21話 村人会議
オガタとステナは急いで村へ戻ると、すぐにダンの家に向かった。事情を説明して村人会議を開いてもらうことが決まり、日が沈むと会場であるダンの家にぞろぞろと人が集まっていった。
「よし、これで全員だな」
参加するのはオガタとステナの二人とダンやリン、村の青年会の中心メンバー達、そして経験の豊富そうな年配方だ。ざっと十四、五人ほどだろうか。村の人口は約三百人ということだから、ここにいる者たちにはその命の重みが掛かっている。
「なあ、ダンさん。こんなメンツで話し合いだなんて穏やかな話じゃないな。一体どうしたってんだ」
青年会の中で一番体格の大きいジンという男が今回自分たちが呼び出された理由を知りたがった。しかし、それに答えるのはオガタの役目だろう。
「それについては、私からお話しします」
オガタがそう言って立ち上がるとその場にいる皆が注目した。オガタのことは村の誰もが信用を置いているだけにすぐに話を聞く姿勢になる。
「あの、落ち着いて聞いて頂きたいのですが―――」
オガタは自分が応力集中サーチで見た光景を淡々と話した。話している途中で顔色が悪くなる者もいたが、気にせず今この村が置かれている状況について伝える。
「―――と、まあこんな訳で皆さんを集めていただきました」
「お、終わりだ」
「なんてこった」
「俺たちゃあ、いったいどうすりゃいいんだ」
「それを話し合いたいんです」
「あの......」
オガタの話を聞いたジンや青年会メンバーが混乱している中、それまで黙っていたステナが口を開いた。
「ステナ嬢ちゃんか、お前さん何か手立てがあるのか?」
「いえ、ちょっと気になってたことがあって。そもそも何故、あのクロムっていう人をオガタさんがやっつけただけで相手はヒュドラなんて連れて来たんでしょう。あの人達って領主が雇ってる私兵なんじゃないんですか?」
「そういえばそうだな」
「たしかに」
ステナの疑問はもっともだ。そして、その疑問に答えようとダンが口を開く。
「実はあのクロムって騎士は貴族の出身なんだ。数年前に中央で何やら問題を起こしたらしく、こんな辺境まで飛ばされちまったって話を聞いたことがある」
「そういうことかぁ」
村人たちは納得した様子だが、オガタには引っかかることがあった。
(問題を起こして辺境に飛ばされたのにヒュドラを用意できる伝手があるのか?)
「まぁ、いいか」
「どうしたの?」
ステナは勘が鋭い。オガタが何か考えてることを感じ取ったようだ。
「いや。とりあえず、これからのことを皆と話し合おう」
オガタがそう言うと、その場の全員がオガタに向き直った。
向けられた多くの瞳には、村を守りたいという強い意志の炎が灯されていた。




