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材力無双 ~大学で材料力学を教え、定年退職した俺が異世界で無双する〜  作者: 機械工に苦しめられし者
第一章 定年、そして村編
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16/22

15話 ソニックブーム

オガタの身体がダンの家の壁を突き破った結果、居間の床には多くの瓦礫が散乱していた。


「前回は、木の枝一本しか無かったけど、これだけあれば凄いのが投げ込めそうだ」

「確かに、デビルウルフを倒した時みたいに遠くから物を投げれば安全だね。さすがオガタさん!」


ステナは、オガタがやろうとしていることを理解しているようだ。

しかし、納得したはずのステナが、ある疑問を口にした。


「でも、オガタさん」

「ん?」


「ここにある瓦礫、あの時投げた木の枝よりもずっと大きい物ばかりだし、距離だってすごい遠いよ?」


(この()には、感情で突っ走ってしまうイメージを持っていたが、認識を改めなければいけない。客観的に物事を見れることは、研究者として重要な素質だ)


ステナの意外な一面を垣間見ることが出来て、オガタは少し嬉しくなった。


「良い質問だね。でも、あの時とは違うから大丈夫」


ステナの疑問に答えながら、オガタは足元に落ちていた木の板を身体の両脇に集めはじめる。



デビルウルフ相手に木の枝を投げた時は、右腕にしか強制転位を展開していなかった。しかし、今は違う。

強制転位の全身展開(オーバードライブ)は、続けたままだ。


その昔、オガタはスポーツ科学分野の研究者と学会で話したことがあった。

その研究者によると、物を投げるといった動作は人間の身体の構造上、あまり適さないらしい。

しかし、野球では生身の人間が時速160kmを超えるような、極めて高速な投擲(とうてき)を実現している。

それを可能にしている理由は、身体の使い方にあった。

人間の肩や腕は弱い。とてもその力だけでは強力な投擲はできない。

ならば、どうするのか?

答えは簡単だ。それ以外の部分の力も利用すればよい。

利用するのは主に下半身の力だ。なぜなら、人間の身体で最も発達している筋肉、大腿筋(だいたいきん)大臀筋(だいでんきん)があるからだ。

だから野球選手、主に投手は走り込みをするのだ。試合で投げる一球にその力を全て注ぐために――



集めた木の板を強制転位で接着して巨大な一本の柱を創った。

長さは3mはあるだろうか、幅も1m近い。


「こんなことも出来るんだ......」


ステナが感嘆の声を漏らす。

準備が整った。


「前には来ないでね。後ろにいても近いと危ないから少し離れてて」

「う、うん」


ステナは不安そうだったが、オガタの言葉に従い後方へと離れていく。


崩れた瓦礫が視界を塞いでいて、外の様子を窺い知ることはできない。

しかし、応力集中サーチでクロムをずっと捉えている。

相手はオガタを倒したと思い込んでいるようだ。完全に油断している人間の応力の流れだった。


前回は右腕だけに強制転位を展開した状態で、デビルウルフの頭蓋を貫通させる程の威力を見せたのだ。

今のオガタの身体は、腕はもちろん、下半身も、背部も、胸部も、腹部も全てが強制転位によって強化されている状態だ。

そして、戦闘前に見せた跳躍力からしても筋肉が大きいほど強制転位の効果は高まるのだとオガタは分析していた。


(それら全ての力を重ね合わせた一撃だ。とくと味わうといい)


巨大な柱を軽々と持ち上げ、下半身の筋肉に意識を集中させる。

大きく左足を前に踏み出し、腰をひねりながら右足で床を力強く蹴った。

最後に右手に持った柱を全力で投げ放つ。



(つんざ)くような轟音が村中に響き渡った。


「まさか自分の身体がソニックブームを起こす日が来るとは......」



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