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アウトサイダー  作者: 君島極
第三章:交差する運命 |  第一節:揺らぐ日常、芽吹く力
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第7話:夕焼けの帰り道、残る温度

出口へ向かう通路では、足音と弾んだ声がまだ重なっていた。


「すごかったよなー!」

「最後やばかった……!」


そんな声が、あちこちで弾んでいる。


前を歩く子どもが、興奮したまま両手を振り回した。


「ねぇねぇ! ぼくも魔法使いたい!」


「ふふっ、いっぱい勉強しないとね」


隣の母親が笑いながら頭を撫でる。


その光景を横目に見ながら、彰と陽菜も人の流れに混ざって出口へ向かっていく。


出口付近では、お土産コーナーへ人が集まり、グッズを手に楽しそうな声が飛び交っていた。


その横を通り過ぎかけた瞬間――


「ねぇ、ちょっと見ていこうよ!」


陽菜が目を輝かせながら、彰の袖を軽く引く。


「え、ああ」


そのまま一緒にお土産コーナーへ入った。


棚には、会場で見た幻影をモチーフにしたグッズがずらりと並んでいる。


小さな幻獣マスコットや光るアクセサリー、星空を閉じ込めたみたいなガラス細工まで並び、棚の前で何度も足が止まった。


「うわ、これ可愛い……!」


陽菜が嬉しそうに棚を見て回る。


「ねぇアキ、これ可愛くない?」


手に取ったのは、小さな星飾りのついたキーホルダーだった。


光を受けるたび、色が淡く変わる。


「お、いいね」


彰はそう言いながら、棚へ並んでいた色違いを手に取った。


「じゃあ、俺もこれにしようかな」


その瞬間、陽菜の目がぱっと開く。


「……お揃い?」


「え、あ……まぁ、せっかくだし」


少し照れながら答える。


陽菜は嬉しそうに笑った。


「……えへへ」


そのまま並んでレジへ向かう。


「お会計はご一緒でよろしいですか?」


店員にそう聞かれ、彰は一瞬だけ迷ってから頷いた。


「……はい」


会計を終え、袋を受け取って店を出る。


紙袋の持ち手が、指へ少しだけ食い込んだ。


そのタイミングで、陽菜がバッグから財布を取り出す。


「アキ、半分払うね」


彰はその手を軽く止めた。


「……いいって」


「でも――」


少し照れたまま、彰は視線を逸らす。


「記念だから」


一瞬だけ、陽菜の目が丸くなる。


それから、ふわっと嬉しそうに笑った。


「……ありがと」


二人はそのままお土産コーナーをあとにする。


外へ出ると、夕方の空気が頬を少しだけ冷たく撫でた。


まばたきの裏に、さっきまでの光がまだ薄く残っていた。


駅へ向かう道を並んで歩くうちに、足音も自然に揃っていった。


「……すごかったね。ちょっと怖かったけど」


陽菜が笑う。


「……ああ。陽菜、途中でびびってただろ」


彰も軽く返す。


「ちがっ……あ、あれは、びっくりしただけ」


陽菜の顔が一気に赤くなる。


彰の口元が、少しだけ緩む。


「いや、完全にしがみついてた」


「……っ」


言い返せずに、少しだけ顔を逸らす。


そのまま歩いているうちに、肩がほんのわずかに触れた。


けれど今度は、どちらも離れようとはしない。


隣で、やわらかな吐息が小さくこぼれる。


「もしかして……泣いてた? 目、赤いし?」


陽菜が、横を見ないまま言う。


「うん……ちょっとね」


間を置かずに返す。


「アキも泣いてたじゃん。私見たもん」


少しだけ間が空き、足音だけが先に進む。


「……それは」


言いかけて、止まる。


続ける言葉が見つからないまま、喉の奥で引っかかった。


その沈黙を埋めるみたいに、隣で小さな笑い混じりの息がこぼれる。


さっきまでより、ずっとやわらかい。


彰も、つられるように小さく息を吐いた。


「楽しかったね」


軽く流すような声で、沈黙が戻る。


足音だけが、前より近い間隔で並んでいた。


彰がぽつりと漏らす。


「魔法って、すごいよな」


少し間を置いて、


「戦うだけじゃなくて、ああやって――みんなを笑わせることもできる」


言いながら、声が少しだけ落ちる。


「……俺たちとは、違うけど」


陽菜は少しだけ遠くを見る。


「いいよね、ああいうの……やりたくなるよね」


風が通り、歩幅が揃うたびに距離が少しずつ近づいていく。


その流れのまま、指先が触れた。


一瞬だけ互いに動きを止める。


けれど、どちらも手を離さなかった。


そっと重なった指先から、やわらかな温もりが伝わってくる。


目が合う。


驚いたように笑って、それからまた前を向いた。


言葉はない。


重なった指先だけが、そのまま離れなかった。


そのまま並んで駅まで歩き、帰りの電車へ乗り込む。


窓の外では、夕焼けに染まった街並みがゆっくり流れていた。


最寄り駅へ着いたあとも、二人は並んだまま住宅街を歩いていく。


見慣れた虹咲家が近づくにつれて、不思議と少しだけ足取りがゆっくりになった。


門扉の前で立ち止まる。


「……今日はありがと。すごく楽しかった」


陽菜が、少し照れたように笑う。


彰も小さく頷いた。


「……俺も」


そのあと、彰は思い出したようにバッグを開いた。


「そうだ」


中から、小さなキーホルダーを二つ取り出す。


「せっかくだし、付けとこうと思って」


少し照れながら、自分のバッグへ色違いのキーホルダーを付けた。


小さな星飾りが、街灯の光を受けて淡く揺れる。


それからもう一つを、陽菜へ差し出した。


「ほら」


陽菜は嬉しそうに目を細め、そのまま自分のバッグへキーホルダーを付けていく。


指先が少しだけ慌てていて、それが妙に可愛かった。


「……えへへ」


小さく笑う。


揺れる星飾りを見つめながら、陽菜はそっと口元を緩めた。


「……ありがと。大事にするね」


彰はバッグの星飾りへ一度だけ視線を落とした。


「うん。……じゃあ、またな」


「うん。またね」


陽菜は玄関へ入っていく。


扉が閉まりかけた――その直前。


横から、もう一度だけ陽菜が顔を覗かせた。


小さく手を振る。


彰も思わず笑って手を振り返した。


「……バイバイ!」


「お、おう」


ぱたん、と扉が閉まる。


玄関灯の下で、星飾りが小さく揺れていた。


彰はしばらくその場へ立ったまま、バッグへ揺れるキーホルダーを見つめる。


それから小さく息を吐き、少しだけ頬を緩めた。


足取りは、行きよりずっと軽かった。


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