表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/110

39 初恋の行方

「終わったああああああああああ」


 階段を駆け上りながら、叫ぶ。


 こんなつもりじゃなかった。言っちゃいけなかった。


 一度フラれて、アタシの方が気持ち押し付けてるって、わかってたはずなのに。

 先生きっと困ってた。

 困ってたのにきっと、いい先生として接しようとしてくれてた。

 なのに。


 自分が、自分の気持ちを抑えられないからって。


 あんな、わがまま、言ってしまうなんて。


 このままの状態で、大人になれば、もしかしたら……好きになってくれることだって、あったかもしれないのに。


「絶対なくなっちゃった!!こんなの最悪!!」


 涙が止まらない。


「うぁ…………」


 涙で前もろくに見えないまま階段を駆け上がる。


 すると、後ろから、

「チュチュ……!」

 と声をかけられた。


「あっ……」


 階段を踏み外す。

 後ろへ飛び上がったところで、仰向けのまま声の主の腕の中へ。

 チュチュが目をパチパチとしばたたかせ、顔を確認すると、天井を背景に、そこに居たのはメンテだった。


「メン……テ……」

「ごめん。危ないよ、って言おうとしたんだけど、ぼくの声で転ばせちゃったね」


 そのメンテのいつも通りの声を聞いて、また、涙がぼろぼろとこぼれた。

「アタシの初恋……終わっちゃったぁ…………」


「…………」

 するとメンテは、そのままチュチュの腕を引き摺るように、メンテの部屋まで引っ張って行った。

「その状態じゃ不安だから、一旦こっちに」


 そのままずるずると引き摺られ、気づけばチュチュは、メンテの部屋の床に座り込んでいた。

 床といっても、生きている木でできた学園内の床は、ほのかに温かい。

 チュチュは、シュンとしてメンテの顔を見上げた。

「…………」

 おどおどと視線を泳がせた挙句、結局、説明を始める。

「先生に……、そんな顔されると諦められないって……わがまま言っちゃった。嫌いなら嫌いって言って、って。アタシとちゃんと向き合って、って」

 ドサっと床に寝転ぶ。

 言葉にすると、本当に何を言っているのだかという感じだ。


 ……そりゃあ、好きじゃないだろう。

 フラれてしまったんだから。

 けど、それだけじゃ収まらない表情に見えたから、つい。

 けど、あの表情も、勘違いなんだよ、きっと。


 期待しすぎちゃったから、幻覚を見たんだよ。


 メンテは一つため息を吐いて、お風呂場の方へ行くと、水で濡らしたタオルを持って戻ってきた。

 チュチュに目を冷やすように渡すと、床に腰を下ろす。

 転がるチュチュからは、メンテの顔は見えない位置にあった。

 ということは、メンテもチュチュの顔を見ていないということだ。

 今は、その方が落ち着いた。

 そっとタオルを目元に当てる。

「もうフラれた後だっていうのに。アタシ、自分が嫌になる」


「うん、でも。そんな簡単に諦められるものでもないだろ。それがどんなことであろうと、正面から突き進むチュチュは、ある意味偉いと思うよ」


「ある意味……」


 知っている限りでは、メンテは嘘をついたりしない。

 正直すぎてダメージを負うこともあるけれど、その分さっぱりしていて話しやすい面もある。


「ありがと。少し、落ち着いた」


 自室へ戻ると、当たり前のように、シエログッズに囲まれる。

「うぐぐぅ〜〜〜〜」

 シエロのダイカットクッションに顔を埋めた。


「うわああああああああん!!先生大好きーーーーーーー!!!!!」

さて、次回からしばらくはシエロくんのお話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