表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/92

一益

1556年 2月 


 土岐頼芸殿が暗殺されたとの報告は、私の耳にも届いた。頼芸殿には鷹の絵について幾らかの講釈を受けたことがあった、彼の描く見事な鷹の絵やその技術が失われたはとても残念なことだ。名門といえどその内側より蝕まれ、滅びるときは骨すら残らない。



 土岐頼芸殿だけでなくその子供も磔となり殺される。仕方がないこととは言え、戦国の世の無情さを感じるものだ。自分やその子供たちが磔や見せしめとして殺されない様に確固たる勢力を築き、無事に受け渡したいものだ。



 父義賢は、表向き斎藤討伐の意思を強いものとしてる。祖母慈寿院には、斎藤義龍や利政の首を持ってくるとは言っていたようだが、東ばかり目を向けていると、今度は西の三好に背後を突かれることとなる。その本心は、斎藤を分裂している状態に固定したいのだろう。


 今現在三好は播磨攻略に集中しているが、それが落ち着けば近江に手を出そうとするだろう。堺を始めとする商業の先進地域からの莫大な銭によって支えられた軍事力、松永久秀などの有能な家臣団これらを纏めあげる英主三好長慶。早く病でこの世から退場して欲しいものだ。



 それに対して近江国内にもまだまだ、自立的な国衆が数多くいる。完全に統制しているとはいいがたい。湖北は、我が弟が養子に入る京極家と浅井家を通して支配することとなるだろうが、湖西においては幕府に直接従う御家人が多い。彼らを臣従させ抑圧し、当主の力をより増大させなければならない。



 そうは言いながらも、父から家督を譲られるまでは大人しく政務の引き継ぎを受けている。わざわざ、当主となる前から怪しい動きをして、家臣達の不安を煽るのは宜しくない。



 蒲生や後藤等の譜代の家臣も大事だが、後ろ盾のない他国の人間や小領主の次男、三男も大事だ。織田信長が馬廻り等に次男、三男を取り立ててた気持ちがよくわかる。



 小領主の次男、三男・優秀な家臣といえばとある人物を思い出した。新井白石は藩翰譜において滝川一益は六角家に仕えていたが罪をこうむって出奔し織田信長に仕えたと書いていたが、これは本当の事なのだろうか。滝川一益の出自には色々説があるが産まれた場所は甲賀郡だと考えられている。これは千代を呼び出して尋ねて見るしかない。



 「滝川一益……。俺も甲賀の国人について隅から隅まで全部知っている訳じゃないんだが……記憶が正しければ二代か三代前に甲賀に移ってきた一族に滝川ってのがいる。滝川は、知っている限りじゃその一家だけだ。」



 「その滝川家は、伴氏の末裔とか言ってなかったかい。」



 「言ってたような気もするし、言ってないような気もする。大体今どきの国衆の家系図なんか、お前らみたいな名家以外どいつもこいつも仮冒だらけで本当の事なんか分からん。そもそも何で俺に聞くんだよ。滝川ならお前の親父に仕えているだろ。そいつを捕まえて話を聞けよ。」



 千代曰くどうやら滝川一益本人かどうか分からないが、滝川一族の者が仕えているようだ。良いことを知った。早速、呼び出してみよう。



 「若君、この滝川一勝およばれして参上しました。此度は何用でありますか。」



 「今回聞きたいのは、其方の次男のことでな。」



 そういうと、一勝の顔が青くなる。何かまずいことを言ってしまったのだろうか。



 「若君、一益の愚か者が何か粗相を致したのでしょうか。もしそうなら、あ奴をすぐに放逐いたします。不良息子とはいえこの一勝の大事な息子にございます。なので命だけは。」



 まだ何も言ってないのに、早合点をされてしまった。そんなに滝川一益は不行跡を重ねているのだろうか。詳しく話を聞いてみると、一益は博打を好み色々な問題を起こしているようだ。そして先の斎藤との戦で鉄砲を使い大いに活躍したことを鼻にかけその素行はますます悪化しているとのことだ。このままでは、何か取り返しのつかないやらかしをしてしまうかもしてないので追放を考えているとのことだ。



 「なるほど。一勝よ、一益をこの忠定に預けてみんか。話を聞いてみると、自らの才を認められないが故に傾いているように見える。」



 「若君、お言葉ですが我らも何とかしようと手を尽くして、あの有様です故。手の施しようがないかと。」



 渋る一勝を何とか説得してこの場に一益を呼びよせる。若君にお見せできるような衣装を着ていないやら、無礼な受け答えをする、由緒ある滝川家の体面を汚してしまう等と言い訳をしていたが。



 「初めてお目見え申す。忠定殿がこの滝川一益をお呼びとのことを聞きました。何用にございましょうか。」



 なんと、前田慶次のような傾奇者が来ると思ったら、しっかりとした正装に身を包んでいる。それに受け答えもしっかりとしているではないか。横にいる一勝を見ると唖然としているではないか。



 「一益、其方は鉄砲が上手いと聞いた。どれくらいのことができる。」



 「百間先の的に当てることができまする。この一益に鉄砲と三回の試射を許していただければこの場で的を射抜いてみましょう。」



 ここまで大言壮語するのだやらさせない手はない。しかし、ここは城内。弓矢ならともなく鉄砲を放つには不都合だ。後日に回そう。



 「それは、また後日に実演してもらおう。しかし、なぜ其方は親や一族がしつこく言っても衣服の乱れや言動を正さなかったと聞いている。なぜ、今この場では衣服と言動を正しているのだ。」



 「目立つためにございます。」



 「目立つとは。」



 「この一益、なかなかの才を持っておると自負しております。されど、多くの手勢を持っているわけでもなく、御屋形様につながる人脈を持っているわけでもない。己を知って貰う為、悪名は無名に勝ると考え傾奇者を演じておりました。」



 なかなかの自信を持っているようだ。確かにその才能は史実が保証してくれている。この才能を織田家に譲る義理もない。ぜひとも六角家で存分に生かしてもらおう。



 「よくわかった。一勝よ一益をこの忠定の直臣として取り立てたい。良いな。」



 あまりの豹変ぶりにずっと唖然としている滝川一勝に問う。しかし、完全に固まっているようで返事がない。まあ、息子が出世したのだ。いいえとは言わないだろう。これによって、滝川一益を千石にて召し抱えることに成功したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ( ´゜д゜)ぽかーん(笑)
せ、千石!? 更新あざす
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