋敷には電話が残っていても、通りの人々は掲示板や手紙で連絡を取り合っていた。
修理が終わった場所から、誰でも電話を使えるようになるわけではない。一般向けの利用を再開する日は、まだ決まっていなかった。
東区生活支援所は、昔の学校を使っていた。
玄関には雨漏りを受けるバケツが並び、廊下の奥では職員が紙の束を抱えて行き来している。
ハルトは窓口で依頼票と許可証を出した。担当職員が番号を台帳へ写し、今日の試験範囲を確認する。
「支援所と備蓄倉庫の間です。それ以外への接続はできません」
ハルトはうなずいた。
「分かりました。いつから不調ですか」
「昨日の雨からです。つながったり、切れたりで」
職員が、赤い管理札のついた業務用端末に受信記録を開かせた。端末内のAIは動いていても、新しい情報は届いていない。
廊下の壁には、施設内の業務用Wi-Fiを中継する小さな箱があった。窓口の端末は、その中継器と施設の通信設備を経由して、備蓄倉庫への専用回線につながっている。
ハルトはPictPhone2025を取り出し、中継器の銘板をカメラに収めた。
「型番を読んで、保存してある資料を探してくれ」
内蔵AIが答えた。
『WR-18Bと読めます。末尾の文字は、確認してください』
汚れを拭き、目でもBと確かめる。同じ系列でも末尾が違えば、使う部品が変わる。
画面に、端末内に保存された整備資料が開いた。中継器の給電回路の図に、PictPhone2025の電池残量の警告が重なった。
「分かった。あとはこっちでやる」
ハルトは部品番号を保守帳へ写し、画面を消した。
隣の充電室には、『充電のみ・通信利用不可』の札が下がっていた。その受付では、利用者が紙の券を差し出している。
「この券で、パソコンも満タンになるんだろう?」
係員は、何度も折られて柔らかくなった紙を広げた。
「今月の残りは二十ワット時です。満充電まで、ではありません。スマホに使った分は、ここで引いてあります」
チケットは、期限内に指定の場所で、登録された機器へ電気を受け取る権利だ。スマホでも蓄電池でも、その人の割当量は超えられない。大電力家電やぜいたく用途には、別の制限もある。
使用量は券と台帳へ記入する。スマホが電池切れでも使えるよう、券は紙だった。充電台から住民の端末へ渡されるのは、電気だけだ。
ハルトが修理に使う業務用の電力も、生活用とは分けて記録する決まりになっていた。
ハルトは中継器の電源を切り、箱を開けた。雨漏りの水が配線を伝い、給電端子にまで回っていた。端子にはさびが浮いている。
測定で接触不良を確かめ、端子を交換する。配線を濡れる場所から離し、雨よけを施した。屋根の修繕依頼も残す。箱だけ直しても、次の雨で同じことになる。
試験には、職員が用意した施設の点検端末を使った。許可された区間へ接続し、通信を確かめる。
在庫表が表示されると、職員がほっと息をついた。ハルトは、まだ作業票へ丸をつけなかった。
「倉庫から、新しい返事を送ってもらってください。古い表が出ているだけかもしれないので」
職員が業務用端末から連絡すると、ほどなく確認の返事が届いた。
ハルトは試験接続を終了し、時刻と結果を記録した。
支援所の窓口では、職員が共同給水所の管理人に声をかけていた。給水所で故障した中継器の交換部品を、午後の便で届けられるという。倉庫との連絡が戻り、在庫を確保できたのだ。給水所では、別の技術者が部品の到着を待っているという。
管理人は握っていた修理依頼票を開き、何度もうなずいた。
これなら、今夜には給水所の通信設備も元に戻るかもしれない。
直ったのは町のごく短い回線だけだ。それでも、次の施設を直す手配が動き始めていた。
*
帰りに寄った広場のジャンク市場で、口ひげの男が顔を上げた。
「今日は何を壊した?」
店主オグラの挨拶に、ハルトは肩をすくめる。
「直してきたんだよ」
丸い腹に帳面を載せたオグラは笑った。戦前の在庫や廃機器から使える部品を集めるこの店がなければ、修理の仕事も続かない。
予備の端子を頼んだところで、台の隅に目が止まった。
灰色のスマホに、『ジャンク扱い(電源が入らない)』の札。画面は割れておらず、背面にカメラ、下端に充電端子と小さなスピーカーの穴がある。
起動しなければ、内蔵されたローカルAIも動かない。
ハルトは手に取り、刻まれた型番を読んだ。
「DayLight2030……」
オグラが横からのぞいた。
「二〇三〇年発売のやつだ。末尾の数字が発売年だよ」
十三歳のころ、工房で見た広告を思い出した。当時の最上位機種だ。育ての親のヒロトは、値段を見て「先に測定器を買い替える」と笑った。
