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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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84/110

84 青空の下で(1)

 馬車がガタガタと音を立てながら、進んでいく。

 チュチュは、その音を聞きながら、馬車に敷き詰めたクッションの中に寝転び、青い空を眺めていた。


「…………」


「……本当についてきてよかったの?」

 すぐそばに座っていたエマの声に、すかさず「いいんだ」と答える。

 馬車はヴァルを御者に、草原の中をゆるゆると走っていた。


 なんとなく何かを察してくれたエマは、夏休みの帰省を2日ほど早くしてくれたし、チュチュも連れてきてくれた。

 これから3人で、エマの実家に行く途中だ。


「懐かしいね」

 エマがふふっと笑う。

「だね」


 ヴァルとエマとチュチュ。

 三人で馬車に乗った時のことを思い出す。

 エマが学園に入る時のことだ。

 あの頃から、たくさんのことが変わった。

 もっとみんな小さかったし、誰が好きとか嫌いとか考えなくてよかった。


「あの頃に戻りたい〜〜〜〜〜〜」

「このまま8歳のチュチュに戻る?」

「…………そうすれば、先生のこと、好きじゃないでしょ」

「でも、もう師匠と弟子だったよね」

「…………そだね」


 残念ながら、小さな頃に戻っても、先生とアタシ、師匠と弟子の関係は変わらない。

 もし、今の感情を忘れて小さな頃に戻ったとしても、きっとまたアタシ、一緒にいれば、先生のことを好きになってしまう。


「ダメかぁ……」


 ふんわりと、森を伝った風がチュチュに当たる。

 涙で目が潤んでしまう。


「エマぁ」


 エマの方に目をやると、エマがチュチュの頭をぐしぐしと撫でた。


「ふぇぇん」


「今日は宿泊になるから、一緒にお風呂入ろう?」

「うん……」

「で、一緒に寝よう」

「うん…………」


 カポカポと馬は歩いた。

 ヴァルは、御者台に座ったまま、振り向こうともしなかった。


 通りすがりの町で、三人でショッピングをして、三人で夕食を食べた。


「また三人で寝られたらいいのにな〜〜〜〜〜」

 チキンを頬張りながら、チュチュが言う。

「あはは」

 エマが笑った。

 ヴァルは、何かじっと考え込んだけれど、

「…………いや、ダメだろ」

 と呟いた。


 宿のベッドはとても大きなもので、5人くらいが横になっても余裕があるほどの大きさだった。

 チュチュは、ごろりとその真ん中に横になる。

 そのままごろごろと転がり、ベッドの端まで。

 また逆に転がり、逆側のベッドの端まで辿り着いた。

「ベッドの調子はどうですか〜」

 エマがぽさっと近くに腰掛ける。

「ふ〜か〜ふ〜か〜〜〜〜〜〜」


 チュチュが、エマの顔を見た。

「アタシこそ、付いてきちゃってよかったの?ヴァルと、エマの家に行くところだったんでしょ?」

「送ってくれてるだけだよ。それも今回が初めてだからさ、チュチュがいて、きっとホッとしてるよ」

「ああ、そうなんだ」

 チュチュの笑顔が、ふにゃっと歪んだ。

「アタシ……、ヴァルにまで気を遣われてるのかと思っちゃった……。可能性なんてないのに、勝手に期待して落ち込んでて…………」

 歪んだチュチュの頬に、涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。


「そんなんじゃ、ないよ」


 エマが、静かにそう言った。

今回からしばらくは、3人でお出かけエピソードです。

次回は新キャラも登場〜。

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