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Odd I's  作者: TEAM,IDR
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一章-1「機械の真心」

「Odd I's」

第一章「機械の王国」

第4話「機械の真心」

 ここは無人島に建てられたテーマパーク「AIアイランド」。開園してからもうじき三周年を迎える。働いている従業員は全てロボットだ。世界初の無人テーマパークとして大きな話題となった。

最初は物珍しさから客層はマスコミ、動画配信者、ライター、など興味本位で来る人達がほとんどであったが、次第に世間からも認められ今では他のテーマパークとなんら変わりのない客層となっている。

 ルウラ、マイド、クーゴ、トオンの四人はこのテーマパークの責任者としての役割を持っていた。AIランドの従業員の代表として働きつつ、安全性の確認や経営方針の提案、運営などを行っていた。

 だが、それも安定して行えるようになったので更なる技術の発展と人類への貢献のためにテーマパーク以外でのロボットの活用方法を考えた。その答えが警察での運用であった。ロボットの安全性と実用性が認められれば多くの人間の役に立つことができる。まずは軍事運用からになるが、いずれは一般家庭でも使われるようになるだろう。

 四人は人類と手を取り合い、互いに発展していく道を選んだ。自分たちを売り込むために、共存するために警察の協力をして力を示した。


 予定では3周年の節目には警察署への配属と軍事施設での試用が始まるはずだった…。しかし、四人は最後に警察の人間といざこざを起こしてしまい、その件が保留になってしまっていた。

 マザーコンピューターであり、四人の生みの親であるボスへ報告をした四人はまたしばらくテーマパークで働くことになった。



クーゴ「ふっ…!…っくぁ~~………久しぶりのこっちでの仕事だ~…」

ベッドから起き、伸びをしてつぶやく。


マイド「クーゴも起きたな。そろそろ行くぞ。」

クーゴ「あいよ」

従業員の控室へと行き、開園時間を待つ。

クーゴ「おはよ~」

トオン「おはよう!」

ルウラ「おう。」

クーゴ「ん、それこの間の報酬で貰った本?まさかまた徹夜で読んでたのか~?」

ルウラ「そうだ。…お前はまた人間の真似事か。相変わらず時間を無駄に使うのが上手いな。」

クーゴ「おうよ、久しぶりにゆっくり寝られたぜ!」

トオン「ルウラは嫌味を言うのが無駄に上手いわね。子どもたち相手にもそんなこと言わないでよね~?」

ルウラ「わかっている。」

ルウラは本をパタンと閉じ、席を立つ。


クーゴ「久しぶりすぎて笑顔の作り方忘れてんじゃないの~?」

ルウラ「ロボットがモノを忘れるわけないだろう。」

マイド「時間だ、そろそろ行こうか。ボスの話によると僕らがいない間に売り上げを落とさないよう全体の接客レベルを上げたそうだ。僕らも他のロボットに負けないように気合入れていこう!」

トオン「うん!そうだね!わたし達がAIランドの主役だってことを見せつけてやりましょー!」

「「おー!!」」


 久しぶりにテーマパークの顔がそろったことでその日から一週間以上も入場者数が増えたのであった。



怪しい男たちの会話

「この映像です……どうです?使えるでしょう…?」

「えぇ、バッチリです。これなら誰がどう見てもロボットが人間を攻撃している。しかも事実ですからいくら調べられても強気に出られる。これで紫雲社は終わりです…!お礼ははずませてもらいますよ」

「ハハハハッ!いや~いい取引が出来た。…これは私の個人的な意見ですが、世間の言う通り紫雲社は市場を独占しすぎている。これ以上拡大してしまえば国家に並ぶほどの権力を得てしまうと思うんですよ。それを食い止める手伝いができて良かったと思いますよ。あなたがたは裏のヒーローかもしれませんねぇ…」

