築城1
壁の向こうに滞在してからもう1年が経とうとしている・・・この一年間の間でいろんな出会いがあり俺を人間的に成長させてくれた・・・身長もここに来たときは百七十ぐらいしかなかったが、あと少しで百八十ぐらいになる・・・けど俺よりエレイアの方が年上で魔族なので、彼女の方が身長が大きくて男として少し悔しいところがある・・・彼女はあまり俺の身長を気にしてないみたいだが…俺が気にしているのを察して少し離れて歩いてくれる……けど逆にそれが嫌なんだよな・・・俺もこれから体を鍛えてもっと大きくなって、彼女のことを守れる男になろう……そしてこの前、俺達の仲間に加わったケンタウロス達は長くこの土地で暮らしてきたので、俺達が知らないような魔物や魔族の知識や、この大地の詳しい構造などを教えてくれている・・・そして俺達はこれから本格的な城をこの地に建設しようとしていた・・・今までは木や石を適当に積み上げてきた野戦築城で魔物や魔族の進行を抑えてきたが・・・そろそろここも、限界を迎えようとしていた……俺達は物資の運搬を安全に行うためのルートを探さなければならない……俺達はケンタウロス達と城を作るための物資の安全な運搬ルートを話し合っていた・・・。
(俺達はできるだけ、周りを川や山などで囲まれた場所に城を築城したいんだが・・・そうなってくると城を建てれる場所も限られてくるし・・・俺が知る限りではここからかなり離れたところにまで物資を運ぶことになってしまう・・・エレイアとオスロットは何か案はないか?)
(物資を運ぶとなっても…ここを建設したときみたいに私達のことを妨害してくるはずよ……もし築城の途中であいつらに襲撃されたら対応できないわ・・・私はできるだけあいつらにバレないようにするために霧が濃い日か吹雪の日に物資を運搬するべきだと思う・・・)
(けどなー…君達魔族は吹雪とかにある程度耐えれるかもしれないけど・・・俺達人間がそんな日に物資を運搬してたら死者が出てしまう……それに霧が濃い日に物資を運搬したいが・・・そうなると視界が悪くて川から物資の運搬ができなくなるし……俺は空からの魔法を使った物資の運搬を考えてみたんだがそれだと空を飛んでるのが一瞬でバレて魔族達に襲撃されてしまうしな…ヤバい何も思いつかん・・・)
(ここの近くにある川から物資を運搬したとして・・・その物資を使って、できるだけ早く強固な城を完成させたいとは・・・かなり無茶なことだが……私達ケンタウロスはここらに長く住んでいるから土地勘はあるが・・・ここの天気は良く荒れるからな・・・そうだ!……あの川を使えば…いやだが、あそこはかなり危険だ・・・)
(・・・オスロット…もしかして何か案があるのか?)
(いや実はな・・・魔族達がよく物資の運搬で使っている巨大な港を知っているんだ……しかし、そこは魔王軍にとってもかなり重要な拠点の一つ……簡単には港を奪えんだろう……しかし、もしその港を奪うことができれば……一気に巨大な輸送船を使った物資の運搬ができるはずだ……輸送船は魔族達が使っている鋼鉄の船を使えばいい・・・しかしあそこはドラゴンが常に空を飛んでいて私達ケンタウロスも何度が近づいたことがあるが……結果はまぁ予想通り……まずはドラゴンを殺さなければ何も進まないだろう…ドラゴンに対抗できる兵器はあるか?)
