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第六十一話 頭蓋骨砕いて脳みそかき回してやろうか

説明資料の配布や先行しての鍵開けなど割と連携が大事な仕事をこなし昼。

 これを食べたらまた午後の部が残っている。

 そして、目の前には豪勢なお弁当が並べられていた。


「お邪魔してるお礼? お詫び? デス!」

「定型文として、邪魔してるという認識があるなら家で待ってろ」

「えへ?」


 知らない人が多いからと愛想をこれでもかと振りまくアメ。それがこいつの処世術だろうから何も言わないしなにも思わない。


「まあまあ。僕らも元々なしでやるつもりだったからありがたいよ」

「あんまり甘やかすと堕落しますよ。こいつ」

「幼女じゃないからありえないデス」


 真顔で希望を打ち砕くところは海原と似てるな。


 昼を食べたら午後からの仕事だ。

 

「改めまして、僕が浜辺高校の生徒会長です。未だに人前に立つのは苦手ですけどね。頑張っていきたいと思います」


 たどたどしくまるで慣れていないかのように生徒会長は喋った。


「なんでもいいんです。この学校のことでなにか質問はありますか?」


 保護者は別室で保護者会。それが終わるまでの暇つぶしだろう。

 だが俺達にとっては仕事となったのだ。


「あーじゃあ先輩達になにか話題を振って貰おうか」

「んな無茶な」


 急に話を振られ、黒板とは真反対にいた俺達に視線が集まる。アルビノという物珍しいものがあれば尚更。

 視線を感じたのか海原は俺の後ろに若干隠れるようにして視線から逃れていた。


「質問なんてないんですが?」

「僕にはあるよ」


 なんだろう。燃やされる気がする。


「山田君はどっちと付き合ってるんだい?」

「いや、誰とも......」

「わたしです!」「アメデス!」

「どっちも違う」


 海原はまだ分かるがアメまでなぜここで出張ってくるのか。


「面白そうだからデスヨ?」


 こっそりと教えてもらったアメの頭の中。頭蓋骨砕いて脳みそかき回してやろうか。

 面白そうで修羅場を作るな。死ぬのは俺だ。


「誰が本当のことを言ってるんだろうねー」

「本人が否定してるのにそれ以外の選択肢ってあるんですかね」

「照れ隠しっていう線もあるしね」


 確かにアメと付き合ってるなら隠すかもしれない。

 外でも平常運転で意味をあまり理解せずに使ってる部分もある。

 横目でアメを見るとにっこり笑顔。ほっぺを引っ張るくらいは許されるだろう。


「ひゅう! いはい!」

「余計な事を口走ったからそのお仕置き。これに懲りたら余計なことは言わないことだな」


 アメのぷっくりとしたほっぺを引っ張っていると俺の夏服のワイシャツが引っ張られた。


「ん?」


 後ろ向くとこれまたほっぺをぷっくりと膨らませた海原の姿が。

 怒っているのは確実でなにに怒っているのか分からない。


「......アメさんばっかり」

「ほっぺ引っ張られたいのか? 痛いぞ」

「先輩にならいくらでも」


 少し顔を赤くし俯く海原。勘違いするからその反応やめて欲しい。


「仲いいね~。僕もそんな青春を送りたかったよ」

「なんなら変わります? 一日くらいならいいですよ」


 そして日々過労死するかもしれないという恐怖に怯えて欲しい。

 愛が重い海原と純粋変態アメとの板挟みは軽く死ねる。


「先輩がイチャコラしてるけどまあ、だいたいあんな感じだよ。特に厳しい校則とかもないし。最悪髪染めたりしなければ許されるところあるから」

「生徒指導がアレですもんね」


 欲に忠実、秩序は乱す浜辺高校の反面教師と言えばあの人しかいない。

 少しだけ話題が逸れた今がチャンス。

 俺はそのまま軌道を逸らすことにした。


「生徒指導の先生は結構ルーズだがこの学校はそこまで荒れてない。なぜだと思う。誰でもいいから答えてもらえると助かる」


 俺が中学生に問いかけると生徒会長は心当たりしかないようで笑いながら困ったような表情を浮かべた。

 ま、普通に考えたら体罰として訴えられても文句は言えない。

 生徒会長から再び中学生達に視線を戻すと小さく手が上がってるのが見えた。


「なんだと思う?」

「怖い......から?」

「確かにそれもある。んじゃなにが怖いと思う」


 しばらく質疑応答を繰り返したが結局答えには辿り着かなかった。

 当然の結果だと思う。だって、学校の先生が合気道と逮捕術の合わせ技で生徒を脅してるなんて考えられないだろうからな。


「といっても深くかかわらなきゃ怖くない。あの人も一応人の血を引いてるはずだから」


 もしかしたらナマケモノと鬼のハーフかもしれない。

 話がそれなりに逸れてきたら場を返そう。俺は脇役だからな。


「それじゃあ最後に、山田龍輝君にどっちが好きか答えてもらおうか」

「なっ!?」

「特別な感情がなければ簡単だろう?」


 初対面の印象通り食えない人だ。こっちの意図を全て読んだ上で殺しに来ている。

 両面からは期待の眼差しが槍となって突き刺さる。


 今年改めて出会った俺のこと好きすぎる系後輩か。

 数年前から定期的に家に宿泊する変態系お嬢様か。


 案外答えはすぐに出た。


「海原海老名ですよ」


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