「クフフ…これ以上好き勝手させるわけにはいきませんからね。近いうちにあの危険因子を刈り取り、不安を取り除いてみせますよ……」



ある日のAIランド。

いつも通り、施設と職員の監視をしながら見回っていると一人の少女が眼に入った。その少女は一人でベンチに座っており、無表情でいた。


マイド「こんにちは!AIランドへようこそ! お嬢ちゃんは今一人かな?お父さんとお母さんはいる?」


マイドがそう聞くと少女は黙ったまま指をさす。その先には言い争いをしているらしい男女が見えた。


マイド(……唇の動きを見るにあまり良い内容の会話はしてないな……)

マイド「お父さんたちが戻ってくるまでお話してもいいかな?」


マイドは笑顔で真っすぐ少女を見つめる。

翠眼の少女は屈んでいるマイドよりも下を見るようにうつむいているが、数秒後の沈黙ののちにうなずいた。

マイド「…! ありがとう!それじゃあ少しお話しようか!」 (トオン!!今すぐ僕の座標まで来てくれー…!無表情の女の子がいる。苦戦しそうだ。力を貸してくれ…!)

トオン(は~い、了解!)


トオンへ通信を送る。

マイド「僕の名前はマイド!君の名前も教えてくれるかな?」

「……………篠原……篠原 るく………」

マイド「ルクちゃんか!よろしくね! ルクちゃんは何かアトラクションを楽しんだかな?」

篠原「…………」

マイド「ジェットコースターに乗ったり、観覧車に乗ったりした?」

篠原「………あれ……」


少女が指をさしたのはロボットの海賊団と一緒に航海をするアトラクションだ。

マイド「あぁ!ロボットパイレーツに乗ってくれたの!?どうだった?楽しめたかな?」

(何も感じない……何も得られない……欲しいものなど何一つ……) 篠原「…楽しくなかった……」

マイド「あっ…そっかぁ……(トオン!!早く!!早く来てくれーー!!)」

トオン「こんにちは~!」

マイド「(トオン!ナイスタイミングだ!)よく来てくれたね!こちらのお嬢さんはルクちゃん!ロボットパイレーツに行ったけど楽しんでもらえなかったみたいなんだ…」

トオン「わたしの名前はトオン!よろしくねルクちゃん!」

マイド(後ろにいるのが両親だ。おそらく仲はよろしくない。この子に笑顔がないのはおそらく両親の不仲だ。こちらに問題が無いぶんどう対処すればいいかわからない…)

トオン(了解、事情は分かったわ)

トオン「ルクちゃん、お腹減ってない?AIランドはプロの料理人にも負けないくらい上手にお料理ができるロボットさんたちがいっぱいなんだよー!今回は特別!ルクちゃんにいっぱい笑ってほしいからお姉さんがご馳走してあげる!何か食べたいものある?」

篠原「………おなかへってない……」

トオン「遠慮してるのかな~?ん~~その顔は甘いものが足りていない顔とみた!よしっ!マイドくん!AIランドのスイーツを集めてきてくれるかな?」

マイド「了解であります!プルルル!スイーツ担当のロボット諸君にお願い申し上げる!今からルクちゃんという女の子を笑顔にするためにとびきり美味しいスイーツを作ってくれ!」


マイドは無線通信で連絡し、そのあとスピーカーモードにする。

「りょうかい!」「了解であります!」「カシコマリ!」「わかったでやんす!!」「かしこまりました~!」

何体ものロボットからの返信を少女にも聞かせる。


トオン「今の聞こえた? もう少し待っててね~。美味しそうなスイーツ見たらきっとお腹空くよ!一口でも食べたらきっと元気出るよ!ねっ!」

(いらない……ほしいものはそれじゃない……そんな物では…何も感じない……)

ぐぅ~~…

篠原「あっ……」

トオン「あ!やっぱり!お腹減ってるじゃない!あともうちょっとで出来るからね~!…ところで、ルクちゃんとっても綺麗なお目眼してるよね!お姉さんも眼の色には自信があるけどルクちゃんの方が綺麗で羨ましいな~」

篠原「………………」


眼のことを言われ、顔を伏せてしまう少女。

マイド「僕も思ってたんだ~!ルクちゃん、とっても綺麗な色の眼をしてる!僕の眼も緑だけどルクちゃんの方が澄んでいてずっと綺麗だよ!」


マイドが再び近づいて話すと目が合った。眼を合わせたことで少し顔が上を向く。


トオン「たしかにマイドの眼よりもずっと綺麗な緑色だよね~。」

マイド「なんだとぉ~!」

トオン「知らない間に錆びちゃったんじゃないの~?ロボットだけに」

マイド「誰の眼が錆びだ!」


マイドがトオンにツッコミながら軽くチョップをする。その様子を見て少女は思わず笑ってしまう。

篠原「ぷっ……」

トオン・マイド(笑った…!!)

