25話
ゴブリンは、所詮ゴブリンであった。そう言いたくなるほど、サトネットの迷宮のゴブリンは弱く。稼ぎにもならない、ダンジョンの練習にもならないところであった。ただ、殺したゴブリンの肉は光の粒子になって消え、魔核と言われるダンジョン特有の魔物が持つものが手に入る。魔核。魔力の塊を入れている器の名称。利用方法はいろいろあるから、買い取ってもらえるけど、ゴブリンの魔核は質が悪く買い取り額が悪い。外で一日ゴブリンを狩るのとダンジョン内で一日ゴブリンを狩るのがどっこいどっこいだ。ただ、この迷宮は一本道でほぼ絶え間なくゴブリンと戦闘する羽目になる。このダンジョンは稼ぎ場としてよくない。ただ取り潰せない迷宮らしい。その原因が……
「底が見えないねー」
「本当に真っ暗ですわ」
「こりゃ、降りるとか考えられないわ」
「降りれたとしても、帰れないでしょ」
僕らが、口をそろえて言うのはこの大きな大穴。そこがあるかもわからない、大穴がまだダンジョンとして続いているらしい。降りたものが帰ってきたことはない。ある意味ここが、迷宮の本当の入り口。通称『怠惰の迷宮』。人間を相手しないための大穴とか言われている。
攻略不可能な世界七大迷宮の一つ。
「すごい嫌がらせだね」
唐突に黙っていたリリアが口を開く。何を考えたのか、氷柱の魔法を穴の反対側の壁に打ち込む。土壁に突き刺さると思われた氷柱が壁の中へ消えていく。
「あの先にこの迷宮の続きがあるわ」
リリアのおかげで不完全燃焼だった迷宮探索の続きができるようになったわれら五人。荷物は僕が持っているから、続けようと思えば続けられるが、いきなり問題が。
「この大穴を飛び越して、あの壁までどう行くか。しかも壁を越えても真っ逆さまなんてのは嫌」
そう、こんな意地の悪い迷宮だから、ここから罠だらけだろう。実体のない幻影の壁の先に何があるかわからない。試されるのは、度胸。この大穴を飛び越え何があるかわからない壁に突っ込む。こんなもやもやした状況で帰るなんてできない!
僕は、助走をつけて踏み切った。
時間がゆっくり進んでいる気がする。落ちたら助からないであろう大穴の上を跳んでいる。世界一怖い走り幅跳び。身体能力も向上している今なら地球で新記録出せるね。長く感じた時間をくだらないことを考えながら慣性に従う。壁にぶつかるという刹那。目をつぶるが、衝撃はやってこない。遅れたところで着地の衝撃が。
「ツバサぁ」とみんなが呼ぶ声が。
「僕は大丈夫。とりあえず続きの迷宮があったよ」
マジックミラーみたいでみんなの姿がこちらから見えるから、少し顔を乗り出しひょっこりする。みんな僕の顔を見て安堵した。




