第四十五話 これが人生の縮図
友情崩壊人生ゲーム。番手は雅樹、海原、柚子、鈴音さん、俺という順番でゲームは進み、現在の状況は、地獄といって差し支えない状態。
雅樹は年収一千万の大企業の社長。海原は専業主婦二児の母。柚子も専業主婦。ついでに鈴音さんも専業主婦一児の母。
俺、奨学金を返しながらアルバイト生活。独身。結婚経験はなし。
「はぁ......現実の縮図みたいだな。イケメン若手社長はモテて、苦学生の俺は出会いがない。リアルで楽しいな!」
俺がどんなに場を盛り上げようとしても他からは一切楽しそうな声が上がらない。
いつもならからかうであろう鈴音さんも気まずそうにそっぽを向くだけで声を出そうともしない。
「龍輝お前......こうなるって分かってただろ」
「プレイ済みなんだから当たり前だろ。じゃなかったらわざわざ一番最後に名乗り出る必要もない」
「離婚マスぅ......」
雅樹がどんなにハーレムで子供も三人いるとしても家庭環境は最悪の極み。一番愛し合っていない妻との間に子供が二人も出来、相思相愛の妻との間には子供が出来ないという『愛』というものを嘲笑うかのような結果。
ま、苦学生の俺には関係のはない話ではあるが。
「オレか......二。一番妻との間に子供が出来......ごめんね。謝るからそのフォークは置いて欲しいな」
「先輩! 本当に離婚マスってないんですか!」
「あるぞ」
「どこに! ゲームはもう終盤頃だっていうのに誰も止まりませんでしたよ!?」
「離婚マスは今俺が進む、『苦労人ルート』にしか存在しないんだ。えーたしか奨学金が返せないから振られるんじゃなかったっけか? ま、雅樹には無縁な話だよな」
今日一番の笑顔を向けると雅樹と柚子からは中指が立てられ、海原からは鋭い眼光を貰ったがそれを承知でこのゲームを始めた。
だがここで奇跡が起きた。
「俺の番だな。四。えーっと『友人の不倫現場を目撃。告発で離婚させる事が可能。告発しない場合、賄賂としてルーレットの目を毎周貰う」
そうだった。友情崩壊の人生ゲーム。ハーレムでウハウハな友人を独身という孤独のどん底に突き落とすマスだってあってもおかしくないか。ゴール手前でこの仕打ちとは、この人生ゲームの制作者いい性格してるよ。
俺が読み上げると全員の顔に覇気が戻ってきた。
「先輩! ここは告発すべきです! 不倫なんて最低な行為。そんな最低男の手元にこんな可愛い後輩を置いておいていいんですか!? 先輩!」
「この離婚って全員?」
「そうだろうな」
「だったらダメ! 折角結婚できたんだから!」
ゲームの話なのに二人とも必死で面白い。
そして今、俺は試されている。同居同然の後輩のお願いを聞くか、生まれながらの幼馴染のお願いを聞くか。
聞かなかった方の好感度はがた落ちで下手すれば刺されてもおかしくはない。
「ここはルーレットで......」
「龍輝くんのいいところ見てみたなーお姉さんは」
「知ったことか。命がかかってんだ」
「どのみち銃口は龍輝くんだと思うけど?」
さっきまで無心だったくせに。急に活発になりやがって。
まあ、鈴音さんの言う未来も簡単に想像できてしまう。だから俺がとりたい行動を取ることにした。
「雅樹。悪いな。告発しまーす」
雅樹の車からピンク色の棒を抜いていく。
海原の頬をピンク色に染まり、柚子の顔は怖くて見れていないが圧は感じる。
「絶対許さない」
隣から怨嗟交じりの言葉が聞こえたが俺はこの瞬間だけ聴覚を失った。何も聞いてない。
雅樹の車からピンクの棒を全て抜き、同じマスに置いた。
「まあまあ、柚子先輩? 愛の力さえあればまた結婚することだって可能ですよ? もちろん、リアルでも同じです。数えてみたところ結婚マスは全部で五個。マス目感覚はバラバラですが愛さえあれば!」
「愛さえあれば......絶対に止まってやる」
なに? 新手の新興宗教? 目がマジで怖いんだけど。
「先輩方も脂肪も愛さえあればなんでも手に入ります。好きな人、好きな物。手に入れたくはないですか? 特に龍輝先輩! 今ならこの可愛い後輩が貴方の彼女に!」
「いらねぇよ」
「ご要望とあらばどんなコスチュームだって......」
「お姉さんナースが見たーい!」
「脂肪は黙ってろ」
胡散臭い新興宗教と関わりたくないというごく一般的な考えなんだが。
「次は二......ならこの強さ? いや少し強い? でも弱いと一で止まるから......」
本気で二を出そうと脳内で強さ別にシュミレート。
ここまでやってもお互い告白まで行かないんだから不思議だ。
「二、来い! 来い来い......しゃおら! 勝ち取ったり! 二!」
「それが愛の力です」
「ありがとう。龍輝は絶対許さないけど愛教には入信します」
柚子との友情は崩壊したがまた新たに『愛教』という愛に飢えた教団が立ち上がった。
あとで柚子にはちゃんと謝っておこう。友情崩壊したままでいいのは友達までだ。
やっぱりこれはあの金髪馬鹿がいないと張り合いがない。
あのどん底からどうにかして這い上がろうともがく人間らしさを苦学生ルートから見守るのが案外楽しいのだ。