トオン「やっと笑ってくれた~」

マイド「笑った顔の方がずっと素敵だよ!」


気づけば最初の緊張感はなく、安堵の笑みを浮かべる二人と少し安心したように静かに笑う少女に変わっていた。


ガシャガシャガシャガシャ!! と音を立てながら二体のロボットがスイーツを抱えて走ってきた。

「お待たせしたでやんす!」

マイド「ありがとう!ご苦労様!」

トオン「お待たせ!さぁ、好きなものを食べて!」


優しいロボットに囲まれ少し笑顔を取り戻した少女は、目の前のスイーツに目を輝かせよだれを垂らす。そして、食べようと手を伸ばした瞬間


母親「なにしてるの?」


その声に怯え、手を引っ込める。

マイド「すみません、お母さん。ルクちゃんが一人でいたので色々とお話をしていました。当園をより楽しんでもらうためにスイーツの試食を勧めていました。よろしければお二人もいかがですか?」


マイドが笑顔で話しかけるも、母親は作り笑いとともに「結構です」と言うと少女の手を取り、出口へと向かってしまった。

父親「いや、すみませんねぇ、よくしてもらっちゃってたみたいで。僕らはもう帰りますんで…」


父と母に挟まれ歩いている姿は親子そのものだが、少女に笑顔はなく、夫婦の間には見えない不和があった。 親を前に無理に引き留めることができないマイド。それに対してトオンは「待って!」と親子を呼び止める。


トオン「もうお帰りになるのでしたら、これを…」


と言って腰についたバッグからストラップを取り出し、少女へ手渡す。


トオン「本当はガンGUNシューティングっていうアトラクションに来るともらえるんだけど、今回は特別!(ウィンク) わたしはいつもそのアトラクションの近くにいるから、今度はちゃんと貰いにきてね!」


手を握り、少女の手を振る。

トオン「やくそく、だよ!」

篠原「! うん…!」

母親「また迷惑かけて…ほら、お礼を言いなさい」

篠原「ありがとう…お姉ちゃん…お兄ちゃんも…」

マイド「!…うん!また来てね!待ってるよ!」

トオン「ルクちゃん、またね!次会う時はもっといい笑顔にさせてあげるから!楽しみにしててね!」


マイドとトオンは親子の姿が見えなくなるまで見送った。


マイド「ありがとうトオン。助かった。僕一人だったらあそこまで出来なかった。」

トオン「いやいや、わたしも大したことしてないよ。…あの子、元気になってくれるといいね…。」

マイド「そうだな。残念だけど、ここを出てしまったら僕達にできることは何もない。でも、だからこそ今度来てくれた時はもっと笑顔になってもらえるよう頑張ろう!」

トオン「うん、そうね!」

マイド「しっかし、接客業というのは奥が深いな…正解がないように思えて無数にあるような気がする。」

トオン「きっとボスはそれを考えさせるためにわたし達にもやらせているんだろうね。」

マイド「そうだろうな。…よし、ならもっと頑張らないとな!気合入れていこうか!」

トオン「おー!」


 AIランドが大人気テーマパークとなり、今でもその評価を継続しているのはロボットが日々進化しているからというのが理由の一つである。仲間とスキルや情報を共有し、常にアップデートし続ける。そして、ロボット同士の連携も密になっていく。

