第九話 女勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている
「青空王座も慣れれば悪くないな」
「ほんとにー?」
実際薄暗い城の中よりは良い気がしてきた。住めば都ってやつか。
「まあ、世の中慣れよ」
「ん? 誰か来たみたいね」
何者かがこちらに近づいてくる。おや、あれは女勇者か。
「お久しぶりです、ペラン様」
「久しぶりだな、シノセよ」
「今日はその、お聞きしたいことが」
「なんだ?」
「一応まだ勇者はやっているのですが、色々考えた結果、器ではないと悟り辞めようかと」
「ふむ」
「それで現在、勇者を辞めた後の勤め先を探しているのです」
「もしよろしかったら、ここで雇って頂ければ、と」
(勇者を雇う、か)
(かなりの使い手のようだし欲しいと言えば欲しいんだけどね)
「多少腕には自身があります。それでもペラン様には敵わないでしょうけど」
(うーん、やっぱりナニかがどこかで食い違ってそうね)
(どういうことだ?)
(今、ペランちゃんに敵わないって言ってたでしょ)
(うむ、ってあれ)
(そもそもここへ相談しに来た時点でおかしいなとは思っていたのよ。人間に親しい知り合いは居ないし)
(ふむ)
(それでこうなると雇う場合は問題が起きるわね。話と違うとか、思ってたのと違うとか)
(あー、そうなるとややこしくなるな)
(だからこちらの情報を出して考えさせたほうが良いかも)
(そうだなぁ)
(人間側にバレたら面倒だから、その情報は他には言わないようにってのも言っておいて)
(ふむ)
「コホン。シノセよ、お待たせした」
「いえいえ」
「どうにもそちらの情報と実際の情報が食い違っているようでな。今現在の俺が置かれている状況を話そうと思う」
「はい」
「もちろん他言は無用で頼むぞ」
こうして俺はシノセに説明を。「コーンボーイ」の件は追い返すために言った、俺は現在世界ナンバー2の弱さ、等勘違いしてそうなところを重点的に。もちろん呪いのことも。
「なるほど、そうでしたか」
「悪いな」
「いえ。確かにそちらの都合も考えず急に無理難題をふっかけたのはこちらですから」
「まあ、考えがまとまるまで泊まっていくといい」
「ふむ、それではお言葉に甘えます」
「エーレ、彼女を客間へ。寝るところも用意してやってくれ」
「ハッ」
「こちらへ」
二人は城の奥へと入っていった。
「どうですか? 幻滅しましたか?」
「いえ。聞いていた話とは全く違うから驚いてはいますが、元々少々おかしいなとは思っていましたし」
「あ、申し訳ありませんがこちら側の情報は出さないようにします。何を聞いていたかは言わないように」
「そのほうがいいでしょう」
「それではごゆっくりお考えください」
「はい」
1時間後、エーレが戻ってくる。
「どうなるかな、彼女」
「そんなに悩んでいる様子はなかったわね」
2日後。
「ペラン様。お話、よろしいですか?」
「いいとも」
「はい。それでここで雇ってくれと言った件」
「引き続きお願いしようかと」
「ふむ」
「主な仕事は俺の近辺警護ってところだが、うちは人手が足りなくてな。今いるのは全部で4人。俺とエーレ、究極最弱の魔物、現在行方不明の魔族だけなんだ。実質エーレ1人で切り盛りしている」
「ということで色々やってもらうことになる」
「問題ありません」
(いいな、エーレ)
(いいよ)
「ではウチで雇うとしよう」
「ハッ! ありがたき幸せ!」
「では一旦帰ります。2週間ほどで手続きも終わりこちらへ来れると思います」
「ふむ」
2週間後。シノセが城へ。
「勇者を辞めてきました」
「そうか」
「では、ウチで雇おう。改めてよろしく」
「よろしくおねがいします」
「よろしくおねがいします」
「では早速仕事を教えてやってくれ、エーレ」
「わかりました」
「それではお城の中へ」
「はい」
二人は城の中へ入っていった。
「シノセさん、ほんとに良かったんですか?」
「はい。こちらに本当のことを話してくれたってだけでも信頼に値するかと」
「なるほど。そこで人を見たんですね」
「まあ、実際そんなに悪い人ではないですから」
「はい!」