9/213
涙
かつて年末の風物詩として世間の耳目を集めた歌番組が職場にやってきて、既に十余年が経過しました。初回よりほぼ皆勤賞で携わってきた筆者ですが、一回だけ別の現場に携わっていた年がありました。
ソーントン・ワイルダーの手による極めて暴力的なハートフル・コメディ“わが町”。稽古場で年末を過ごしていた筆者は、年内最後の通し稽古のため、リハ室の片隅に腰を下ろしていました。
終盤にさしかかり、舞台監督役の俳優さんが台本最後のページにさしかかります。普段テレビ等で妙な配色のサイコロを転がされているイメージの強い方ですが、この日は台詞につまり、涙を流されておいででした。
普段は怜悧なダメ出しで俳優を文字通り斬りまくる演出家の方も、演劇界を代表する俳優陣も、気心知れたスタッフ勢も、総勢40名程度が揃って涙を流しました。今これを書いている筆者などは今これを書きながら鼻水がとまらないほどです。
ソーントン・ワイルダー。ほんとうに恐ろしい子です。みなさんもどうかどうかお気をつけくださいませ。