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幕間A 01

 大きな戦いがあった。


 世界を救うか、滅びるかの二択。それが常に迫られ、どちらかといえば趨勢は滅びへと傾き、全人類の肝を冷やした。


 その戦争に最終的に勝利したのは、人類だった。奇跡の連続で、怒涛の猛攻を繰り出してみせた。それがなければ人類は、この宙域からは見えない、遠い場所にある地球という星に数万という軍勢が攻め込み、数分で破壊の道を辿っていたに違いない。


 その滅びを救ったのは、宇宙を走る戦艦のクルーとされている。いや、私(・)含(・)め(・)、主戦力と数えられた6名である。今はそんな自負がある。


 ちっぽけなプライドであると卑下されようが関係ない。私はなんと言われようと主戦力と数えられたことを矜持にする。もちろん馬鹿にした奴は半殺しにする。


 さて、そんな戦争が終わって、1週間が経過した。


 ここからは私も知らない「天破のグラディオス」の最終回後の世界。


 私の名前はシーナ・サクラ。第2クールからグラディオスに関わった整備士だったが、今は転属してパイロットとして勤務している。───スピンオフで登場した三番艦、アスティオールにて。


 命そのものを削るような戦いを終え、私たちは負傷兵を収容し、連合軍本部があるコロニーへと舵を取っていた。


 先頭を行くのは、もちろん総大将であるコーネリア・デクスター。これでなおのこと彼女に箔がつき、代々優秀な軍人を輩出しているデクスター家も不動の地位を手にするだろう。


 アスティオールは鶴翼の陣にて凱旋するコーネリアの艦隊の内側で、守られるように航行していた。


 この艦隊のなかで、なによりも目を引くものがある。コーネリアの艦隊もそうだろうが、アスティオールが牽引している巨人だったものが顕著だろう。


 グラディランド。


 私と同じ、転生者たちが完成させた「天破のグラディオス」に存在しない合体艦。特殊強襲特装艦グラディオス級、一番艦グラディオス。同二番艦アリスランド。白と黒というありふれた色違いの兄弟艦である。アスティオールは三番艦で、末っ子でこそあるが、まぁ………ふたつの艦と違って、スピンオフでは全長300メートルだったところを、とあるクソが魔改造を前々から指示していたようで、なんと全長500メートルにも至る超弩級の艦になっていた。


 まぁそんな超弩級の艦だからこそ、全長500メートルとなったグラディランドを牽引できる。兄弟艦を合体させるとか、胸熱なことをしてくれやがるモブオスたちめ。兄弟が恋に落ちて禁断の行為により合体したとか、擬人化させたら絶対に薄い本になるだろうよ妄想が捗りますおいしいですデュフフフフ………。


 おっと………いかんいかん。妄想をしている場合ではない。


 近況整理はそんなところでいいだろう。


「………これでよしと」


「しーな。なにしてるの?」


「あん? ああ、これは日記だよ。半年前………よりもっと前かな。その頃から書いてたんだ」


「にっき?」


「その日、なにがあったのかを書いて記録するんだ。そうすると前にどんなことがあったのかを調べたい時、すぐに思い出せるだろ。っていっても、最近は書くこともワンパターンだし、そろそろなにか動きがあるまで書くの中断しようと思ってるんだよな」


 アスティオールのメディカルルームにて。医師のひとりにしてカウンセラーも兼任するレイシアに、採血してもらっているライラを待っている間、私は右腕の端末から半透明のモニターを起動し、音声による口頭入力ではなく、タイピングによる文章の入力をしていた。


 なにもしていない時間こそ退屈だ。私は暇というのはそこまで好きではない。もったいないし、なにかしていないとウズウズする。レイシアやライラがいなければ、今すぐにでもイラストの練習を再開したいところである。


「でも、継続は力なり、だよシーナちゃん。そういうの、今だからこそ続けることに意味があるんじゃないかな」


 ライラの採血をしているレイシアが言った。


 レイシアは最初こそただの綺麗なメスだと思って、あまり近寄らないようにしていたのだが、今ではすっかり私も彼女の妹のように扱われている。足繁く健診に通わされてしまったからか。もうなんでも相談できるようになった。


「じゃあ、らいらもにっきかく!」


 ライラはグラディオスのマスコットみたいなポジションだったが、私の知る「天破のグラディオス」の世界では凄惨な末路となるはずが、私や同胞の働きによって無傷で生還し、しかも主戦力と化した。これには胸が熱くなったね。