(それならこの前、王国魔法協会が送ってきた魔法兵器がいくつかある……だがドラゴンの種類によるよな・・・ドラゴンってのは普通空を飛びながら移動するが、その分膨大なエネルギーを使う……だからよく寝ていることが多いんだが……あいつらの魔力感知は尋常じゃないからな……不意打ちも無理だと思うんだが……いやけどあいつらは視力が悪いはず……いや……ドラゴンの数が一匹以上だとしたらマズいな・・・その魔族の港にはどれぐらいの数のドラゴンが空を飛んでるんだ・・・)
(おそらく三匹はいるはず・・・ドラゴンは繁殖力があまり高くないのがせめてもの救いだ…もしあんなのが大勢いたら今頃この世界は滅んでいるだろう・・・)
(三匹か・・・一匹でもかなり強い奴を三匹か・・・そういえば、この前俺がドラゴンに襲われてた時にドラゴンに向かって打った弓矢・・・ドラゴンは毒は効かないはずだが……あれはどんな弓矢を使ったんだ?・・・)
(あれは…私達ケンタウロスの間で代々作られている’’魔法矢’’の一つ……魔法の属性を練りこんだ強力な弓矢だ・・・だがあれはそんなに量産できるものではないぞ・・・ドラゴンに効くような’’魔法矢’’となると魔法使い一人の魔力を完全に使い切るぐらいじゃないとな・・・ただあれもドラゴンを多少怯ませただけで…あの時は本当に運がよかったんだ)
(・・・いや……なぁホウサンズ・・・王国魔法協会から連射ができる’’バリスタ’’が送られてたよな)
(あぁ・・・だがあのバリスタは反動が強すぎて人間じゃ扱えないだろ・・・それに相手に命中させるのがかなり難しいぞ)
(いや・・・俺達にはケンタウロスがいる・・・彼らならあのバリスタをコントロールできるはず)
(バリスタとはなんだ・・・私達は弓しか使ったことが無いぞ・・・)
(構造は少し違うが・・・弓の名手の君達ならすぐにコントロールできるはず……ホウサンズ!…魔法使いを集めて’’魔法弓’’の製造に取り掛かってくれ・・・魔王軍の港を襲撃する時までにありったけ作ってくれ・・・オスロット達は俺達がバリスタの使い方を教える・・・現状魔王軍の港をできるだけ破壊せずに奪うにはこれしかない・・・派手な戦いで港を壊しすぎたら俺達がつかえなくなるからな……)
そして俺達は作戦のための準備をすることになった・・・ホウサンズと魔法使い達は自身の魔力を一つの矢に全て込めた・・・生産効率は最悪だが…ドラゴンに効く’’魔法矢’’を作るには現状これしかない…そして俺の読み通り…ケンタウロス達はすぐにバリスタの使い方をマスターした……人間よりもはるかに高い筋力と正確な射撃センスはバリスタとの相性がぴったりだった……そしてエレイアは魔族として先に港に潜り込んで情報の収集に取り掛かっていた・・・作戦を考えた日から二十日ほど経ってエレイアが港から帰ってきた・・・エレイアの情報によると現在はかなり守りが強化されているらしく……魔族達はざっと一万ほど…そしてドラゴンは七体に増えていたらしい・・・だが二十日という長い期間の間に十分な魔力矢を作ることに成功した・・・そして、それとは別に新たに俺が王国魔法協会に依頼していた’’特殊魔法兵器’’が新たに’’二体’’送られてきた・・・その魔法兵器とは、この前の殺したドラゴンをサンプルとして送った時に、ドラゴンの細胞を使って作られた強力な’’特殊魔法生物兵器’’の二体・・・まだ幼体だがすでに凄まじい程の力を持っており……王国魔法協会は作ったのはいいがコントロールができないので、俺に戦闘で実際に使ってもらい、データを元に新たな個体を作るらしい……そしてコントロールするには、俺の魔法で操る特殊な’’生物用鎧’’を付けさせなければならない……こいつらを実践に投入するのが楽しみだ・・・。
そしてとうとう作戦を開始する時が来た・・・俺は新しい’’特殊魔法生物兵器’’二体を港の近くの山に隠しておいた・・・使う時が来た時に発動条件を指定した俺のトラップ魔法から転移してすぐに戦場に投入できるようにしておいた・・・そして俺以外のケンタウロス達やホウサンズや兵士はバリスタの準備をしていた……バリスタを馬車に乗せれるように俺が改造した……このバリスタを引っ張るケンタウロスとバリスタに乗ってドラゴンを打つケンタウロスで役割分担して移動式バリスタを完成させた……こう見えて俺は手先がかなり器用なので昔から自分で狩りの道具や武器などを自作していた・・・そして全員の準備が整ったので作戦を決行する合図を出した・・・。
(・・・ホウサンズ…頼んだぜ!)
(あぁ・・・この戦いに勝って勢いをつけよう!)
そしてホウサンズは魔法の詠唱を始めた……ホウサンズの役割はドラゴンを挑発してバリスタの射程距離までドラゴンをおびき寄せることだ・・・危険な仕事だが、高速で空を飛べるホウサンズにしかできないことだ・・・。
(漆黒なる翼よ・・・太陽を隠す巨大な翼よ・・・偉大なる空の王者よ・・・我に翼の加護を与えよ)
(・・・グーデル・ベルセ《太陽を隠す空の幻獣》・・・)
魔法を詠唱した瞬間にホウサンズは空の幻獣に姿を変えて一瞬で空に飛んで行った・・・あとはホウサンズがドラゴンを連れてくるのを待つだけだ・・・。
(・・・いたな……数が七体に増えているのはエレイアの情報通り……まずはあそこにいる一匹から連れていくか・・・)
そして少し時間が経ち・・・予定通りホウサンズがドラゴンを連れて来た・・・俺は兵士たちに全ての兵器をいつでも打てるように合図した・・・。
(お前ら!・・・バリスタと魔法兵器を展開しろ!……ギリギリまで引き寄せて集中砲火でドラゴンを殺す・・・俺が合図するまでに絶対に打つな!・・・・・・まだだ・・・・・・まだ・・・あと少し・・・打てぇぇぇ!!!)
