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東京2044  作者: mimi
20/40

とっておきの場所

バイクの方へ戻ると、イースはリラックスした様子で座席に座っていた。


「おかえり~、浮かない顔してるけど、大丈夫?」


能天気な言い方でそう言われ、セナは大きく溜息をつく。


「何よ」


じっと顔を見つめてくるイースを睨みつけながら言う。


「とびきり元気が出る所、連れていってあげよっか?」


楽しそうに笑みを浮かべるイースに、セナはどう言葉を返したらよいか迷う。


「行きたくないならいいけど」


「・・・行く」


そう言うと、セナの予想通り、イースはぱっと明るい表情になる。


「じゃあ後ろに座って、それから、いいよって言うまでずっと目をつむってて、一回でも目を開いたら、その場所には辿り着かないから」






二人乗せたバイクは交通量の少なくなった夜の道を走る。


「ねえ、いつまでこうしてたらいいの?」


「まだまだ、絶対開けちゃ駄目だよー」





やがてバイクは停車した。


それでも目を開けてはいけないとイースは言う。


セナは目をつむったまま、手を引かれて歩く。


途中、古びた金属がきしむような音がした。


それに、フワリと浮くような浮遊感が加わる。


しばらくすると、突然強風を全身に感じた。


「開けていいよ」


そう言われ、セナは恐る恐る目を開く。


「きゃーーっ!!」


それは感嘆の悲鳴というよりは、恐怖の悲鳴に近かった。


足場は直径3メートルほどしかなく、遥か下には海が広がっている。


遠く足元に、光の帯のような物があり、そこに動く光が行き交っている。


「橋を支えてる塔の上!?」


「大正解!」


セナは恐る恐る視線を上げた。


夜の黒々しい空がすぐ側に迫ってるように感じる。


そして、橋の両岸には、宝石箱をひっくり返したような凄まじい輝きを放つ、東京の街が広がっている。


「きれい・・・」


その言葉が口をついた。


イースはそれを聞いて、満足そうだ。





狭い場所だったので、二人は背中合わせに座る。


「ピクニックしようと思って」


そう言って、イースはバックから食べ物やペットボトルの飲み物を取り出す。


セナは大変空腹だったので、遠慮なくそれに手をつける。


長い時間、二人は無言だった。


ただ、夜風に吹かれ、美しい夜景を眺めていた。


「セナの事、もっと知りたい」


出し抜けにイースが口を開く。


「言っちゃいけない事なのは分かってる、だけどセナの口から聞きたいよ」


セナは表情変えずに遠くを見つめている。


「いいよ」


イースは驚いて後ろのセナを振り返る。


「だけど、絶対に秘密にしてね」


そう言うと、セナは静かに自分の過去について話し始めた。

































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