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第36章

 帝国の中でも皇帝と大公は特別だ。

 継承順位については、厳密な決まりがある。

 中でも特別なのは、男系の男子でないと継承できないということだ。

 だからこそ、ボークラール本宗家は帝室の血を受け継ぐ傍系の中でも特別な地位を占めた。

 実は、もし、今、皇太子の地位にあるトマスに不慮の事態があった時、皇太子に一番近いのは兄ダグラスという状況になっている。


 なぜなら、トマス皇太子を除いて、帝室で男系の男子の血を承け継ぐ中で、最も現皇帝ジョンに血筋が近い人物と言うのは、私の兄ダグラスだからだ。

 なお、女系でも構わないというのなら、男性ならエドワード殿下がジョン現皇帝に最も血筋が近い存在になる。

 女性なら、言うまでもなくキャサリン皇女殿下が筆頭だ。


 そして、大公家だが、エドワード殿下の次の継承者は(実は異父)弟リチャード様になる。

 キャサリン皇女殿下が産んだのは女の子だからだ。

 本当なら、キャサリン皇女殿下は、産まれたのが女の子なのを残念がられるところなのだろうが、キャロライン皇貴妃殿下のお話を聞く限り、大公家継承者を産まずに済んで喜んでおられるのではないか、と私には思えた。


 ともかく仕事、仕事、私は頭を切り替えて、宮中女官の職務に精励することにした。


 12月下旬にキャサリン皇女殿下が女の子を産まれて、そのお祝い等に私が忙殺されている内に1月になった。

 1月の除目で予定通り(?)、エドワード殿下は参議兼左近衛中将から昇進された。

 大蔵卿か民部卿という大方の予想に反し、エドワード殿下は兵部卿になられ、更に右近衛大将になった。

 これまで、大公家継承者は、各卿の中でも一、二を争う重要職の大蔵卿か民部卿に就任するのが通例だったので予想外との声が高かったが、エドワード殿下にとっては予定通りだったらしい。

 もちろん、併せて侯爵に陞爵されてもいる。

 だから、むしろ、エドワード殿下の弟のリチャード殿下が不満を漏らされている。


「何故に、私が民部大丞で男爵に叙せられるだけなのです。1つ上のエドワード兄さんは、侯爵に叙爵されたのに」

 私の目の前で、表向きは単なる義理の従姉(キャロライン皇貴妃殿下は、リチャード殿下の実の伯母メアリ大公妃殿下の養女)なのだが、物心つくころから姉弟同様に育ってきたので、リチャード殿下は遠慮なくキャロライン皇貴妃殿下に不満をこぼされている。

 民部省は重要な役所で、男爵が就任する役職として民部大丞はかなり評価が高いものなのだが、エドワード殿下が侯爵に叙せられて、兵部卿兼右近衛大将になられたことからすると遥かに格下だ。


「仕方ありません。エドワードは大公家継承者として公認された身、あなたとは身分が違います」

 キャロライン皇貴妃殿下は、リチャード殿下をたしなめられたが、リチャード殿下は不満がより溜まられたようだ。

「兄弟なのに違い過ぎます」

 リチャード殿下はぼやかれた。

「いい加減にしなさい。エドワードのように武芸が出来るの?あなたに」

 とうとう、キャロライン皇貴妃殿下は、ぴしゃりとリチャード殿下を叱られた。

「すみません、できません」

 リチャード殿下は肩を落とされた。

 ふーん、そういう点でもエドワード殿下は別格なのか。

 私はあらためて思った。


「ともかく職務に励みなさい。そうすれば、周囲から評価されて、エドワードに追いつくことが出来ます」

 キャロライン皇貴妃殿下は、リチャード殿下を最後は励まされ、リチャード殿下は退出された。

 キャロライン皇貴妃殿下は、ため息を吐かれ、私にぼやかれた。

「エドワードは武芸が出来るから、軍事貴族にも人気が高い。リチャードにしてみれば、兄と比較されるのがつらいのでしょうね」

 成程と私は得心した。


 

第4部の終わりです。

幕間を2つ入れて、第5部に入ります。

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