ドラゴンがこちらに近づいてきて、ギリギリでホウサンズがドラゴンの前から逃げた瞬間に一斉に集中砲火を行った・・・大量の’’魔法矢’’を連射するバリスタ……大砲……魔法兵器……あらゆる兵器がドラゴンの体に穴を開けた・・・ドラゴンは翼に穴が開いて地面に落ちた…ボロボロの体を何とか動かそうとするが俺がドラゴンの首にナイフを入れて殺した・・・そしてホウサンズは再びドラゴンをおびき寄せに行った……この作戦のポイントはドラゴンを一体ずつ連れてくること……流石に何匹もは一度に相手にできないのでドラゴンが一匹で突っ込んできたときに空中で大ダメージを与える……もしそれでも生きていたら俺がとどめを刺す・・・この作戦を三回ほど行いドラゴンを三匹殺した……だがまだドラゴンはあと四匹いる四匹目を殺した時に作戦の第二フェーズに入る・・・。
(・・・来たぞ・・・まだだ・・・まだだ・・・うてぇぇぇぇ!!!)
大量の兵器による集中砲火により四匹目のドラゴンを殺した・・・ホウサンズはちょうど魔力量が完全に尽きてその場に倒れた・・・後は俺の仕事だ……ホウサンズを先に送り返して俺と精鋭の兵士達と、ケンタウロス達の少人数で港のすぐ近くの山まで近づいた・・・ここからは港にいる見張りの魔族を、俺と兵士達で足止めしながらケンタウロスの遠距離攻撃で魔族達を壊滅させなければならない・・・しかしドラゴンがまだ三匹、港の上空を飛んでいる・・・俺と俺が選抜した精鋭の兵士達だけで、敵の魔力探知に引っ掛からないように行動できる数名で港に侵入した…。
(俺があの船を燃やして騒ぎを起こす・・・お前達はその騒ぎに便乗して魔族達を暗殺していってくれないか・・・)
(わかりました・・・くれぐれも無理はしないように・・・)
俺は自身の魔力を完全に消してゆっくりと港に停泊している船に近づく・・・この船だけは木造船なのでよく燃えるだろう・・・そして船に乗り込むことに成功した…船の中に物資を置いておく場所があったので、そこに入った……中には大量の食糧……主に小麦が積まれていた……俺は魔法を使うとバレてしまうので、船に積まれていた小麦粉をばらまいて火炎瓶を物資保管室に投げた・・・すると船は大爆発を起こしてたちまち港は大混乱を起こした・・・俺は爆発の衝撃で外に投げ飛ばされたが巨大な川に落ちたので魔族達にバレることは無かった・・・そして俺は兵士たちに合図を出した・・・。
(合図だ……行くぞ…作戦開始だ)
魔族達は燃える船に気を取られている・・・しかしそれは俺達にとってはチャンスだ・・・兵士たちは魔族達のスキを逃さずに持っていたナイフや剣で次々と殺していった・・・遠距離からはケンタウロス達が弓矢で援護射撃を行っている……魔族達は予想外の出来事の連続で何が起きたのかわかっていないのか……兵士たちを攻撃するのに時間がかかった…だがもう遅い…作戦は成功した……かなりの魔族を殺した・・・しかしまだあいつが残っている・・・ドラゴンだ…あの三匹をどうするかはすでに決めてある・・・俺は魔族と兵士の戦闘に入って行って、殺した魔族達を魔力を完全に隠すことができる’’リアンケ・リアモズ(死者の冒涜)で自身の姿に変化させて、混乱をどんどん大きくしていった……そしてほとんどの魔族を殺し切ったところで…俺は兵士たちを避難させた・・・そして俺はわざと大きな爆発に自身の膨大な魔力を混ぜて大気中に魔力を分散させた・・・するとドラゴンは俺の魔力を感知して空から高速で急降下して来た・・・俺は自分の人形をいろんな方向に走らせて…ドラゴンを分散させた・・・予想通りドラゴンは俺の分身を一瞬で殺した……しかし分身に気を取られている間に、先に人形たちに仕掛けさせておいたトラップ魔法を発動させた・・・一体目の特殊魔法兵器は俺がよく使っている腕の関節が三本ある湾曲した剣を持つ’’美しい青の鎧の兵士’’……この’’魔法兵器’’……最近分かったことだが…かなり’’知能’’が高い……俺の命令にはかなり忠実に動いてくれる……人型だからだろうか……俺はこの’’特殊魔法兵器’’に魔力コントロールを徹底的に教えて魔力の消費を抑えることに成功した……まだ改善の余地はあるが、この戦闘が終わった後にフィテモンセ魔法学校で’’特殊魔法兵器’’の研究を行い、さらに強化をしようと思う……そして俺の’’特殊魔法兵器’’の’’美しい青の鎧の兵士’’は変則的な動きでドラゴンの翼