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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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52/110

52 新しい場所(2)

「では、自己紹介をしてもらおうかのぅ」


「え、今……」

 名前を言ったのに。


 大魔術師の方を振り向くと、杖を持ち直していたので、そこでやっとどういう意味かわかった。


 3人でぞろぞろと外に出る。

 そこは、魔術師の塔のそばの原っぱだった。

 木に囲まれたその場所は、そんな場所でなければ散歩ででも歩きたくなるような、陽気な場所だった。


「では、まず誰から行くかな?」


 ジークは相変わらず偉そうに突っ立っている。

 ランドルフはジークの数歩後ろの陰に潜んでいた。

 対極的な二人。


「じゃ、ランドルフから」

 ジークが、ランドルフの腕を引っ掴み、惜しげもなく差し出した。

「ちょっ……、ちょっちょっちょっちょ!ジーク!!」


 王太子をあんな風に扱うなんて。


 どうせあの気弱な王太子も、態度のでかい側近も、大したことないんだろ?


 その王太子の扱いに嫌な顔をすると、ジークがフフンという顔でシエロを見た。


 ……ちょっと背が高いからって。


 こいつも、僕を馬鹿にしている。


 除け者にしようとしている。


「じゃあ、いくね」

 ランドルフが、ぐっと拳を握ると、指にはめた金の指輪が煌めく。


「水中の花」


 ランドルフが唱えると、右手にはめた金の指輪の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 4人を丸く取り囲むように地面から水が噴き出すと、ザバン、と大きな花のように周りに広がった。

 そのまま、水は地面に吸い込まれていく。


「…………」


 シエロは、目を見張る。

 ……水の魔術……。

 いや、ずっと大魔術師の弟子なんだから、これくらい出来て当たり前だ。


 僕だって。


「じゃあ、俺がいくよ」


 ジークが前に進み出ると、腰に差した短剣を手にした。


「大いなる炎」


 ジークが唱えると、手にした短剣の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 ジークの手のあたりから出現した真っ赤な炎は、シエロを取り巻くようにシエロの周りをぐるぐると円を描き、そして虚空へ消えていった。


「…………っ!!」


 新人いじめかよ。

 ちょっと魔術が使えるからって、大人気ない。


「そんな風に派手な魔術ばっかり見せつけて、自慢のつもりなの?」


「いいや」

 ジークがニッと笑う。

「次はお前の番だよ。シエロ」


「…………」

 名前を呼ばれて、一瞬戸惑う。

 こんな風に気軽に名前を呼ばれるのなんて、いつぶりだろう。

 もう……何年も前のことだ。


「いくよ」


 真っ直ぐ、前を向く。

 自分の背よりずっとずっと大きな、赤い宝玉の付いた杖を構えると、シエロは静かに唱える。


「クマ」


 シエロの持っている杖の上に、魔法陣が輝き、弾けるように消える。

 シエロの手元で、小さな水の渦が、細かい飛沫をあげながらクルクルと回る。

ランドルフの指輪は、代々王家で受け継がれている指輪です。

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