 彼女の正体は、この世界の敵たる、外宇宙から襲来した未知の生命体、通称アンノウンが送り込んだスパイだ。精巧に人間を模している。なんなら内臓だって。こうして血液だって流れている。人間とは違うタイプだったらしいけど。あと最近になってレイシアが言っていたのだが、人間をよりよく知ったライラは今でも劇的な成長を続けており、将来的には子供も産めるのではないか? だって。まさか子宮まで再現されているとは思わなかった。でも人間とアンノウンの子供って………色々リスクが高そうだ。ライラがもし、他のオスを愛してしまったら、私はどのような判断をするのだろう。


「いいね。じゃあ、観察日記とかはどう?」


「かんさつにっき?」


「今日、なにを見たか。どんな変化があったのか。それをイラストもつけて記録するんだよ。ライラちゃんにしかできないこともあるから。それを探してみると面白いんじゃないかな」


「うん! じゃあらいら、え(・)ー(・)す(・)をかく!」


「………そっか。そうだね。記録してあげるといいよ。ほら、採血終わり。いつもありがとうね。もう行っていいよ」


「はーい!」


 レイシアは笑顔でいたが、伏せ目がちになっていた。


 ライラは気付かなかったが、私は見えてしまった。


 ライラを解放すると、メディカルルームの奥へとピューと走っていく。この時間になるといつもそうだ。走ったら危ないと言っているが聞きやしない。よって、ルーティンと化したので、ドクターたちは苦笑しながらライラを避けることになった。


「………エース、今どこでなにしてるんでしょうね」


「………本当だよ。可愛い女の子たち放ったらかしにして、私たちも心配させて。………なんでエースくんばかり、いつもこんな目に遭うんだろうね。あの子、いつも傷付いてばかりで、ついに命の危機まで迎えて………ごめん。医者が弱気になっちゃダメだよね。ほら、シーナちゃんも行っておいで」


「はい。では」


 レイシアは涙を浮かべたが、自分を奮い立たせて指で振り払う。でも私は知っている。こういう時、夜になるとレイシアは恋人がいる部屋に向かい、泣きながら発散するのだと。


 前まではその恋人のオスが、主人公のオスとアブノーマルなカップリングになることを渇望していたが………先人なんだか後発なんだか、先にグラディオスに乗っていた狂人の転生者によって妨害されていた。私がグラディオスを見た時はすでに交際していたという。クソが。


 でも、全員生きている。


 あの狂人たるクソモブオスの所業によって。常軌を逸するというか、正気を疑うような執念で。


 私はライラを追ってメディカルルームの奥へ移動した。


 そこには間仕切りだけでなく。防護シートによって厳重に周囲から隔離された簡易な部屋があった。ライラはすでに消毒を終えたので、私もできる限りの消毒を行う。さもなくば、この空間には入れない決まりだ。


 使い捨てのビニール製のエプロンや頭巾、マスクや手袋を着用。ライラはそういうのは嫌いだし、特例で免除されていた。これには………まぁ色々と理由がある。


「よう、お前ら。やっぱここにいたか」


「あ、シーナちゃん。お疲れ様」


「お疲れさん。毎日熱心だな、お前ら」


「そういうネズミちゃんだって、ライラのお世話に熱心じゃない」


 ライラ以外の先客がいた。最早、メディカルルームの住人と化していた。仕事や食事以外はここにいる。睡眠だけは必ずひとりが展開できる小さなベッドを使って寄り添うようにしていたくらいだ。最悪、そこに3人鮨詰めになって寝ている。寝ているのに見事なバランス感覚で。


「今日からライラが、こいつの観察日記を書くんだと。私がいない時は助けてやってくれないか?」


「聞こえてましたよ。シーナさんとライラがいるからこそ、私たちも平常心でいるんです。それくらいお安い御用ですよ」


「ならよかった」


 前まではこの3人はどうしても好きになれなかったが、私もパイロット科に転属してか、打ち解けた。今では自然体で会話ができる。


 そんな近況を、腐女子であるこの私が、喜ぶとはな。


 異世界転生したあの日の私がそれを知ったら絶対に信じないだろう。


「よう………エ(・)ー(・)ス(・)。なんだか昨日よりも顔の色が薄くなってきた気がするな。幸せそうに居眠りしやがって。こっちの気も知らずになぁ」


 空間の奥。椅子に腰掛ける少年───エース・ノギに話しかける。


 当然、返答はなかった。


評価、リアクションありがとうございます!

幕間として、前作の続きをぶち込んでみました!

詳しくは前作をご覧になっていただければと思います。で、久々にシーナを書いてみたのですが………すっげぇ楽しい!

懐かしい面々が登場しましたね。幕間はまだ続きますし、これからちょくちょく書いていこうと思います。

次回の更新ですが………申し訳ありません。ストックが作れませんでしたので、明日のお昼になると思います。ご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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