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38.監獄への侵入者―2

 山道から人気の無い田舎道、過疎った街路、普通の(?)市街路、そして、再びクルマ通りが減少していくばかりの道を経由し、しだいしだいに誰住む者とてない土地へ。

 いやぁ、日本って案外広いよなぁ――そんなことを肌身で感じながら、なおもクルマを走らせて、

 そして、とうとう目的地。

 厳密に言うなら、その一歩(?)手前となる地が見えてくる。

 学校校門前に到着。

 生活道路どころか、そこらの街路などよか、よほどに幅広な道路――学校施設へとつながる通学路(?)と、それを両側からはさんで聳(そび)え立ってるどデカい石の門柱。

 その場所だ。

 ふつうの大学だったらすぐ傍に守衛詰め所とかありそうなもんだけど、そんな類いは何も無い。

 仮にも乙女の園の入り口なのに、セキュリティガバガバかよとか思ってしまう。

 でも、まぁね、実際面で不要だよなぁと納得もしてる。

 何故って。

 さっきも言った通りに、この校門の時点で既に人里離れてる。

 そして、これからオレが辿るのは校舎までの道、と言うより、ハッキリ山道。

 なんなら登山道だって言ってもいい。

 学校建設のために資材をはこんだ道でもあるから、幅は重機や大型トラックが楽にすれ違えるくらいにゆとりはある。

 だけど、校門のあたりはまだしも、先に進んで行くにつれ、道はうねって勾配も増す。

 でもって、道路そのものは整備してあるけれど、その両サイドはほとんど手つかず。

 なので、横方向は何も見えない。鬱(うっ)蒼(そう)と茂った丈高い樹木に視界を殺され見晴らし最悪。

 目に映るものと言ったら、自分の前と後ろにつづく道路と右と左の木立だけ。

 付け加えて言うなら、密に茂った樹木が陽の光をさえぎったりもするから、かなり暗かったりもする。

 場所によっては昼でも懐中電灯(ライト)がいるくらい。

 ところどころに街灯こそ設置されてはいるけれど、とてもの事、足弱な令嬢が歩(・)い(・)て(・)行き来できるような道じゃない。

 繰り返すけど、昼でも木立のざわめきや、葉擦れの音――ガサッとか音を聞いたら、男だっても悲鳴をあげて逃げるか腰を抜かすレベルのリアルお化け屋敷(?)なんだから。

 距離、勾配もさることながら、昼でもおど暗いのに、夜ともなれば、冗談抜きで怪異あやかしの類いがうろついてるって言われても、ウンウン、絶対そうだよねって誰もがうなずいてくること間違いナシ。

 不気味きわまる圧倒的な『自然』が、生身を剥き出しにしてる自分にのしかかってくるんだ。

 オレをふくめて深層の令嬢たちに、そこを歩きで踏破するだなんて行為は絶対に無理と断言できる。

――と、まぁ、そんな道が頂上部に建つ校舎まで延々つづいてるワケ。

 ま、クルマがあれば、大して関係ないんだけどな。

 だから、

「うひょひょひょひょ……ッ!」

 オレは、アクセルペダルを時にベタ踏みにして、基本のぼり、時にフラット、所によっては下ったりもする道をかっとんでいる。

 気分は完全にサーキット。

 校門までの街路とちがい、完全に他のクルマの存在を気にしなくていい。

 トロくさい前走車もいなけりゃ、コーナリング途中で突然姿をあらわす対向車も無い。

 木立の奥から熊とか鹿が出てくる可能性はないじゃないけど、まぁ、向こうも野生の生き物――爆音をたてて疾走しているクルマにすすんで向かってきたり、トロくさくも逃げ遅れたりは、(多分)しないだろ。

 なにせ、熊よけの鈴どころじゃないレベルの音を轟かせつづけているんだから。

 それに、いずれアニマルガードとか付けたりしても、このクルマじゃそれで安心安全とはならないだろうしな。

 だから、そんな心配は、それはもう杞憂と割り切るしかない。

 そんな無用な心配にリソースを割くより、今は運転にこそ集中すべき時。

 その判断に間違いはない(筈)。


 ひたすらアクセルワーク、シフト操作に集中し、ステアリングの切り角のみに注力する。

 ブラインドばかりのコーナーへの進入と脱出。

 次のコーナーに最適角で向かうライン取りのみで頭をいっぱいにして、時にタイヤをすべらせ、車体を軋(きし)ませ、ぶッ太(と)いトルクに身体がシートに押しつけられしながら駆け抜けていく。

 心の底から生きてるって感じ。

 オレ、いま風になってる……!

 まっこと、コレがスポーツカーに乗るってことだぜよ。

「ぅわははは……ッ!」と、止まらぬ笑い声をバラ撒きながら、オレは、『脱走不能』という我が校金看板の通学路(?)を走り続けていったのだった……。


 そうして、

『百花大学自動車運転技術向上習得同好会、実践場』という文字、それから、その在処(ありか)を示す左を指した矢印――それらが描かれてある道路標識に従い、道路の分岐を左へ曲がる。

 説明の必要もないだろうけど、今の標識中の『百花大学自動車運転技術向上習得同好会』って長ったらしいのが、つまりは、『MRレディース』――その正式名称ってことになる。

 学校側にサークルの設立を認めさせるには、その活動内容と設立理念、それから、サークルの名前が必要で、普通に『自動車部』だとか、お洒落な『MRレディー』じゃ通らないかもって懸念があった。

 それで、姑息(こそく)と思いはしたけど、頭の中まで化石化してそうなエラいさんたち受けをねらって味気ない名前をでっち上げた。

 味気ないし、何より長くて舌を噛みそうだから、オレたち同好会員の誰ひとりとしてその名を口にはしないんだけどな。

 ま、それはともかく、

 校舎へとつづく通学路(?)から別れて伸びるこの道――左折して入ったこの道は、先にも言ったが、元をただせば学校建設の際に資材やら何やらを置いてた場所へとつづく道。

 でもって、その他、建設工事にたずさわった作業員さんたちの仮設宿舎や工事作業の現場事務所とか、そうした場所につながっている分岐や道は他にも何カ所か存在してる。

 今ではそのほとんどが空き地になってるワケだけど、そのうちの一つをオレたちはサークルの活動用につかうことを学校側から許可されているワケだ。


『百花大学自動車運転技術向上習得同好会、実践場』


 つまりは自前のサーキットとして。

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