最終章-8「銀眼のスナイパー」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第44話「銀眼のスナイパー」
ゴゴゴゴゴ……
一「……ん…?」
地面が揺れるような音で目が覚める。
ユニコーン「なんだ…あれは……?」
一「なんか沢山いるじゃねぇの…」
正面には戦車がズラリと並び、こちらを狙っていた。
ユニコーン「…僕たちを殺すつもりですよね……」
一「…だろうな……けど……」
一は立ち上がる。
一「先にやってきたのはあっちだ…確かにさっきまでは悪い力に踊らされて暴走しちまっていたが、それももう終わった。今のワタシたちに人権を剥奪される覚えはない…!」
ユニコーン「…そう…ですよね……僕らが能力者だからといって、その自由を奪う権利なんてありはしない!」
ユニコーンも立ち上がる。
一「お…オメーも言うじゃねぇか……最後まで闘う覚悟はあるか?」
ユニコーン「はい……僕はずっと……世界と闘うつもりで生きてきた…!!」
一「いいねぇ……だが、流石に今は疲労とダメージがデカい……この場を切り抜けることを優先したいんだが……」
ユニコーン「はい……でも…あいつらだけは…それを許してくれそうにありませんね……」
二人の視線の先には二体のモンスター。
一体は完全に人型であるにも関わらず、どこか無機質さのあるシンプルで不気味な雰囲気が漂っている。 右手には剣、左手には盾を持っている。背中にはなんとか見えるほどの透明な羽が4枚ついている。
もう一体は虫のような触覚が頭から生えており、目のような球が顔に8つある。 手足は6本生えているが、内二本は背中から生えている。
二体のモンスターがこちらに向かってくる。
透明の羽を持つ白いモンスターは体を地面から数十センチ浮かせて直立したまま移動する。(以下シロと呼ぶ)
触覚のある黒いモンスターは四足歩行でカサカサと脚を動かして移動する。(以下クロと呼ぶ)
ユニコーンと一は武器を構えるが、途中でシロがクロを手で制し、後方で待機させた。
そしてゆっくりと“声”が聞こえる場所まで近づくとシロが話しかけてきた。
シロ(貴方たちが「能力者」…か?)
テレパシーのような、脳内で「意味だけが伝わる言語」が響く。
一「…だったらなんだ?」
シロ(…貴方たちが「能力者」…であるのなら我々の「敵」…だ。といっても我々の中に「人間」…は含まれないが…)
ユニコーン「…どういうことだ…?」
シロ(「我々」…は「ボス」…を倒した者を探していた。その過程で人間の協力を得て「強化」…と「探索」…を手伝ってもらった。「人間」…に協力はしてもらったが決して「仲間」…ではない。能力者の殺害という利害の一致によって協力関係にあるだけにすぎない。)
一「ふ~ん…なら、後ろのあいつらは手を出してこないってことか?」
シロ(そうだ…だから安心して戦ってほしい。)
ユニコーン(なんなんだこいつ……)「それを伝えにきたのか?」
シロ(そう………そしてもう一つ「目的」…がある。それは君たちと「会話」…がしたかった)
ユニコーン「なに…?」
シロ(「ボス」はこの星で…「ヒーロー」に倒された。そのヒーローはたった数人で戦争を勝利へ導くほど強い「力」を持っていた。そして君たち、「能力者」と呼ばれる者たちはその「力」…を継承している。我々はその「力」…に非常に興味がある。我々、種族の結晶を上回るほどのその力…それを知りたい…。君たちはなにか「知っている」…のか?)
ユニコーン「力の秘訣をしるために話しかけてきたのか」
一「残念だが知らねぇなぁ。…ま、強いて言うならこの武器が力の源かぁ?」
戟を掲げて見せる。
ユニコーン「……なんで言うんですか……」
一「…あ…まぁいいじゃねぇか、知ったところで何にもならねぇよ!」
シロ(その「武器」…が力か…。…その武器には「――――」…にアクセスする権限があるのか?)
