最終章-9「最強を決める戦い!!」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第45話「最強を決める戦い!!」
恩実「なに?いきなり…っ!?…っが…!」
毒ガスを浴び、いつの間にか瀕死状態になっている恩実。
目の前には鋭く大きな爪を持つモンスターがいる。顔は狼のように細長く、胴体は屈強で機械的なパーツに覆われている。
トンファーを構えて戦おうとするが、意識は朦朧とし、力が入らない。
恩実「うっ……!」
ドンッ!!ガガガガ…!!!!
破壊された施設の残骸にブチ当たりながら飛ばされる。
モンスターは瓦礫を器用に避けながら俊敏な動きで追撃してくる。
恩実「はぁ…はぁ…!…っく!」
恩実(なんで…こんな……!?わたしまで世界連合の抹殺対象になってるってこと!?)
ピシィイイン…!!!
能力を使用し、氷で相手の動きを封じる。
恩実「はぁ……はぁ……ごポッ……がはっ!!ごほ…ごほっ!」
が氷は小さく、モンスターの下半身しか覆えていない。
恩実はさらに吐血し、死に近づくのを実感する。
恩実(これ……どうしよう……毒…?が回ってるのかな………なら………)
ピキィ………!!
恩実は自分の体も氷で冷やし、代謝を極限まで下げることでこれ以上の毒の回りを抑えようとした。がしかし、それは諸刃の剣。
代謝が落ちるということは動きが鈍るということ。全ての生命維持機能の低下と外部対応の致命的な遅れと引き換えに毒の回りを抑えるのだ。
これでは死ぬのを回避するために死に向かっているようなもの。本来ならば本末転倒の愚策であるがオッドアイの能力者たちは違う…
恩実「はぁ~………ッス―………」
ピキキ……
トンファーに氷の棘を付着させ、双根へと変える
パキィン!!………ドゴォ!!
氷を砕き、動き始めたモンスターに双根を叩きつける!!
ブゥン!!
振りかぶった双根で、モンスターを吹き飛ばす。
恩実(……帰りたい……帰らないと……あの子たちのもとへ……あの人のところに………)
地上へと登り、自宅を目指して歩き始める恩実……
ジジ……ジジジジジ!!! ピシャァンッ!!!!!
恩実「!?」
モンスターに稲妻が走る。
シュンシュンシュン!!……スタッ…
「さすがだな……それでこそ殺しがいがある…!!」
恩実「はは……しゃべるんだ……ちょっと…まずいかな………」
ドン!! ガンッ!!
突っ込んできたモンスターを棍棒で防ぐが…
ビリィ…!!
恩実「きゃっ!?」
電流が流れ、ひるむ恩実。その隙に爪の攻撃を受けてしまう。
恩実「っ…!!」
必死に体勢を立て直す。
冷気を周囲に漂わせ、防御態勢になるが…
ビリビリ…バチッ!!バチバチッ!!
恩実「!?」
モンスターの体内には特殊な装置が埋め込まれており、送電施設からの電力を遠隔で送り込むことが可能になっている。
無尽蔵に送り込まれる電気を惜しみなく使い、ライオンとの戦闘に臨んでいる。
そして、電気というのは低温であるほど流れやすくなってしまう。熱振動による電子の錯乱が低温になるほど抑えられるため、電気抵抗が下がるのである。
よって、氷の能力を使う恩実との相性は最悪。そして中途半端な冷却しかできないこの状況では敵に塩を送るだけである…
バチィッ!!
恩実「いたぁっ!!」
モンスターと接近する度に電流が走り、ダメージを負ってしまう恩実。
再びモンスターを氷漬けにして動きを止めようとするが、オーバーヒート気味のモンスターの体内を冷却する程度の中途半端なものにしかならない。
恩実(…あぁ……お母さん…もう駄目かも……紬…紡来…結衣…絆凪……あなた………)
恩実「……!!」
ガッ!!
失いそうになる意識……走馬灯のように流れた家族の顔が現世へと引き留める。
ガードの構えを取り、反撃の機会をうかがう。
(!…こいつの目…まだ死んでいない……いやむしろ……)
ガッ!!キィン…!グッ!!ガッ!
