52 新しい場所(2)
「では、自己紹介をしてもらおうかのぅ」
「え、今……」
名前を言ったのに。
大魔術師の方を振り向くと、杖を持ち直していたので、そこでやっとどういう意味かわかった。
3人でぞろぞろと外に出る。
そこは、魔術師の塔のそばの原っぱだった。
木に囲まれたその場所は、そんな場所でなければ散歩ででも歩きたくなるような、陽気な場所だった。
「では、まず誰から行くかな?」
ジークは相変わらず偉そうに突っ立っている。
ランドルフはジークの数歩後ろの陰に潜んでいた。
対極的な二人。
「じゃ、ランドルフから」
ジークが、ランドルフの腕を引っ掴み、惜しげもなく差し出した。
「ちょっ……、ちょっちょっちょっちょ!ジーク!!」
王太子をあんな風に扱うなんて。
どうせあの気弱な王太子も、態度のでかい側近も、大したことないんだろ?
その王太子の扱いに嫌な顔をすると、ジークがフフンという顔でシエロを見た。
……ちょっと背が高いからって。
こいつも、僕を馬鹿にしている。
除け者にしようとしている。
「じゃあ、いくね」
ランドルフが、ぐっと拳を握ると、指にはめた金の指輪が煌めく。
「水中の花」
ランドルフが唱えると、右手にはめた金の指輪の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。
4人を丸く取り囲むように地面から水が噴き出すと、ザバン、と大きな花のように周りに広がった。
そのまま、水は地面に吸い込まれていく。
「…………」
シエロは、目を見張る。
……水の魔術……。
いや、ずっと大魔術師の弟子なんだから、これくらい出来て当たり前だ。
僕だって。
「じゃあ、俺がいくよ」
ジークが前に進み出ると、腰に差した短剣を手にした。
「大いなる炎」
ジークが唱えると、手にした短剣の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。
ジークの手のあたりから出現した真っ赤な炎は、シエロを取り巻くようにシエロの周りをぐるぐると円を描き、そして虚空へ消えていった。
「…………っ!!」
新人いじめかよ。
ちょっと魔術が使えるからって、大人気ない。
「そんな風に派手な魔術ばっかり見せつけて、自慢のつもりなの?」
「いいや」
ジークがニッと笑う。
「次はお前の番だよ。シエロ」
「…………」
名前を呼ばれて、一瞬戸惑う。
こんな風に気軽に名前を呼ばれるのなんて、いつぶりだろう。
もう……何年も前のことだ。
「いくよ」
真っ直ぐ、前を向く。
自分の背よりずっとずっと大きな、赤い宝玉の付いた杖を構えると、シエロは静かに唱える。
「クマ」
シエロの持っている杖の上に、魔法陣が輝き、弾けるように消える。
シエロの手元で、小さな水の渦が、細かい飛沫をあげながらクルクルと回る。
ランドルフの指輪は、代々王家で受け継がれている指輪です。




