表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/200

第五十話 スゥーハァ~。あ~最高......

夏休みに入って変わることと言えば朝早く起きる必要がなくなる。と思っていたい。


「先輩! 助けてください!」


 ドタバタと階段を駆け上がる音で起こされ時間を確認。結果朝の七時。

 突入してきた二人にあくびをしながら文句を言った。


「お前ら今何時だと思ってんだよ。夏休みくらい大人しく出来ないのか......ふぁ」

「だって朝からこの変態が! わたしのベッドに忍び込んで来たんですよ!」

「幼女成分を補充しないとアメは動けまセン! ハニーも龍の成分が必要でしょウ?」


 なにやら朝から未知の成分について議論中。嫌な顔をしていた海原も顎に手を当ててしっかり考えている。これほどまでに馬鹿馬鹿しい時間の使い方ってないと思うけどな。


「確かに一理ありますね」

「それでいいのかお前は」

「ならば! アメが補充するのも不思議じゃないデス!」

「では......」


 海原は俺の背中に隠れている状態から更に俺に密着をした。暑い。出来れば今すぐに離れて欲しい。

 一応エアコンは時間指定でつくようにはしてあるがそれでも人と密着すれば暑い。

 海原が密着したその後ろからアメがくっついた。

 かなり今更だが薄着の海原の胸の感触がダイレクトにくる。まあ、寝ぼけた頭じゃそう考えるのが精一杯。


「アメさん.....大きいですね......」

「海原? 爪、食い込んでる。俺に」

「すいません。巨乳を全て削ぎ落したいという願望が」


 アメと鈴音さんは今すぐに逃げた方がいい。

 エアコンがゴーゴーっと全力で働いてくれてはいるが俺の背中の温度は上がり続けるばかり。

 俺とアメの間にいる海原はもっと暑いだろうに。


「先輩の匂い......スゥーハァ~。あ~最高......」

「幼女の匂い......スゥーハァ~。あ~最高......デス」


 なんだこいつら。あんだけギャアギャア騒いでたのに結果仲いいじゃないの。結構。それに俺を巻き込むな。二人で仲良く女子トークでもしててくれ。


「もういいだろ。暑い」

「明日もください!」

「......明日な」


 今完全に脊髄で喋ったな。ちゃんと脳使わないと。起きろ理性。

 寝ぼけた頭を覚ますために洗面所で顔を洗った。


「龍!」

「扉は優しく開けろ。外れる」


 引き戸は押し戸よりデリケートなんだ。レールが壊れたらおしまいだからな。


「んで、なに」


 アメはエメラルド色の目を輝かせて俺に詰め寄ってきた。幼女以外に興味を示すなんて珍しい。


「ハニーを孕ませてくだサイ!」

「顔面か顔面。どっちにパンチが欲しい?」


 どうやらアメも寝ぼけているようだ。早急に覚まさなければ。頭をな。


「ハニーが嫌ならアメでもいいデス! ハニーと一緒に子育てがしたいんデス!」

「ふざけんな。お前に責任が......取れるよなぁ」


 アメはニコっと歯を見せて笑った。

 こいつは海外に拠点を構える超大型企業の社長令嬢。アメのお小遣いだけで人間を一週間働かせて給料として余裕で払えるだけの額は貰っているのを俺は知っている。

 そしてアメに甘々なアメの両親のことだ、可愛い娘のために金は惜しまないだろう。

 一般高校生と違ってアメは子供を産んだとしてもちゃんと子育て出来てしまうのだ。


「アメリア・ライアを侮るなデス!」

「お前が取れても俺が取れないの。朝から変なこと言うな」

「赤ちゃん汁くれたらいいデスヨ?」

「お前ほんとどこでその知識つけてくるの」

「エロ漫画? というところデス!」


 役に立つ知識は何一つ入ってないというのに。どうせなら少年や青年漫画で学んだ方が色々学びはある。ゆるふわな日常の素晴らしさとかな。


「とにかく。この話は十年後しよう」

「分かりましタ! 絶対デスヨ?」

「ああ。はいはい」


 アメの戯言を聞き流してリビングに向かうと気だるそうに机に突っ伏した鈴音さんの姿が。

 相変わらずの薄着で机の端からいやらしく垂れる胸はえっちの一言。

 アメの方を見ても全くの普通で目の前の大きさには興味がないようだ。


「鈴音さん。なんですかその恰好」

「これから会議なのぉ。リモートなら全身着る必要ないからね!」


 だからってショートパンツとスーツの姿は異様としか言いようがない。確かに全身映さないか効率を考えればそうだろうが。

 そして新たに疑問が浮かんだ。


「なんで自分の部屋でやらないんですか?」

「鈴音ちゃんの部屋のエアコンが壊れちゃってねぇ。今お父さんが修理してるわぁ」

「だからリビングで」

「そ! だからちょっと静かにしてもらえると助かるかな」


 自前のノートパソコンの電源をつけながら鈴音さんは言った。

 是非とも邪魔してやりたいところだが本当の仕事だし迷惑かけるのは鈴音さんだけじゃないからな。静かにしてよう。


「部屋で宿題でもするか」

「それはベストアンサー! ハニーも誘ってやりましょう!」

「そこまで広くない。自分専用なんだ」

「ならリビングでやりまショウ。静かにすれば問題はないデス!」


 こういう天真爛漫であればいいんだが、純情が不純かの二つしかないという。

 やっぱ変態だわ。こいつ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