73 告白すれば?
弓の大会の日以来、雨の日が続いた。
雨続きの日は、みんな自然と、食堂にいることが多かった。
今日は、メンテが作ったロールケーキで、お茶の時間になった。
「おーいしー!!」
チュチュの大きな瞳がくるりとした。
「うん、これはその辺のカフェにも負けてないよ」
シエロが、嬉しそうに微笑む。
普段は生徒達の団欒に入ってこないシエロも、お茶の時間は一緒に居た。
エマがにこにことケーキを味わってくれている。
メンテの横では、ケーキを二口ほどで平らげてしまうヴァルが、いよいよ3切れ目に手を伸ばしたところだった。
「ほんと、うまいよ」
ヴァルも嬉しそうだ。
チュチュがケーキを頬張りすぎて頬にクリームをつけたところで、シエロがパサッと真っ白なハンカチを出した。
斜め前に座るチュチュに手を伸ばす。
「ほら、クリーム」
「あ、ありがとう」
「…………」
チュチュの嬉しそうな照れた顔と、黙ってしまったシエロと。
……最近、いい雰囲気だよな。
先生が、チュチュの嬉しそうな顔を見て黙ってしまうなんて、そういう意味以外、ないじゃないか。
「…………」
まったく、イヤなことに気付いてしまったものだ。
気付きたくなんてないのに。
その日の夜、チュチュはメンテの部屋に居た。
リナリから届いた手紙を、一人ずつ回して読んでいるのだ。
「元気そうでよかったよ」
メンテは、リナリからの手紙を丁寧に折りたたみ、伸びをして言った。
「なんだか司書さんとは違う、大事な仕事も任されてるみたいだし、楽しそうだよね」
チュチュは、出してもらった紅茶を飲みながら言った。
手紙を渡しに来ただけだというのに、そのまま居座ってしまったのだ。
最初こそリナリの話をしていたけれど、話はいつの間にか、チュチュの恋バナへと変わっていた。
「諦めきれなくて……」
そう、チュチュが悲しそうに言うものだから。
「どうして?」
少し、きつい声になってしまう。
昼の二人を思い出す。
あんなにいい雰囲気で、何を言ってるんだよ。
どう見ても、お互い好き合ってるのに。
先生があんなに気遣って、あんなに動揺して……。
それなのに、なんで、“諦める”なんていう言葉が出てくるのか。
「だって、可能性、これっぽっちもないのに」
なんで泣きそうなんだ。
ぼくなんか入り込む余地もないくらい、お互いを見ているのに。
「じゃあさ、」
チュチュを慰めるように声を出した。
「告白すれば?」
ここで、背中を押してあげるのもいいだろう。
そうすれば、チュチュと先生が幸せになるのだし。
「……告白?」
「ほら、これで最後にすればいいんだよ。最後に、気持ちを思いっきりぶつけてさ。そうすれば……」
そうすれば、二人は幸せになれる。
「きっと、前に進めるよ」
君が幸せになれるなら、きっとぼくだって嬉しいから。
三角関係がごたごたする感じで!
三角関係はごたごたするものですもんね。




