第31章
秋の園遊会が始まった。
そうはいっても、夜の月見が主役なので、昼間は多少、余裕がある。
私は合間を縫って、こっそりエドワード殿下の参加する競馬や馬上槍試合を観戦して楽しんだ。
エドワード殿下は競馬では乗っている馬のお蔭もあって、相変わらず見事な勝利を収め、馬上槍試合でも見事な演武を示された。
マイトラント伯爵家の一族の者が、エドワード殿下を取り囲んでいるのを見ると、本当にエドワード殿下は軍事貴族の一員のようだ。
それにしても、春はバタバタして気が付かなかったけど、参加者の名簿を詳細に見て、私がチェックすると意外とボークラール一族の名がある。
まだまだ、私の一族は完全に絶えた訳ではない、と私は心強く思ったけど、更に詳細にみると皆、男爵に過ぎないし、州長官等の官職についていた者は少数派だし、その州長官になっていた州にしても、収入が少ない州ばかりだ。
私の父が健在だった頃のような威勢を、私の一族が誇ることはあるのだろうか?
私は寂しさを覚えた。
夜になり、月見の宴会が始まった。
エドワード殿下は伯爵なので、本来はジョン皇帝等、帝国最上級の貴族が集う席に入られるのは貴族の序列を乱す行為なのだが、ジョン皇帝と二重の義兄弟になられるし、大公家の跡取りということから、特別にジョン皇帝陛下のすぐ傍におられる。
とだけ、宴会の当初は、私は思っていたのだが、別の理由がすぐにジョン皇帝陛下から明かされた。
「エドワード、真にけしからん。何故、朕の姉キャサリンの妊娠をすぐに朕に伝えなかった」
「誠に申し訳ありません。キャサリンが中々明かさなかったもので」
エドワード殿下が、ジョン皇帝陛下の軽い叱責に頭を下げられた。
「まあまあ、エドワードにしても悪気があったのではありません。それにしてもおめでたいことですわ」
マーガレット皇后が、2人の間を取り直そうと口を挟まれているのが、私の耳に聞こえたが、その内容に私は衝撃を受けた。
ええっ、キャサリン皇女殿下が妊娠した。
エドワード殿下はキャサリン皇女とは正式に結婚された間柄。
ええ、でもね、エドワード殿下は、私の前世でいえば高1の男に過ぎないのに、子どもができるなんて、おかしいでしょ。
ある意味、恋敵の妊娠を聞かされた私の内心はささくれ立ち、荒れたくなった。
エドワード殿下の横におられるキャサリン皇女殿下のお腹を、それとなく私が注視してみると、確かに妊娠されているらしく、下腹部が膨らんでいる。
私の内心はますますざわめいた。
「ところで、エドワード、まさか、妻のキャサリンが妊娠している間に、召人では無く、愛人を作るようなことはすまいな」
「当然のことです」
「そうか、キャロライン皇貴妃付きの宮中女官の1人に手を出しているという宮中の噂は、事実無根と言うことだな」
「はい」
ジョン皇帝陛下とエドワード殿下は、更に会話をされている。
エドワード殿下、確かに私は日陰の身ですが、そう言われるのは、余りにも哀しいです。
そう私が思っていると、キャロライン皇貴妃殿下が助け舟を出してくれた。
「陛下、弟を余りいじめないでください。それに先程からの会話、私付きの宮中女官が風紀を乱しているかのように聞こえます。私に対する余りなお言葉です」
キャロライン皇貴妃殿下はそう言って、ジョン皇帝陛下を軽く睨んだ。
「そう聞こえたか、それは済まなかった」
ジョン皇帝陛下は謝られたが、エドワード殿下への追い打ちは完全には止めなかった。
「ともかく、私の姉キャサリンが妊娠しているのに、妙な噂が立っては困る。エドワード、身を慎めよ」
「はっ」
ジョン皇帝陛下は、エドワード殿下を訓戒され、エドワード殿下は頭を下げざるを得なかった。