モンスターの攻撃をいなし、懐へもぐりこみ、トンファーでの突きを仕掛ける。
(こいつ…!?瀕死に追い込まれて隙がなくなった…!!?)
恩実(会いたい……いや……必ず会うんだ……!!あの子たちのところへ…必ず!!)
ガオォオオッ!!!
「…ッ!?」
トンファーを構える恩実の背には巨大な獅子のオーラが現れ、
ヴァイオレットの瞳のオーラからホワイトのオーラが漏れ始める…
恩実(……一撃……最後の一撃に全てを懸ける…っ!!!)
「……面白い…!!この機会を待ちに待った甲斐がある!!」
ググググ……ガアアアアアアッ!!!!
モンスターは溜めた力を解放し、体中に電気を帯びる。
「素晴らしい力だ……過酷な環境下の星で鍛えられた肉体に、人間の知恵の結晶を併せ持った最強の力だ!!」
バチバチィ!!
電気の力により、攻撃範囲が拡大したモンスターはさらに激しい攻撃を仕掛けてくる。
さらには爪の先から雷を飛ばしてくる。
恩実「……っ!!」(激しい…!!…たった一呼吸分さえ隙があれば……!)
「地上の王者よ…これが格の違いだ!お前はこの星の頂点かもしれないが、俺は生物の頂点へと立った!!敗北を認めて潔く散るがいい…!!」
恩実「……!!」
グァッ!!
モンスターの爪が恩実に振り下ろされる!
パァン!!
「ッ!?」
恩実「!?」
九頭堀「やれやれ…できる男ってのは忙しいもんだな……」
恩実「今っ!!」
ピキィン!!!!!!
「ッ!?」
足元を重点的に凍らされるモンスター。
恩実「最強の生物とはっ…!!」
ピキィ…ピキピキ……ミシィイイイ……!!
ホワイトとヴァイオレットのオッドアイがオーラを放つ!!!
どんどんと周囲が冷却され、モンスターは巨大な壁と見紛う程の氷の塊に埋め込まれる!!
………肢獅…覚醒………
一瞬にしてその場を支配し、他の粒子一つさえ動くことを許さない静寂の時…
上げた片脚を地面へと突き刺す。それと同時に両腕を突き出し、必殺の一撃を放つ。
ズンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!
……………………………。
ゆっくりと姿勢を戻し、振り返る。
恩実「最強の生物とは…家族の笑顔を守る母親ですっ!!」
ピシッ!ピシピシ…!! パキィイイン…………パラパラ………
亀裂が入り、崩れ落ちる氷塊。
粉微塵となって降り積もる氷雪を背に帰路へ着く。
*
『金銭欲』の大罪に取り付かれ、ひょんなことから闘いへ巻き込まれてしまったとある母親。
悪魔の囁きもあり、お金の話に目がくらんでしまう。
その結果、自覚のないまま研究施設の移転を手伝い、ドラゴン討伐任務では能力を晒してしまった。
だがそこで再会したワンちゃんとの関わり合いにより、お金を得た先にある本当の目的に気づくことができた。
彼女が本当に欲しかったものは家族の笑顔、家族との時間、家族との絆であった。
生活のために必要なお金であるが、それを求めるあまり、本当に大切なものを見失ってはならない。
痛い目に遭ったことでそれを実感し、これからの教訓としていくことを胸に誓ったのであった。
これでもう惑わされることはない……
家庭を護るため『程よい節約』と『余裕』の美徳手にした母親…
その名は……
―――碓來 恩実―――
*
九頭堀「…ふぅ……こっちもなんとかなったみたいだな……」
シュボ…
タバコに火をつけて一休みする九頭堀
(……っ~………眼が疲れたな………いくらなんでも遠すぎたな……探索にも手間取った………他の能力者ならもっと簡単に遠くの物を見られたりするんだろうか……)
九頭堀「……ふぅ~………ん?」
気が付くと、撮影用のドローンがレンズを向けて滞空していた。
九頭堀「チッ……」
パァン!!