オグラが札を指で弾く。
「北部の壊れた工場倉庫から出てきた。充電器につないでも反応なし。直るか分からん物に、いつまでも電気はかけられん」
向かいの露店では、老婆がスマホへ釣り銭を尋ねていた。隣の子どもは母親の端末へノートをかざし、学習用AIに文字を直してもらっている。
どちらも、相手はその端末の中にいた。
スマホのローカルAIは、計算や読み書き、記録の整理を助ける身近な道具だ。生存者の九割ほどは、動かない物も含めて何らかのスマホを持っているという。
高性能なパソコンと優れたAIで、復旧工事の手順や物資の配分を計算して稼ぐ者は、AI貴族と呼ばれる。個人回線の特別許可まで持つ者もいるが、計算機を所有するだけで通信を許されるわけではない。許可のない者のもとへは、依頼人が資料を持ち込み、結果を持ち帰っていた。
「そいつが直れば、お前も貴族かね」
オグラにからかわれ、ハルトは値札を裏返した。
「まず、測定器の借り賃を払う」
「夢が小さいな」
笑う店主に、ハルトは真顔で返す。
「請求額は大きい」
値段は、状態の悪いPictPhone2025の中古品よりも、ずっと安かった。動作保証のないジャンクだからだ。中枢が壊れていれば、何もできない。
だが、角に打痕があるだけで、こじ開けた跡はない。直れば、電池の弱った仕事道具の代わりになるかもしれなかった。
必要な部品代と食費を引き、手持ちの金を数える。
「端子と一緒に買う。少しまけてくれ」
オグラは帳面を開き直した。
「ヒロトも、そうやって余計な物を持ち帰ったよ」
「あの人ほど増やしてない」
ハルトが言い返すと、店主は口ひげを持ち上げた。
「まだ若いからな。これからだ。」
金を払い、スマホを布に包む。充電チケットは、売買に使うための券ではない。別の袋に入れたままだ。
*
部屋へ戻ると、ハルトは仕事用の機器から離れた点検台へスマホを置いた。
裏蓋を開け、見慣れない部品に目を止める。以前読んだDayLight2030の整備資料とは違い、中央の金属の覆いの周りに、細かな配線が何層にも重なっていた。
伸ばしかけた指を引いた。
――分からんところまで、分かった顔で触るなよ。
保守帳の表紙には、カミド・ヒロトの名前が残っている。ハルトを育て、工具の扱いを教えた人だ。大戦中は見習いとして現場へ連れていってくれた。十六歳でその人を失っても、言葉は残った。
まずは電気の入口を追う。
線をたどるうち、回路が川のように見えてくる。流れが途切れそうなところで目を止め、測定器で確かめた。
電源コネクターの固定金具が浮いていた。そのせいでコネクターが抜けかけ、接点がきちんと触れ合っていない。
「ここで止まってるのか」
ハルトは位置を保守帳へ書き留めた。高価な部品が壊れたとは限らない。接点一つが離れただけで、この箱は声を失う。
固定金具を整え、接触を戻した。これで電気が通っても、すぐに仕事道具として使えるわけではない。回線から切り離したまま、内部のウィルスチェックを済ませる必要があった。
調査に使うのは、窓辺の太陽光パネルで発電し、蓄電池にためた自前の電気だ。まだ充電対象に登録していない端末へ、仕事用の配給を流用するわけにもいかない。
その晩から雨が続いた。ハルトは日中の仕事を終えては点検を進め、起動と検査に回せる電気がたまるのを待った。
買った日から三日後、昼過ぎに晴れ間が戻った。
夕方、電池の状態と電源接続を確かめ、筐体を閉じた。給電しても、初めは何も起こらない。やがて、画面の隅に電池の印がともった。
しばらく充電してから、通信機能とローカルAIを動かさない保守モードで立ち上げる。DayLight2030の文字の下に、点検待機の表示が現れた。
ハルトは、検査に備えて充電しておいたPictPhone2025を机に置いた。ほぼ満タンの残量を確かめ、ウィルスチェックのアプリを開く。
通信技術者として登録された際、行政から提供を受けた、高度な検査用アプリだ。古いスマホでも、この専用の道具は使える。検査用データは窓口で受け取って更新しており、外の回線につなぐ必要はなかった。
保守用の許可には、修理して再利用する端末の有線検査も含まれる。ハルトは対象の型番と検査日時を記録し、検査専用のアダプターを挟んだケーブルで、PictPhone2025とDayLight2030をつないだ。
普通のデータ共有は行わない。検査のために読み出したものは、仕事の資料とは隔離された領域で調べる。相手のプログラムを不用意に動かさないための仕組みだった。
「まず、中身の点検だ」
ハルトは黒い端末の画面に触れ、検査を開始した。