「「…??」」
シロ(「――――」……君たちの言葉には「――――」を意味する言葉はないのか。…まぁいい…その「武器」…が強さの秘密であるのなら力づくで奪い取るまで…)
一「はっ…やる気だねェ…!」
シロ(我々の「種族」…はこの「方法」しかしない。強者が奪い、富を得る。どちらが「生き残る」…のか…戦闘をしよう。)
スーッと離れるシロ。
一「バケモンのくせに礼儀正しいヤツだな…」
ユニコーン「余裕があるってことですよ…強いですよ、あいつ……」
シロがクロと合流すると、手で合図をした。その合図の瞬間、クロが突撃してきた。そしてその後ろからシロが追従する。
「「変身!!」」
ドッ!! カッ!!
変身して戦う二人。だが…
ユニコーン「がっ…!!」
一「うっ…!!」
もう二人の体力はほとんどない。モンスターに圧倒され、吹き飛ばされる。
シロ(――!)
一(!?)
シロの謎の声により、クロが動く。二体は一斉にユニコーンに襲い掛かった。
ユニコーン「くっ!?」
カッ!!
強烈な閃光で目つぶしを狙うが、効果はない。2体とも光で感知をしていない。
ガッ!!
シロの攻撃の隙をつき、後ろに回ったクロが4本の脚で羽交い絞め。その間にシロがエクスカリバーを奪った。
一「この!…ッ!?」
シロに向かう一に盾を投げつける。
それを躱した隙に、二本の剣で攻撃を仕掛けた。
一(こいつ…速ぇ…!…クッ…駄目だ……力が……)
ズッ!!!
一の体をエクスカリバーが貫く。
シロ(………!?)
が、剣は光となっており、刺さってはいない。
一「っ!!」
ユニコーンの方を見る一
クロが胴体から爪のような…棘のようなものをむき出しにし、ユニコーンを激しく突いている。身動きが取れず、苦しんでいるユニコーン。
一(ユニコーン…!!テメェ…まず自分のことを気にしろってんだよ…!!)
「ケルベロスッ!!!」
ガァアアッツ!!!!!!
シロ(…!!)
ケルベロスの一頭がシロをかみ砕こうとする。それを剣で防ごうとするが、エクスカリバーは一に握られている。片腕を防御に回すが、それはフェイント。
ケルベロスはすぐにクロを攻撃しに行く。その隙に戟で脇腹を刺す。
シロ(!!)
シロはすぐに一に攻撃対象を移す。
一は左手で刀を抜き、エクスカリバーをつかんだまま、打ち合う。
しかし、この状況ではシロの方が力が強い。
カァン…!!
刀を弾き飛ばされる。
一(くっ……!!)
絶体絶命の瞬間――!
パァン!!
一発の弾丸がシロの剣を破壊する。
ガシャ…コッキン…!……カラン!
ライフルをコッキングする九頭堀。
魔眼を使い、1万キロ以上離れた場所への狙撃を決めた。
一(この弾丸…!!)
一はもう一本の刀を抜き、シロの右腕に振り下ろす。
「おおおおおおおおお!!!!!!!!」
ザンッ!!
腕ごとエクスカリバーを取り戻し、ユニコーンへ向かって投げる。
一「ユニコーンッ!!受け取れえええ!!!」
ケルベロスの助けでなんとか離れたユニコーンはエクスカリバーに向かって手を伸ばす。
が、この状況下で最も速いのはシロだ。
驚異的な回復力で腕を再生させ、手を伸ばすシロ。
エクスカリバーが触れる瞬間。光となって透過する。
シロ(!?)
主のもとへ戻ったエクスカリバー。
ユニコーン「うおおおおおおおお!!!」
ザンッ!!
シロの首を切断するユニコーン。
ガッ!!
ユニコーン「…!?」
だが、頭がなくても動くシロ。さらに、その頭部も、砕けた剣も再生させる。
首をつかまれるユニコーン。
九頭堀「暴れろ…ッ!!!」
パン!!
飛んできた弾丸が9つに分かれ、幾何学模様を描きながら全弾が跳弾してシロを粉砕した。
ユニコーン「くはっ……!」
ユニコーンが解放され、辺りにはシロの肉片が転がっている。
1立方センチメートルもないような塊がうようよと動き、再生を始める。
一(頼む…一撃だけでいい…!!)
グワァ…!!