 全従業員がお客様を喜ばせることにたいして非常に積極的なため接客の評価は世界からみてもトップクラスであり、更なる高みを目指して発展していくのだと誰もが思っていた…



しかしある日「紫雲社の自律ロボットが人間に攻撃した」というニュースが流れた…


 証拠となる映像にはルウラ達が人間に攻撃する姿が映っていた。そう、警察署でのいざこざの映像であった。

 このニュースは瞬く間に世界中に広がり、大きな衝撃を与えた。報道ではロボットが攻撃の意志を持っており、非常に危険な存在であると決めつけたものがほとんどだった。世論は自律ロボットの開発、使用の反対へ傾き、AIランドは急遽閉鎖へ追い込まれた。


 この出来事をきっかけにあらゆる圧力によってAIランドの全てが調査された。それにより、さまざまな事実が発覚した。その一つがAIランドの運営について。もともと責任者が四条紫雲であったが、〇年前の宇宙開発のためのロケットで事故に巻き込まれて死亡した。そのため伊東いとう 有馬ありまという人物が引き継ぎ、運営も行っていたはずだった。しかし、追いつめられとうとう口を割り全ての運営をロボットがしていたと告白したのだった。

 これにより、ロボット管理のずさんさが次々に発覚しロボットを危険視する声が増えた。AIランドの封鎖だけではなく、AI島とそこに居るロボット全ての破壊を求める声も上がり、その声は日に日に大きくなっていった。

 しかし紫雲社勢力も対抗したため中々調査が進まず、ロボットに手を出されることもなかった。が、ある事件をきっかけに急速に進展してしまう…



伊東「さぁ入って。ここなら安全なはずだ。」

「わぁ。こんなに広い別荘も持っていたんですね。」

伊東「ははっ、まぁね。これはほんの一つだ。現に妻と子どもはまた別の別荘にいるからね。」

「…大変でしたね…」

伊東「はぁ…まぁね。これからのことを考えると気が滅入る…。君とのお楽しみもおそらくこれで最後だ。これからさらに忙しくなるからね。それに、ただでさえ散々世間からバッシングを喰らっているというのに女遊びまでしているなんて知られたらさらに炎上しそうだ。ま、これ以上増えたところでもう微々たるもんだがね。はははは…はぁ……」

「なら、今日だけは何もかも忘れて楽しみましょう…私も…そんな気分……」

伊東「ありがとう…今日の分は色をつけさせてもらうよ…。そういえば近いうちに娘さんの誕生日とか言っていたね。それで何かプレゼントでも買ってあげてくれ…」

「ええ……そうね……」


 二人が話していると突然ドアが開き、銃を持ったテロリストがぞろぞろと入ってきた。

パパパパパン!!

二人は問答無用で撃ち殺された。



 ロボット撲滅派のテロリストが最高責任者である伊東 有馬を銃殺した。これにより社内は大混乱。その隙を見た警察が強引にロボットの調査を推し進めた。少数だが部隊を組んでAIランドへ向かう警察であったが、ルウラ達四人に押し返される。ルウラ達ロボットとしては裁判すら行われていないのに突然やってきた無礼な来訪者から自衛しただけだが、世論はそうは感じなかった。ロボットのくせに勝手に人間に逆らい、人間に攻撃までしてきたのだ。しかもそれが強力な存在となれば排除したいと思うのが人間だ。

 国内だけでなく、世界中からも注目が集まり、問題はさらに大きくなった。そして、ここでいよいよ国が動き、議会での可決により軍によるロボットの殲滅作戦が決まった。

これによりついに紫雲社の中に逆らう者はいなくなってしまった。



AI島への武力介入が目前にまで迫ってしまった。

テーマパークであるAIランドに武器などあるわけもなく、その他の施設もロボットの製造工場などがほとんどで武器となりそうなものはほとんどない。ロボット軍団の中で、唯一武装ができ、武器の使用が出来るのはルウラ、マイド、クーゴ、トオンの四体とボスだけであるが、ボスは動くことが出来ないので実質この四体しか戦える者はいない。

だが、彼らの味方がいないわけではない。一生懸命、人間の笑顔のために働いていたロボットたちの行動は無駄ではなかった。ロボットは安全だと信じる人達も極わずかであったがいた。彼らは力を貸してくれるのだろうか?一緒に戦ってくれるのだろうか…!?


果たして彼らの運命は…!?


次回『叛逆の烽火』


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