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第五十六話 可愛い行動力の化身

 ライフセーバー室に変態を迎えに行った。

 受付で変態の保護者ということを伝え、案内して貰うと鼻にティッシュを詰めたアメがベッドに身体を起こした状態でいた。


「龍!」

「お前、今度はなにしたんだよ」

「鼻血!」


 元気いっぱいに鼻に詰めたティッシュを見せるアメ。

 可愛いお顔が二つのティッシュによって台無しに。だがそのブサイクアイテムの妨害に負けないくらいの可愛さが見えるのが腹立つ。


「なんで鼻血出した」

「幼女が可愛い過ぎるのがイケマセン。血圧が上がりましタ!」

「いけないのはお前の脳内だ馬鹿野郎......」


 もし頭でも打ったらアメの両親になんて説明すればいいんだよ。

 幼女抱えて興奮して鼻血出しましたって報告すればいいのか? 向こうの解釈によっては物理的に俺の首がないなるぞ。


「すいません......」


 後ろから声をかけられ一瞬辺りをキョロキョロとするが俺とアメ以外に人はいない。


「うちの子が遊んでる時に倒れたものだからなにかしたのかと気になって」


 そういうお母さんと手を繋ぐのは小学校に上がったかくらいの女の子。

 なにかしたのかと不安そうな顔で辺りをキョロキョロと見渡している姿はとても可哀そう。なにも悪くないのに。


「大丈夫ですよ。彼女、元々貧血気味で倒れやすいんです。今回もそれでしょう」


 貧血どころか少し血の気が多いから抜いてもらった方が良いレベル。

 今回ので少し血が抜けたか。


「そうですか? ほら、由利。お姉ちゃんにありがとうは」

「あ、ありがとう?」


 戸惑いながらもちゃんとお礼が言えるいい子。どうかそのまま純粋に育ってくれ。


「また遊びまショウ!」


 こんな変態にだけはならないで欲しい。今もこいつ幼女の水着姿見てティッシュに血が滲んだからな。

 親子が去って行って残ったのは俺とアメ。


「あれからずっと浅瀬プールに居たのか?」

「モチロン! 今度、温泉に行きまショウ?」

「ダメ」


 俺はにこやかに答えた。

 プールで水着という環境で鼻血出して倒れる奴が温泉なんて裸の付き合いをしたら死ぬぞ。出血多量で。


「もう遅いデス!」

「お前っ!」


 窓の外から手が伸びてアメが持っていた紙切れを持ち去っていった。

 おそらく温泉に行く的な計画を書いたものだろう。お嬢様のわがままに付き合うSPの方々も大変だな。


「龍だって、ハニーの裸見れたら嬉しいでショウ?」

「別に。もう既に見て......っ!?」


 なにを口走った俺は!? 慌てて口を塞ぐがもう遅い。

 愉快そうに曲がるアメの目は過去、俺が海に行くことになった時と同じ目。

 相手の弱みを握った時の目だ。


「行きまショウ? ネ?」


 逃げ道は......なさそうだ。

 黙秘も否定も、勿論肯定も全てバッドエンド。対お嬢様のスキルを持っている人がいたら是非とも教えて欲しい。


「......分かった。分かったから絶対に柚子には言うな。面白がるから」

「了解デス!」


 俺が懇願するといつもの天真爛漫なアメに戻っていた。

 どうもこいつ相手だと警戒がしにくい。


「鼻血治まったら昼にするぞ。海原も待ってる」

「ヤキソバが食べたいデスヨ! あ、たこ焼きも食べたいデス!」

「どっちかにしとけ」

「皆で食べまショウ! そうすれば食べられマス!」


 鼻にティッシュを詰めたままアメが俺の横に並んだ。

 世界を相手に戦えるほどのお嬢様が大衆施設で大喜び。安上りなお嬢様だこと。

 ま、それで問題を起こさなければ最高なんだが。


「風呂に行くのはいいが、雅樹も連れて行くからな」

「OKデス! 人数は多い方がいいデス! 鈴音も連れて行きますカラ!」


 結局今年もこいつに振り回されるのか。去年は海でナンパし今年は温泉で幼女ハントかよ。いっそのこと警察に捕まってしまえばいい。

 すぐ釈放されるだろうけど。ライア家の権力によって。

 取り敢えず、海原だけはこいつの魔の手から死守しなければ。


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