一の体から紅のオーラが溢れ出す。
一「紅・撃・爆・散!!」
ッ…ドンッツ!!!!!
トリシューラから放たれる烈風がシロの肉片を更にバラバラに引き離し、跡形も無く吹き飛ばした!
そして、ユニコーンを襲おうとしていたクロにもその余波が直撃する。
一「ハァ…!!ユニコーン!あと頼む…ッ!!」
ユニコーン「…っ!!…ッ了解!!」
ユニコーンは左手の鞘にエクスカリバーを装着し、クロへ突進する。
ドッ!!!
ユニコーン(…堅い…!!)
クロにはヒビが入る程度。
吹き飛ばすことに成功はするが、すぐに向かってくる。
ユニコーン「……頼む!援護してくれえ!!」
九頭堀「……ふん……感謝するんだな、ユニコーン…」
パァン…!!!
ガッコン…!(コッキング)
クロ(ピクッ!)
サッ! クロは弾丸を避ける。が、当たるまで跳弾する弾丸を避けきれるはずもなく直撃する。
一発はクロの体を貫通するが、貫通して威力減衰した弾丸ではもうダメージを与えられない。
九頭堀「ちっ…距離が遠すぎる…」
パァン! パァン!!
クロが向かってくる。
ユニコーン「ユニコォォオオオオオオン!!!!!!」
カッ!!ドゴォン!!
突如現れた「ユニコーン」がクロを轢いた。
守護獣「ユニコーン」の背に乗り、鞘の付いたエクスカリバーをさらに左腕に接続し、ランスのように構える。
ダンッ!!ダンッ!!
弾丸がクロの動きを抑える。
ユニコーンの周りには聖なる光が収束されていく……
ユニコーン(この一撃だけでいい…力を貸してくれ…!!)
「聖剣突破ッ!!!!」
シュン!!!
ドッ!!!!バァアアアアアアアアンッ!!!!!!!!!!
亜光速の一撃で貫かれるクロ。成す術も無く木端微塵となる。
一「はっ……やったな……!」
ユニコーン「はい……なんとか……!」
変身も解け、限界も超えた二人。
一「…そういや…名前聞いてなかったな……アタシは八城 一だ…あんたは…?」
誇温「癒丹…誇温です…」
一「…いや…ユニコーンなのは知ってる。本名だよ本名。」
誇温「いや…だから…癒丹、誇温です…」
一「…へ…?」
誇温「癒丹という苗字に、誇りのコと温度のオンでコオンです。」
一「癒丹…誇温か……ふっ…変わった名前だけど、お前にピッタリな名前だな…」
誇温「…!…ありがとうございます…。僕も、気に入ってるんですよ…!」
二人は互いに微笑み合う。
人が誰しも持つであろう大罪…
それが『怒り』…
発現が容易で抑えることが難しい。そしてどの感情よりもパワーを持っている。
世界の『怒り』『憤怒』が収束し、その浄化を担うこととなった二人。
どの罪よりも多く、強い力に抗うことの難しさはこの世界でたった二人しか知り得ない。
しかし、それが困難を極めることは疑いの余地が無いであろう。
二人は互いの怒りをぶつけ合うことで相殺し、浄化を図った。
それは暴走の末の結末ではない。
彼らの内に眠る聖なる心が導いたのだ。
怒りの罪から解放された二人はそれぞれ、内なる美徳に触れることとなる。
一人は『寛容』の…もう一人は『正義』の力を手に入れる…
産まれた時から背負った宿命から、ようやく解き放たれた二人の名は…
―――八城 一―――
―――癒丹 誇温―――
九頭堀「…………」
スッ……
ライフルを下ろす九頭堀。
誇温と一の闘いを見届けた。
ピクッ!
パァン…!!!
恩実「……うっ…」
グァッ!!
モンスターの爪が恩実に振り下ろされる!
パァン!!
「ッ!?」
恩実「!?」
九頭堀「やれやれ…できる男ってのは忙しいもんだな……」
ライオンは毒に侵され、立つことすらままならないほどの重傷の中で戦いを強いられている。
九頭堀のサポートがあるとはいえ、大丈夫なのだろうか……
次回『最強を決める戦い!!』