第205話 何とか許して貰えました
「たく。申請してなかったとはな。それでどうするんだ探索は」
香川さんに怒られていると、様子を見ていた睦郎から声が掛かった。
そうだ。ここは彼の店なのだし、いて当然なんだよな。
「悪いな睦。俺も連絡しておけばよかったんだ」
「いやいや! 悪いのはうっかりしてた俺なんで!」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「ゴブッ!」
「マァ!」
「モグッ!」
マスターに頭を下げさせるのは申し訳ないと俺も謝罪したが、それを見ていたモンスターたちも謝罪の姿勢を見せた。
可愛いけど、皆は悪くないから責任を感じてしまう。
「フンッ。適当な奴なのかと思ったが、モンスターには好かれてるようだな」
俺とモンスターたちを見ながら睦郎が言う。
「少なくとも嫌われるような飼い方はしてねぇか」
そう呟く睦郎の目は職人らしく鋭かった。
「そうなんだよ。風間はちょっとおっちょこちょいなところがあるんだが、モンスターの面倒見はいいし、例えモンスターが相手でも対等に接する事が出来る奴だ。睦の客としては申し分ないと思うぜ」
「お前にそこまで言わせるとはな。とはいえ試練は受けて貰うがな」
「そ、それは勿論です」
睦郎に言われて俺も試練に挑む意思があることを伝えた。
「そうなると後は申請だが、なぁ香川。申請書はあるんだよ。だから今回は、罰なら甘んじて受けるからよ」
小澤マスターが両手を合わせて頼み込む。俺も一緒になって頭を下げた。
「俺も必要なら罰を受けますので!」
「風間さんは、その……おっちょこちょいなところもありますけど、熱意は本物なんです。私からもお願いします」
「ワン!」
「ピキッ!」
「ゴブッ!」
「マァ!」
「モグゥ!」
俺に続けて秋月やモンスターたちも香川さんにお願いしてくれた。
香川さんが大きく息を吐くのが聞こえた。
「これはもう始末書ものですね。本来ギルドで書くべき申請を外でやるというのですから」
「か、香川! それなら」
「勘違いしないでください。探索届は基本的にギルドで書くのが規則なのは確かです。ただし、管理権を持つ職員がやむを得ない事情があると判断した場合はその限りではない――とも記載されていますからね」
香川さんが淡々と説明する。小澤マスターはうんうんと頷いていた。
「ただし、マスターが勝手に申請書を持ち出した事は事実。風間さんが申請書を出さずにダンジョンに入ろうとしたのも事実。なので始末書は書いてもらいます」
「おう! 何枚でも書いてやるよ!」
「俺も、後で必ず書きますから!」
「香川さんありがとうございます!」
「ワンワン♪」
「ピキィ~♪」
「マァ~♪」
「ゴブゥ♪」
「モグゥ~♪」
どうやらモンスターたちも安心したようだ。
「喜ぶのはまだ早いですよ」
香川さんが眼鏡を押し上げる。
「先ずは申請書を書いてください。それから後で始末書を提出する旨も一筆必要です」
「うっ」
「ぐふっ」
俺と小澤マスターの声がほぼ同時に漏れた。
「ワン?」
「ピキィ?」
モンスターたちが首を傾げている。
「当然でしょう」
香川さんは容赦がなかった。
その後、俺は申請書を記入し、マスターと並んで一筆書き始末書の提出を約束することになった。
そして手続きが終わると、睦郎が腕を組んだまま口を開く。
「話は終わったな」
「はい!」
「なら改めて試練の説明だ」
睦郎の言葉に自然と背筋が伸びる。
いよいよ本番。
モンスターたちと挑む試練が始まろうとしていた――。