を切断し、落下したドラゴンに至近距離で大砲を打ち込み怯ませて一瞬で首を切断した・・・だがあと二体残っている……そして残りの二体のドラゴンは俺の人形を全て殺したのか……俺の方に向かって来た・・・そしてここで俺は最初に港の近くの山に設置していたトラップ魔法から檻を転移させてきた…そして俺はその檻を開けた・・・すると人工的に作られた’’特殊魔法生物兵器’’が二体出現した・・・一体は少し短い前足に長い後ろ足で立っている二足歩行……バジリスクのようなトカゲのような鱗……そして爬虫類のトサカのようだが薄い皮膜のようなものに鋭い棘が大量に生え、顔の周りを覆ったデザイン……そして尻尾からは巨大な毒針が生えてある、二足歩行の地上戦特化型のドラゴン・・・もう一体はドラゴンのような姿をしているが……前足がない……ドラゴンには前足が存在するがこいつにはない……つまりこいつは’’ワイバーン’’のような’’特殊魔法生物兵器’’だ・・・この二体はまだ完全に調教ができていないので’’生物用魔法鎧’’をつけて無理やりコントロールしている・・・そしてドラゴンとこの二体は睨みあっている・・・。
(・・・よし…やるか)
俺は’’美しい青い鎧’’の特殊魔法兵器に乗ってこの二体に指示を出した・・・先に行動したのはワイバーンのような特殊魔法生物兵器・・・ドラゴンに火を吐くが空を飛んでかわされる・・・しかしこいつも空を飛んでドラゴンを追いかけまわしている・・・まるで子供が無邪気に蝶を追いかけているように…あいつはドラゴンとの戦闘に楽しさを感じている・・・一応’生物用魔法鎧’’をつけてコントロールしているはずだが……全く俺の言うことを聞こうとしない・・・そしてもう一体のドラゴンも攻撃してきた……ドラゴンは赤い炎を吐いてきたが……俺の’’特殊魔法生物兵器’’がその炎を自分の口から出る’’青い超高温の炎’’で押している・・・そしてドラゴンはたまらず空を飛んで’’青い超高温の炎’’を避けるが……’’そいつ’’は自身のトサカから’’弓矢’’のような棘を発射した・・・発射した棘からは’’魔力’’を感じられ、その棘からは毒の煙が出ている・・・棘はドラゴンを完全に追尾しているかのようにドラゴンのことを追いかけて、やがてドラゴンに全弾命中した・・・ドラゴンは地面に落ちてくるが、落ちてくる瞬間に’’そいつ’’は、自身の毒棘が生えた凶悪な尾でドラゴンを突き刺した・・・やがてドラゴンは動かなくなった・・・しばらく待っていると’’ワイバーン’’のような’’特殊魔法生物兵器’’がドラゴンの死骸を咥えて帰ってきた・・・そして、そのドラゴンの死骸を俺に渡してきた・・・全然言う事を聞かないと思っていたが……俺に遊んでほしいのか無邪気にドラゴンの死骸をつついてアピールしてくる・・・俺は少しビビりながらも’’そいつ’’に近づいて頭を撫でた・・・まだ子供だから俺の命令を聞かないだけだということが分かった・・・そしてもう一体のトサカが生えた’’特殊魔法生物兵器’’はかなりクールな奴であまりドラゴンに勝利したことに喜んではいなかった・・・名前がないから少し不便だと思った俺はトサカの方を’’レックス’’……ワイバーンの方を’’コローレ’’と名付けた・・・そうだ……忘れていた…もう一体の特殊魔法兵器……こいつは鎧を着ているので’’ナイツ’’と名付けた・・・そして俺は少し考えたが、レックスとコローレはこれからのことを考えて’’生物用特殊魔法鎧’’を外して放し飼いすることにした・・・こいつらは、まだ幼体だがサイズがあるので’’レックス’’には地面に潜る能力があるので地面に潜ってもらい’’コローレ’’は空を飛んでもらうことにした…ナイツは俺の護衛として常に一緒に行動させることにした・・・港を完全に奪取して避難していた兵士達と合流して、その後に待機していたケンタウロス達と一緒に皆の場所に帰った・・・。
(お前凄かったぞ!・・・あんなバケモノ共をコントロールしてドラゴンを狩るなんて……やはり俺の目に狂いはなかった・・・)
(そりゃどーも・・・腹減ったし一旦帰ろうぜ)
俺達は全員で野戦築城に帰った・・・何名かの精鋭を港に残して港を奪われないように魔力結界を張っておいた・・・帰って皆と一緒に今回の作戦成功を祝って飲もう・・・そして今日のことをエレイアに話してあげよう・・・俺は皆と肩を組みながら上機嫌で帰った・・・。