跳弾させ、計4機のドローンを撃ち落とす。
九頭堀(他の場所へ神経を集中しすぎていた…あんなのにも気づけなかったなんてな……)
九頭堀「………やっぱりおれは…………」
………何をやっても人並み以下………
そう…思わずにはいられない。
優秀な兄の足元にも及ばない。
成績や運動能力を偽れたのもこの力のおかげ。
この右の白い眼はあの時の後遺症だと言っているが本当は違う。
半分乗っ取られているんだ…
この力を与えた何者か…そいつに半分おかされている…
そして兄と同じ色の左眼…
左眼にそっと触れる。
これはもうぼくの眼ではない…
(何年間兄の物だと偽ったんだろうな………。もう自分の物だった時の記憶なんて思い出せない……)
半分は兄の…もう半分は知らない誰かの眼。
自分とは何か?
その質問に対する答えをぼくは持っていない…。
九頭堀「……ん…?」
音がした方を見る。
戦車に、戦闘ヘリに戦闘機、戦闘ロボット。それらが九頭堀を包囲する。
九頭堀「ようやくおれの所にも来たか……」
引き金を引く覚悟はできている……
最後の一発だけは自分のこめかみに撃つ。
だから…それまでは好きにやる。
九頭堀は二丁拳銃を軍隊へ向ける。
(あれを全部やったら歴史の教科書に載るのかな………載ってもぼくの名前じゃないか……)
引き金を引こうとしたその時
??「待ちなさい!」
九頭堀「!?」
声の方に銃を向けると、一人の女性が立っていた。
??「貴方…能力者でしょう?」
九頭堀「なんだ…お前は…」
??「私は…………」
九頭堀「!!…お前…!!あの時の………!!」
兄弟でショッピングに行き、モンスターに襲われた時一緒にいた妊婦だった。
??「っ!」
九頭堀「…今更なんの用だ…?」
(というかあの時この女は……なぜ生きている?…あの時どうやってあの光を避けた…?右半身の無いおれに何をした…?……まさか……まさかこの女………!)
九頭堀「………お前がおれに力を渡したのか……」
??「っ…!………(コク)…」
九頭堀「………!!!」
女性は静かにうなづいた。
九頭堀「…………………」
??「………………怒ってる…わよね……」
九頭堀「…………」
??「恨んでるわよね……私のこと…………」
九頭堀「……あの時…お前は何をした…?」
??「…………あの時……」
*
モンスターから放たれる熱光線。
その青白い光に包まれた瞬間、妊婦は変身しヒーローの姿へと変わった。
バァアン!!!
光を弾き飛ばし、即座に魔力で生成した弓矢で貫いた。
??「……!!…あぁ……あぁ………」
後ろにいた子どもたちは身体を大きくえぐり取られ、もう助かる見込みはなかった。
??(私のせいだ……私がもっと早く変身していれば…こんなことには……私が躊躇ったりしなければ……)
一歩、歩み寄ってふと気づく…
お腹がへこんでいる。
ヒーローをやっていた時のような、戦闘に特化した肉体に“戻って”いる。
??「ああああああああ!!!!!!」
被曝した肉体を修復し、激しい戦闘に耐えるための強化を行うために、身体が再構成されたのだ。
それに気づいた女性は号泣した。
産まれてくるはずの命を消し去った女性であったが、目の前にも、今にも消えゆきそうな命があった。
逃げたくなるような気持ちを必死に抑えて二人に近づく。
仲間から託されていた武具のことを思い出し、かつての自分のような可能性にかけることにした
だが……
??「ごめんなさい……どちらか一人しか……助けられない………」
抑えきれないほどの哀しみに襲われながら、どちらを救うかの決断を迫られる。
二人を見比べ、肉体的損傷が軽い兄の方へ近づいた。
??「せめて…貴方だけでも………」
陽介「…………!………!」
??「!? まだ意識が!!」
すぐに武具を使おうとする。
しかし、残った左腕で女性をつかみ、最期の力を振り絞って懇願した。
陽介「弟の方を…ッ!!救ってあげてください!!!!!」
陽介はそう言い残して絶命した……
次回『解放される力』




