22 「ふははは、勇気で抗えるかな? 勇者諸君ッ!」
おじさんの身なりが少しいいし、護衛なんて目立つことをしている。
勇者の目に留まりやすい条件が揃っているからな。
勇者の視線が、おじさんを捉えるのを確認してポーションを出す。
ヒールだけじゃなくて万能薬もサービスしちゃうぞぇ。
怪我じゃなく病気かもしれないしね。
「なんと! この奇跡はどこに祈ればいいのか……ありがたい」
「すぐ帰ったほうがいい。行くぞ」
「そ、そうだな……そう…………」
「チッ、マズいか? さすがにアレからは守れんぞ」
「なんということだ」
「ダンジョンのルールに期待するしかないか」
冒険者からアレ呼ばわりされてる勇者が動いた。
おじさん側も気付いたな。
「いいものが手に入ったようね? くださるかしら」
「お、お待ちください勇者様方。これは……これは私の家族を救うために必要なものなのです! なにとぞお慈悲を……」
「なぜだ? 勇者の行動には優先権が発生するのは知っているだろう? だからお前たちは待っているか出直すかすればよいのだ。能力が足りずとも、少し考えれば理解できよう」
「やれやれ、これだから頭の悪い連中と話すのは疲れるぜ」
「お前たちの平和は勇者のおかげなのだから、黙って言うことを聞いていればよいのだ。勇者には勇者なりの、愚者には愚者なりの行動が伴うもの。それを理解せぬか」
「で、ですが……」
「変ね? なぜ私がお前たちに配慮しなくてはならないのかしら?」
「ハッハッ。愚民は、回れ右して、大人しく、してな!」
「ここは勇者が歩むための道なの。分をわきまえるのよ? いい?」
相手が勇者なので、お仕置き部隊はデスナイトじゃなく僕たちだ。
見た目を偽装して1層に。
「ダメだね。矜持もなにもないじゃないか」
「全てがアレだとは思いませぬが、期待はせぬほうがよろしいかと」
「そうかもなあ」
エレベーターは人のいない場所にしか出せないからね。コソ移動した。
さあ、魔王のお時間です!
ムカつくヤツらだし、まあ力は奪いやすくなったかな。
ということで参戦です。
カツーンカツーンと石畳を叩くブーツの音も演出だぜ。
「なあ、これが現代の勇者なのか? 弱者狩りで自分が強者とかって勘違いしているのか? 滑稽極まりないんだけど」
「なにヤツか! 我らを勇者と知っての狼藉、万死に値するぞ?」
「伏して聞け、痴れ者ども! 我が主──魔王エリュシオン様の御名を!!」
「ふははは、勇気で抗えるかな? 勇者諸君ッ!」
「ばかな……ここは1階だぞ? なぜ魔王が来やがるッ!」
「非戦闘区域での初狼藉が勇者だったからね。記念の罰は僕が与えようかと。来るがよい、勇者よ。ってヤツさ。戦闘行為は許可しよう」
僕は雰囲気を出しながら、背後に魔弾を待機させる。
リゼッタもシャリィィンと気持ちのいい音を立てて、剣を抜く。
「まあ! 私たちに手を出すのね? あはは、笑えるわ。いまだにこんな輩が残っていたなんて。それに身の程知らずの魔王なんて、いい素材になるわ」
「それもそうか。オラァッ!」
とか言いながら切りかかってきた。
全部自分の思い通りになると思ってるんだろうな。
「権力に溺れたか下郎」
リゼッタが前に出て受ける。
というかシールドバッシュった。
「ぉぐぇ」
潰れたような声を上げて転がる、わんぱく勇者くん。
「エリュシオン様、成敗しておきました!」
満面の笑顔っ!
凄く褒めて欲しそうで、凄くカワイイ!!
なにしても許されるとか思ってるヤツらなんて、ろくでもない存在だもんねっ。
「さすがリゼッタ、ナイス!」
「ゆ、許さんぞ貴様あああ!」
「フン、その程度か。物の数ではないわ!」
「始末するのは禁止ね。昏倒で済ませるように」
煽るリゼッタにブレーキをかけておく。
お家に帰ってもらわないとな。
箱庭のガーデンコアをもらうつもりなんだから。
「つまみ食いした子供を叱る感じでお仕置きだ。つまりお尻ペンペン程度で済ます」
復活してもダンジョン攻略に来てもらうため、僕もしっかり煽っておいた。
「なんとお優しい。了解であります。かかってくるがよい、お子様勇者どもめ」
「我らを愚弄するか、魔王め。ならば命であがなえ!」
脳内BGMはボス戦を流しつつ──
「身体強化」
──とりあえずブッ飛ばしとこ。
「先に魔術師タイプをやる!!」
「ええ! ハァァァァァッ」
「いくぜ! ブースト──オンッ!!」
それぞれの勇者の精霊が戦闘仕様に変わって、勇者にバフを送り始める。分かりやすく青白いオーラをまとってる。勇者ってプレイヤーキャラだからね。
エフェクトが基本的にカッコイイのよ。
もう完全にカッコイイの無駄遣い。
見た目だけ勇者とか。
しかし球体かあ……これはNPC力高めの選択だ。プレイヤーならフェアリータイプとか神獣タイプが多いからさ。
やっぱり転生した僕のほうが異質なんだろうな。
「ぬるいでありますな!」
「キャアッ!」
「ヌッ」
「おい、邪魔ァ!」
リゼッタに弾かれて、勇者3人が1ヶ所に固まった。
「魔弾斉射──雷電──」
直撃しないように雷撃を誘導する。
僕の目的はオマケのデバフである痺れ効果。
「おおっ、腐っても勇者。なかなかやるね!」
「な、生意気なのよ! お前ぁあうぐッ!?」
剣で魔弾を切り裂いたりしてる。
電撃の効果もイマイチか?
「っく、この……ッ、ぬあっ」
「人工精霊が仕事をしているようであります」
「みたいだね」
「クソックソッ」
「私の出番、すぐなくなったでありますが?」
リゼッタが参戦したそうにこちらを見てる。
「それは……ゴメンだね」
ちょ、丁度いい戦闘力ってどうすればいいのさ?
「もうっ。ピラミッド型ダンジョンの骨のほうが手強かったであります」
「うん」
すねちゃった。
かわいっ。
「バ!? バカな!! まさかアレをぐわあああああああ」
「ありえなきゃぎぃぃぃぃいいいいいいっっ」
「ぬおお貴様らに! 貴様らなんぞに!! やられてなるものかぁぁあっ!! 我ら勇者の悲願をグ、ォォオッ! 悲願を奪われ……た、の……か…………」
「あ、それもゴメンだね?」
どうやら攻略したかったみたいだ。
「ロマンがあるからなあ、ピラミッドには」
「古代の文献にも色々と伝説が載っておりますから」
ピラミッドは異世界人も好きらしい。
今の勇者的には盗掘方面なんだろうけど。
「さて、キミたちはどうするかな?」
おじさんたち、逃げ出さずに残ってるのが謎。




