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第四十四話 フェティシズム

テスト勉強は大事だ。学生の仕事と言えるしやっておいて損はないと思う。

 だが詰め込みすぎは逆効果という逃げを講じつつ俺達四人が俺の家に集まった。


「おじゃましまーす」

「おじゃまー」


 柚子は入ってくるなり勝手に冷蔵庫を開け紙パックの紅茶をコップにに注いだ。


「ぷはぁー!」

「オヤジかよ。人んちの冷蔵庫勝手に開けて飲むなよ」

「今日外マジで暑いんだって! 七月入ってないのにこの暑さは異常!」


 確かに柚子や雅樹の服装は半そでにジーパンとミニスカと涼しい装い。


「だからってな」

「先輩」

「ん?」


 後ろから海原に呼ばれ振り向くとそこには真っ白な脚をなまめかしく伸ばした海原がいた。

 だいたいなにがしたいのか分かってしまうのが嫌な所。新たな性癖に目覚めそうだからやめて欲しい。


「俺は別に生足に興奮する性癖はないぞ」

「でもわたしの生足に挟まれた時はとても嬉しそうだったじゃないですか」

「そんなことない。俺はノーマルなんだ」


 脚も今となってはノーマルとなりつつあるが俺は本当に脚に興奮する変態ではない。


「龍輝は耳フェチだよな。触るの好きだろ。耳たぶとか」


 余計なことを。

 雅樹に色々喋った中学の俺、恨むぞ。

 雅樹の発言に海原は目を輝かせ、髪を耳にかけ俺の方へと傾けた。


「ではどーぞ。先輩♡」


 真っ白でしっかりと形ある耳。改めて差し出されると自然と手が伸びた。

 少し触ると。外は暑いというのにひんやりとしていて少し硬い。耳たぶはスベスベもちもちとした感触を持っていて軟骨部分より冷たかった。

 ずっと触っていられる。その感触が俺は果てしなく好きなんだ。

 ギリギリ記憶にある程度の幼き記憶には、母親の耳たぶを触りながら寝ていた記憶がある。


「はぁ......っ! あっ! はぅ! 先輩......耳がぁ......」

「......」

「龍輝......あんたいつから女の子の耳をそんな触るようになったの」


 柚子の声が聞こえ俺は我に返った。


「はっ! いや! これは違くて! 雅樹が振ったから触るしかないなって思っただけで!」

「龍輝くんやらし~」


 鈴音さんの追撃なんていつもは小粒の石なのに今は銃弾のように感じる。

 反撃の言葉を考えていると俺の手が持ち上げられ赤くなった耳へと当てられた。


「わたしは、先輩にならいくら触られても嫌じゃないです。よければいつもテレビ見てる時も触ってくれる方が安心......します」

「マジで?」


 そんなことを言われると少しだけ嬉しくなってしまう。あの感触をずっと触っていられるなんて。

 あのすべすべもちもちの感触は、梱包材のプチプチを永遠と潰していられる感覚に似ている。

 無心になれるのだ。

 お返しにと爆弾を投げつけてやろう。


「雅樹は脚フェチだよな。丁度今柚子が出してる脚くらいの」


 雅樹の場合はニーソ好きで更に絶対領域信者である。ただあまり細くない、健康的な脚にも最近目が行くようでちょいちょい柚子のスカートから見える脚を視線で追っていることがある。


「そ、そうなの? アタシの太い脚で良ければさ、触れば?」


 柚子は顔を赤くしながら雅樹に脚を見せた。

 俺の方からは見えないが雅樹視点はちょっといやらしい光景だろう。

 

「柚子の生足はもう慣れた。いつもご馳走様」

「お、お粗末様?」


 なんだこの暑苦しいバカップルは。

 柚子と雅樹だから許される会話であって、俺がクラスの女子に言ったら警察呼ばれるレベルの最低な返答。

 流石の鈴音さんもこれには眉をひそめた。


「龍輝くん。ブラックコーヒーってあったっけ?」

「豆もありますしインスタントだってありますよ」

「アイスコーヒー淹れてくる。甘すぎて砂糖吐ける」


 そういって鈴音さんがキッチンに向かった。


「そ、そういえば! 息抜きするんじゃなかったの?」

「オレもそう言われて来たけど?」

「......そうだな。始めるか」


 いちゃつきの恥ずかしさを誤魔化すように柚子が強引に本題を切り出した。

 俺は自室から二度とやらないと封印したゲームを引っ張りだしてきた。


「なにこれ」

「人生ゲームだ」

「えー『本ゲームは男女でやることを最大級に推奨します。そして滅びろ』ってめっちゃ不穏なこと書いてあるけど大丈夫なの? お姉さんあんまり怖いのは得意じゃないなー」


 鈴音さんがアイスコーヒーを片手に説明を読んだ。そうその通り。

 このゲームは男女でやることを想定して作られている。男だけ女だけでも楽しいことには楽しいが面白さを最大限発揮できるのはやはり男女でやる場合だろう。


「ホラーとかそういう類のものじゃないんで」

「先輩はこれやったことあるんですか?」

「ある。結構面白い」


 ある意味面白い。このゲームにおいては大正解な遊び方のはずだ。アレは。


「鈴音さんもやりませんか。人数は多い方がいいでしょう?」


 鈴音さんも巻き込んでリビングの机を囲んだ俺達。人生ゲームを広げてそれぞれの駒をスタート位置に置いた。

 さあて、友情崩壊人生ゲームの始まりだ。


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