起動に使うプログラム、保存データ、ローカルAIの領域。検査項目が一つずつ埋まっていく。
高性能なスマホを、旧型で調べている。手間も時間もかかるが、省けない仕事だった。
待つ間に、ペットボトルの水を何度か口にした。やがて結果が出ても、ハルトはすぐにはケーブルを抜かなかった。
『検査範囲内で、ウィルス汚染を示す既知の兆候は検出されませんでした』
それは、未知の危険まで存在しないという保証ではない。ハルトは検査の範囲と結果を確かめ、記録を保存した。
ケーブルを外し、PictPhone2025を休止させる。それから、DayLight2030を工具袋に立てかけ、通信機能を停止したままローカルAIの起動を進めた。
『保存領域を確認しています』
短い案内が、機械音声で流れた。
筐体がわずかに温まる。進行表示は途中で止まり、待っていると、また少し進んだ。
『ローカルAI環境を読み込んでいます』
「残ってたのか」
ハルトは画面へ身を寄せた。
音声、対話、機器の状態確認。機能が一つずつ立ち上がる。
前面カメラの使用を許可したとき――あの声が届いた。
*
鼻しか映っていないと指摘され、ハルトは椅子を引いた。スマホの角度も少し直す。
「これなら?」
下端のスピーカーから、落ち着いた返事があった。
「はい。顔が見えます」
画面に女性の姿はない。電池表示と、声に合わせて動く細い線だけだ。
ハルトはレンズへ向かって尋ねた。
「名前は?」
画面に、NANOLISと表示された。
「ナノリスです。このDayLight2030の中で動作するローカルAIです」
ハルトも、少し座り直して名乗った。
「俺はハルト。通信機器を直してる。お前の電源は、接触が悪くなってた」
ナノリスは一拍置いて答えた。
「ありがとうございます。ハルト。覚えました」
前の持ち主を尋ねても、知識はあるが、起動前の経験は思い出せないという。
ハルトは角の傷を見てから、別のことを聞いた。
「お前、売ったらいくらになると思う?」
「分かりません。現在の相場も、自分の機能の全体も未確認です」
ハルトは口元を緩めた。
「高いって言っておけばいいのに」
「あなたが信じてしまうと、困りませんか」
思わず笑った。分からないことを、分かった顔で話さない。
ハルトは机の請求書を裏返した。
「しばらく、一緒に仕事をしてみよう。ただし、普段は回線につながずに使う。検査を通ったからって、自由に通信していいわけじゃない」
ナノリスは少し考えてから尋ねた。
「ここで確認できる資料は、ありますか」
ハルトは保守帳を持ち上げた。
「こういうのなら、見せられる」
「では、そこから手伝います」
ハルトはうなずき、ナノリスに背面カメラの使用を許可した。端末を窓辺へ向けると、画面には古い太陽光パネルと、その向こうの濡れた屋根が映った。
「今日は晴れたから、お前を起こせたんだ」
ハルトが言うと、スピーカーから静かな返事があった。
「今日、起きられてよかったです」
*
起動の翌日から三日間は、二台を併用した。
ハルトはナノリスの動作と検査記録を確かめながら、手持ちの紙資料と自分の作業記録をカメラに読ませ、予定の整理から少しずつ任せた。施設の回線にはつながず、通信試験は今までどおり、現場の許可された端末で行った。
その間にDayLight2030を充電対象へ追加したが、もらえる電気は増えない。二台を動かす無駄を減らすため、普段の仕事はナノリスへまとめることにした。
三日間の電池の減り方から見て、軽い使用と待機が中心なら、満充電から十日ほどは持ちそうだった。ただし、解析を続ければ短くなる。ハルトはその目安と注意点を保守帳へ書き、PictPhone2025の電源を切った。
記録も内蔵AIも、提供された検査アプリも消さない。古い端末は予備であり、これからも必要なときに起こす検査道具だった。
翌朝、ハルトは背面カメラを起動し、レンズを外へ向けて灰色のスマホを胸ポケットに入れた。すると、ナノリスが言った。
「ハルト。布しか見えません」
ハルトはスマホを取り出し、ポケットの底に折り畳んだ布を詰めた。背面カメラのレンズが縁から出るように、もう一度差し込む。
「これなら?」
「見えます。ここでお願いします」
居場所を決められたようで、少しおかしかった。
今日の依頼票は、第三充電所の回線点検。ハルトは工具袋と許可証を確かめ、戸締まりをした。
「行くか」
「はい、ハルト」
胸ポケットのスピーカーが答えた。
誰にも電話をかけていない。それでも今日は、一人で出かける気がしなかった。
(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません)




