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第33章

 朝、我ながら酷い顔をしていると思いつつ、キャロライン皇貴妃殿下のお傍に伺候しようと赴いてすぐにキャロライン皇貴妃殿下に、2人きりで話したいことがある旨、指示を受けた。

 私とキャロライン皇貴妃殿下は、別室に移動し、2人きりで話をすることになった。


「アリス、あなたをエドワード伯爵殿下との取次役から、今日一杯で外します。それ以外は今までどおりとします」

 キャロライン皇貴妃殿下は、開口一番に言われた。

 昨日の園遊会の流れから、そうなるかも、とは私も心の片隅で思ってはいたが、キャロライン皇貴妃殿下に、あらためて言われると、私は涙が溢れるのを感じ、声がどうにも出なかった。

「どうして、と聞かないの?」

「いえ、昨日の園遊会でジョン皇帝陛下は、私のことを言われていたのだと察していたので」

 私のつかえながら、涙を流しながらの答えに、キャロライン皇貴妃殿下はため息を吐いた。


「まさか、キャサリン皇女殿下が妊娠するとはね。余りにも時機が悪い。確かに私も早まったわ。あなたとエドワードの恋を応援したかったけど、ジョン皇帝陛下が言われる通りよ」

 キャロライン皇貴妃殿下は、つぶやかれた。

「そこまで、言っていただけるとありがたいです」

 私はますます涙が溢れるのを覚えた。


「それにしても、おかしい」

 キャロライン皇貴妃殿下は、首をひねられながら、更につぶやいた。

「何がです?」

 私は涙を流しながら、問い返した。


「あなたとエドワードが愛人関係にあるという噂が流れることよ。そもそも私が、愛人関係を嫌っているのは宮中の者なら皆、知っているはずよ」

 キャロライン皇貴妃殿下は、独り言を言われた。

 確かにその通りだ、私は涙が少し止まる気がした。


「更に言うと、そんな噂を下手に流すと、私の逆鱗に触れかねないのが分かっているはず。それにもかかわらず、そんな噂を流せる人物。かなり絞られてくるわね」

 キャロライン皇貴妃殿下のバックには大公家がいるのは、誰もが知っているし、キャロライン皇貴妃殿下が激怒した際の凄まじさは有名だ。

 それを無視して、噂を流せる人物はそういるはずがない。

 私は何かとんでもないことに巻き込まれているような気がした。


「ともかく、ほとぼりを冷ます必要があるわ。キャサリン皇女殿下が、無事に出産を済ませて、母子健康と言うことでお元気にならないと、あなたが何らかの魔術を使ったという噂をさらに流されかねない」

 キャロライン皇貴妃殿下は、私を諭された。

 私は肯くしかなかった。

 この世は悪魔が造ったものだ、だから、悪魔が人に紛れて住んでいるし、魔術を使う人間もいる、と真教の教会自身が説いている。

 こんな世界で、魔術を私が使ったという噂が更に流れたら、本当に私の身は破滅させられてしまう、ということになりかねない。


「取りあえず、あなたはエドワードに会っても、素知らぬ顔を大変つらいとは思うけど当分の間、そう1年ほどは続けるしかないわね。その間に、私の方で動けることは動いて見せるわ」

 キャロライン皇貴妃殿下は、私を励ましてくれた。

 有り難さに涙が更に私は溢れたが、少し疑問を覚えた。


「あの、キャサリン皇女殿下のことは、よろしいのでしょうか。私が身を引くのが当然なのに」

「いいの。不幸な結婚生活が続くのは、夫婦お互いに不幸なだけよ。キャサリン皇女殿下自身も、本音ではエドワードと離婚したがっているのだし、エドワードも本来、キャサリン皇女殿下と結婚はしたくなかったのだから」

 私の問いかけに、さらっとキャロライン皇貴妃殿下は爆弾発言をされた。

 聞いてはいけないことを私は聞いてしまった気がする。

 私は、さっきの発言を聞かなかったことにしよう、と内心で誓った。 

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