第十六話 秘密
「今日も平和じゃのぉ。ん、団体さんが来たか」
たくさんの女を引き連れた男がこちらに向かって来るのが見えた。
「うわっ。私アイツ嫌い」
いきなり豪快な陰口。しかしそれは仕方のないことではある。彼は女癖が悪く、女の敵と酷評されているのだ。だがそんな状況でも彼はモテる。中性的な顔立ち、大きなお目々、そしてイケメン。
知ってるよ。イケメンなら結局オーケーなんだよね!
「やあ、久しぶり。魔王ペラン」
「久しぶりだな、魔王リシャ」
「エーレも相変わらずお美しいことで」
女がいると口説こうとする。
「……ありがとうございます」
「キラン」
ウインクした目ときれいな歯が光る。殆どの女の子はこれで落ちる。「ドキン」。え? 俺も!?
「えー、リシャ様は私達のものでしょ?」
「はーっはっは、そうだね。悪かった」
「それでペラン、話があるんだけど」
「わかった。エーレ離れていてくれ」
「はい」
「お前達も」
「やだー、離れたくない」
ほどなくして2人きりに。
「誰にも言ってないよね?」
そして彼には秘密があった。
「私が女だってことを」
「もちろん」
そう彼は、いや彼女は女なのだ。さっきドキリとしたのは可愛い女の子のウインクを食らったからだったのだ!
正体を知っていれば中性的な顔立ちも相まって女の子にしか見えないからな。
「意外だな。悪名高い君は、僕の弱みに付け込んで色々仕掛けてくると思っていたけど」
「フン、俺クラスの魔王になると宵越しの記憶を持たないのさ」
「そ、そうか」
適当に答えたが、ただ忘れていただけだった。そうだった、正体を知ったときはどうしてくれようと画策してた気がする。って、俺そんなに悪名高いの!?
「バレるときはバレるものだな。まさか水浴びしているときに裸を見られるとは」
「立派なおっぱいがついていて、お前のSONが行方不明だったときは混乱したぞ」
「……、そうか」
「ところでまだしばらく魔王を?」
「もう少しだ。弟がもうじき魔王となる」
「そうか。苦労したようだな」
「大変だったよ。女の僕が男魔王を演じるのは」
「物心ついてからすぐに演技していたんだったな。親御さん、魔王が亡くなったとかで。そこの地域は男しか魔王になれないんだっけ。んで子供は娘ばかり、仕方なく男装を」
「歴史あるところは時としてその歴史が足を引っ張るってこともあるのさ」
「古臭い習慣だ」
思い出した。この話を聞いて脅そうとする気が無くなったんだっけ。
「最後に生まれた子が男の子で良かったよ。まあ、まだ赤子だったからすぐに引き継ぎはできなかったけど」
「それにしても相変わらず女の敵を演じるのはうまいな。エーレが嫌がっていたぞ」
「ハハハ」
「女っぽさを隠すために徹底的に女好きの性格を作り上げたからね」
「リシャの周りにいるあの子達は仕込み、正体を知っている者達だったよな」
「そうだ。早い話女避けだ」
その後少時間言葉をかわす。
「こんなところかな。今日は一応口止め、確認に来ただけだ」
「わかった」
「もし魔王を卒業したらうちに来てもいいぞ。もちろん女の格好でな。男では女達がキレるから」
「ハハハ、考えておくよ、ではな」
「キラーン」
今日一番の輝き。あ、遠くでやり取りを見ていた嫁持ちの男性が頬を染めて困惑してる。大丈夫、その子本当は女の子だから。
「おや、トラマ。相変わらず美しい」
「……フン」
途中トラマをみつけ、口説きにはいったか。
「はーヤダヤダ」
エーレも悪態をつく。はー、こうしてみると大変だな。いけ好かないやつだとは思っていたけど裏の事情を知っちゃうとね。
「いつものペランちゃんならグチグチ言うのになんだかお優しいわね。もしかしてなにか弱みでも握られてる?」
「それはない」
実際は俺が握っているんだがな。




