1話 送別会終わりの......
送別会は大学の近場の居酒屋で行われた。古くからの顔馴染みや仲の良い元学生達も居たので話がはずんだ。テーブルいっぱいの料理と酒を皆で囲みながら夜が更けていった。
「今日は私の為にお集まり下さりありがとうございました」
送別会に集まってきてくれた仲間たちに挨拶を終えて私は帰路につこうとした。しかし、すぐに呼び止められた。
「最後に少しいいですか?実は見て欲しい実験装置があって」
振り向くと、顔を赤くしてほろ酔い気分の丸田だった。
「今からですか?もう遅いですし後日でも......」
自分自身もかなり酒を飲んでしまったし、すぐに帰って休憩したかった。しかし丸田は
「お願いします。どうしても今日見て欲しいんですよ!」
どうしたのだろう。少し様子がおかしい。
「分かりました。では見せてください」
「ありがとうございます! 2号館の4階ですので時間は取らせません!」
そして、私達は大学に戻るのだった。
2号館は研究室が集まった建物だが、その4階というと
「ここです」
「私の使っていた研究室ですが?」
何故彼が見せたいという実験装置が元とはいえ、私の研究室に置いてあるのだろう?
「すいません、相談もせずに勝手に設置してしまいまして」
中に入ると丸田は部屋の奥に置いてある装置を操作し始めた。
これはどこか見覚えのある装置だ。専門では無いから詳しくは知らないが確か――
「粒子加速器に似ていますね」
「流石ですね。でも実はちょっと違う
んですよ」
そう言ってからしばらくして丸田は振り返った。準備が終わったのだろう。
「こちらへどうぞ」
「何ですか?」
言われるがままに装置へ近づいて彼が指をさしている部分を見てみた。そこには信じられないものが存在していた。
「宇宙みたいでしょう」
そう言われてハッとした。一瞬何を見ているのか理解できなかった。加速器のように環状になっている装置の環の中に宇宙が広がっていた。それが本当に現実なのか判断がつかない光景だった。
「それにほら、あの星」
丸田が環の中央を指した。そこには蒼い星が浮かんでいてまるで地球のようだ。しかし少し大陸の形が違うような...
「これはいったい?」
「詳しいことはまだ話せません。しかし、ここにあるのは宇宙のようなもので実際の宇宙とは違う。そこでこれを男鹿先生に――」
そう丸田が話している途中で急に建物全体が揺れだした。かなり大きい。私は危険を感じて
「地震です!今すぐ装置を止めて非難を!」
そう叫びながら私は急いで電源を切るために装置に近づいた。しかし何かに躓いたのだろう、私は転んでしまい手をついたのはあの宇宙だった。その瞬間、装置の環状部分が激しく発光しながら弾けたのを見届けて、私は気を失ってしまった。